そういえば俺って元の世界に帰れるの?
出発から1日目の夜。
「今日の夕飯は───オムライスです!」
「おお~!」
キョウはディザベルの前にラグビーボール型のチキンライスと、その上にオムレツが乗ったオムライスを出す。
……オムライス、そうオムライスだ!
何を隠そう実はポートリス王国は農業が盛んな国で米を栽培していたのだ!スゴイ!ヤッター!
もう調子に乗って、い~~~っぱい買っちゃたもんね~~~!!
「では、この卵をナイフで切りまして~」
キョウがチキンライスの上に乗ったオムレツをナイフで横に切れ目を入れて広げると半熟卵のふわふわとろとろオムライスが遂にその姿を現した。
「おぉ~!とろとろじゃあ!!」
「そしてこれで完成だぁ!」
最後に半熟卵の上に手作りのトマトケチャップを掛ける!
「ひょ~美スィ~、まるで芸術品だぁ、惚れ惚れするぜ~」
「お主!今日の昼といい、これといい……こんな料理が作れるのなら、何故今まで作らなかった!?」
「あんな山奥の山小屋暮らしじゃ材料なんて満足に揃いませ~ん」
「う……まあよい。今日は、この料理に免じて…………許してやる」
ディザベルはオムライスを食べながら話す。
「それは良かった」
ディザベルからの許しも得た事だし俺もオムライスを食べるとする。
「んまぁぁぁい!やっぱ米は最高だぁ!」
「夜だというのに五月蠅い奴じゃのぅ」
ポートリスにいた時に米料理を見かけて心臓が高鳴ったのを今でも覚えている。
「あぁ……買って良かったぁ…………」
舌鼓を打ちながらぼんやりと異世界に召喚された人間の大半は故郷の料理が恋しくなって元の世界に帰りたくなるんだろうなぁと考えていた。
「あっ、そういえば俺って元の世界に帰れるの?」
「…………なんじゃ帰りたいのか?」
ディザベルは食べる手を止める。
「いや俺って帰る手段があるのかなって。魔王を倒せとか世界を救えとかそういう目的で召喚されたんなら、それを達成すれば帰れるけど、そうじゃないからさ」
「……帰りたいのか?」
「え、もしかして何時でも帰れるの?」
「今すぐには帰れん。しかし帰るのは簡単じゃ、お主を召喚した魔法とは逆の魔法を作ればいいだけじゃからな」
ディザベルは事も無げに言ってのける。
「そんな簡単に作れるちゃうの?」
「ワシを誰だと思っている?」
「泣く子も黙る大天才、ルル様!」
「うむ……しかし条件がある」
「条件?」
「お主がもう一度若返りの魔法を完成させること、それが帰還用の魔法を作ることの条件じゃ」
「な~んだ、それなら旅の最中にでも作り直せばいいじゃん」
「簡単に言ってくれるがな、お主……」
ディザベルはキョウの発言に呆れながらオムライスを食べる。
「一度完成してるならもう一回作る事くらい何でも無いでしょ」
「はぁ……ワシですら50年以上の年月を掛けても完成出来なかったというのに……」
ディザベルはキョウの才能に少し嫉妬するが美味しいオムライスが嫉妬心を掻き消してくれる。
「よ~し、これで何の気兼ねなく冒険出来るぞ~!」
キョウはディザベルの心境など露知らず、まるで帰りの電車を気にしなくてよくなった大人の様に浮かれていた。
「テント、テント、今日はテント!」
キョウは今夜の寝床である、組み立てたテントにウッキウキで入る。
「この世界……ん?異世界だから厳密には違うか?まあいっか……とにかく生を受けて17年!元の世界でも、この異世界でもテントで野宿なんて初めてでテンション上がるぜー!」
「五月蠅いぞ、お主。今何時だと思っている?他の者達から苦情が来るぞ」
キョウの今夜の寝床であるテントには既にディザベルが寝っ転がっていた。
「おっと失礼、間違えました」
キョウはディザベルの姿を見るや否や、すぐにテントから出て行こうとする。
「間違えておらん」
「いやぁぁぁ!!」
しかしディザベルに手を掴まれ、まるでホラー映画のワンシーンのようにキョウはテントに引きずり込まれてしまう。
「えっ、俺テント立てたよね!?何でいんの!?」
ディザベル用と自分用に俺は2つテントを立てたはず……それなのにマジで何で俺のテントにいるんだ、この女!?
