身長126cm、体重36kg、バスト87cmとは本人談
「くふっ……くふふふふ!」
あれからピチピチのロリババアになった元婆さんは、もうずっと姿見を見ながらクルクル回ったり、何度もポーズを取っている。
「何度見ても可愛いのぅ!若い頃のワシそっくりじゃ!」
「そりゃあ若返ってますし」
「くふふふふ!」
元婆さんは、今まで見たこともない位、ご機嫌だ。
まあ気持ちは分かるけどね。
ハッキリ言って若返った婆さんは傍から見ても可愛い。
透明感のある白い肌。
透き通るような桃色の髪。
光り輝くような白銀の瞳。
子供のような小さな身体には不釣り合いなほどの大きな胸。
身長126cm、体重36kg、バスト87cmとは本人談。鏡の前で、ずっと言ってるから覚えちゃったよ。
「も~いいでしょ、早く行こうよ~、おばあちゃん」
「折角戻って来た美貌に若さじゃぞ?もっと楽しんでもいいじゃろうて」
「別に、これから幾らでも楽しめるんだからさ~」
「ぬぅ……それもそうじゃの…………」
元婆さんは、童話に出て来るような悪い魔女が着てそうなフード付きのローブを手に取り、それを素肌の上から羽織った。元々老婆だった頃に、よく着ていたローブだからサイズは全然合っていないが。
「さあ行くかの」
「行くってそれで?ただ羽織っただけじゃん。ボケた?」
「ボケとらんわ!お主が急に若返らせるから着る服が無いんじゃ!」
「あっ……そりゃそっか」
この家の主は老婆だ、子供用サイズの服なんてあるはずも無い。
「……ったく。それで?何処に行くつもりなんじゃ?」
「当然、ここから一番近くにある王国に行って、そこで冒険者として華々しくデビューを果たす!!」
「ほう?」
「こんな山奥のボロ屋からは、とっととお別れ!!さあ行くよ、おばあちゃん!」
俺は、婆さんの家の玄関から、まだ見ぬ外の世界へ、力強く第一歩を踏み出す!
「歩いて行くのか?ここからじゃと歩いたら三日は掛かるぞ?」
「ま、まあ覚悟はしてますとも」
そんなんじゃ俺の決意は揺るがないよ。
「と・こ・ろ・が~?この!ワシの!魔道具があれば!三時間もあれば楽に着けるぞ~?」
このロリババア、勝ち誇ったニヤついた笑顔で俺に言い寄って来やがる。
「おうおうおう、恩着せがましい婆さんだ!だが忘れてないか?この俺が!二周目の人生をくれてやったということを!?」
「ぐぬぬ…………!」
見る見るうちに、ニヤついた面が苦虫を噛み潰したような顔に早変わり。
「文字通り一生分の恩がある事を忘れてもらっては困るよ~?いんや忘れてないからこ・そ!俺の役に立ちたいんだよね?随分と殊勝な心掛けですこと。いや~感心感心」
「こ、こやつは本当に…………っ!」
(ワシに対する不遜な態度!普段なら容赦なく塵にしている所じゃが、こやつは、たった一年で若返りの魔法を習得した身。こやつの才能なら、きっと若返りの魔法以外にも有益な魔法を幾つも作り上げるじゃろう)
(そうじゃ、こやつならきっと若返りの魔法という一時凌では無い、完全な不老不死となれる魔法を作れるやもしれん!そうなれば…………!)
「くふ……くっふふ~~~」
「怒ったかと思ったら急に笑い出して…………いいから早く行こうよ、おばあちゃん」
「そう急かすな……ほれ」
俺と一緒に家の外に出ていた元婆さんが玄関のドアへ向き直り、右手で小さく手招きをする。
すると家の中から紐で筒状に丸まった何かが元婆さんの元へ飛んで来た。
「お、おお!?これってまさか!?」
「これが王国までの足。空を飛ぶ絨毯型の魔道具じゃ」
筒状に丸まっていた絨毯が広がる。
広がった絨毯は、200×350cm位の長方形で、とても大きい。
「魔法の絨毯なんて、さっすが師匠、分かってるぅ!センス良いよ~、まったく!」
「ふん、早よう乗れ」
褒められた元婆さんは少し嬉しそうにしながらも、ぶっきらぼうに言いながら宙に浮いている絨毯の上に座った。
「勿論乗らせて頂きますとも!」
俺も婆さんに続き、車の助手席に座るような感じで隣に座った。
「おお~!まるで高反発マットレスのような座り心地!」
「ふん、馬鹿言ってないで行くぞ」
「いえーい!いざ空の旅!!」
初めての飛行に、俺は少しテンションが高かった。
そうして魔法の絨毯に乗って空の旅を楽しむこと三時間。
困ってる人を助けるとか、モンスターを倒すとか、そんなイベントは全く無く、目的地の王国に着いた。