「おいおい、可憐で幼気で、か弱い少女を1人にするつもりか?夜盗も盗賊もモンスターも出るかも知れんというのに?」
「……あ、そっか」
比較的治安の良い日本生まれ日本暮らしだったから、そういった可能性をうっかり失念していた。
「分かったらもっと寄れ」
「はいはい……」
キョウはディザベルに言われるがまま身を寄せるとディザベルはキョウの身体に抱き付いて来た。
「…………え、ちょっと待って?もしかして今回の旅ずっとこれ?」
「ふん……この前、最後まで味方でいると言ったのに帰りの心配するとは…………あの言葉は嘘だったのか?」
テントの中は灯りがあるものの薄暗いせいでキョウは気付かなかったが、この時ディザベルの目は少し潤んでいた。
「いやそうは言っても、アニメの続きとか気になるし……あ、そうだ、どうせならディザベルも一緒に来たら?」
「一緒に……じゃと?」
「そうよ、それならずっと一緒にいられるし、ディザベルだって俺の世界、気になるでしょ?」
「……ったく、お主を召喚した魔法だって簡単ではないというのに……」
「大丈夫!スーパー天才超天才アルティメットディザベル様なら出来る!!」
「ふん、調子のいい奴だ……だが仕方ない、お主がそこまで言うのなら一緒に行ってやらん事も無いぞ?」
「この世界を一周したらよろしく頼むよ」
「……ふん、手の掛かる弟子だ」
2日目の朝。
「今日の朝食は───ホットドッグです!」
「おお───今回は普通じゃのぅ」
「まあ朝食くらいは手を抜いてもいいでしょ」
キョウはホットドッグにケチャップとマスタードをかけてディザベルに渡す。
「まあ今までがおかしいくらい豪勢じゃったからな」
「そうそう、今朝くらいは手を抜いたってねぇ?」
そう言いながらキョウはホットドッグにケチャップとマスタードをかける。
「じゃあ早速……いただきまーす!」
俺は勢いよくホットドッグにかぶりつく!
「ウンまぁぁぁい!!」
「ッ~~~!かふぁ~い!!」
「い”!?噓でしょ」
俺は慌てて牛乳の入ったコップをディザベルに渡す。
ディザベルはそれを受け取ると勢いよく飲み干す。
「これ、そんな辛くないはずだけど?」
「そ、そうなのか?……いやマスタードくらいなら以前なら問題なく食べれたはずなのに……」
「ホントに若返ったせいで舌も子供の頃に戻ったってこと!?」
「そのようだのぅ……」
「なら今後の献立も考えないとなぁ」
キョウは新しくマスタードの掛かっていないホットドッグをディザベルに渡す。
「すまんのぅ」
「じゃあそれ貰うよ」
「ん、ほれ──────あ、ちょっ!?」
キョウはディザベルが少しだけ齧ったホットドッグを受け取り、それを食べる。
「んまぁぁぁい!デリシャス!」
「お、おま!お前!!」
「んん?」
ふと、一瞬だけだが遠くにある雑木林の奥で何かが見えた気がした。
「か、かかか、か、間接───っ!!」
「ん?今、遠くで何か見えたような……」
「は、はぁぁああぁ!?」
「そんな驚く!?ほら、あそこ」
キョウはディザベルに分かるように異変を感じた場所を指で指し示す。
ディザベルはキョウの指差す方向をじっと見つめると、唐突に自分のアイテムボックスから空飛ぶ魔法の絨毯を取り出した。
「……へ?」
「後で合流する。お主はそのままガーンデーンに向かえ」
「え、えぇ!?ちょっ───」
ディザベルはキョウの返事を聞かずに魔法の絨毯に乗って何処かに行ってしまった。
「うそーん……」




