馬鹿が白馬に乗って現れた
「プライスレェェェス!!」
馬鹿が白馬に乗って現れた。
競売場の誰もが闖入者のエントリーにフリーズする中、ルルだけは───
(なーにしてるんじゃ彼奴…………)
ただ呆れていた。
「ハイヤァァァ!!」
「んふぉっ!?」
白馬に乗ったままタロウはステージに乱入し、流れるようにルルをジカスから奪い返す。
そしてそのままジカスから十分距離を取り、抱えたルルごと白馬から降りる。
「探したぜー、婆さん!」
タロウは、ルルに嵌められていた口枷を手で外す。
「……ぷはっ!お、お主何で───」
「な、なんだ貴様は!?」
我に返ったジカスは、ルルの言葉を遮るように突然ステージに乱入してきた闖入者に何者か問う。
「何だって言われてもなぁ……見て分からない?」
「な、何!?」
「どっからどう見たって白馬の王子様でしょ!?」
「お主は本っ当に馬鹿じゃな……」
「いやいやいや!白馬の王子様なんてお約束もお約束だろ!?」
「……そんな事より、何故お主がここに?」
「はぁ!?おばあちゃんがこれで呼んだんでしょ!?」
タロウは、以前ゴブリン退治の際にルルから貰った黒い指輪型の魔道具を見せる。
「それは……!いやしかし、一体いつの間に…………」
ルル自身は気付いていなかったが、ジカスに敗れたあの日。
隷属の首枷を嵌められた際、ジカスに施していた契約の烙印を起動し、ジカスを殺そうとした時、首枷のせいで契約の烙印は起動せず不発に終わったが、実はあの時、ルルの手に嵌めていた指輪は起動していた。
離れた位置にいる仲間に危機を伝えられる指輪型魔道具が光った事で、宿で結構吞気してたタロウも今の今まで必死こいてルルを探していたのである。
「しかしよく此処が分かったのぅ」
「そりゃあ国中、手当たり次第、虱潰しに探し回ったからね」
「そうか…………」
「……しっかし、まあこんなにラクガキされちゃって」
タロウはルルの身体に入れられたタトゥーを一瞥するとジカスに向き直る。
「女の子の身体はラクガキするところじゃないよ、まったく」
「クソッ!警備兵!警備兵は何をしている!?ゲロドはどうした!?」
「それならここに来るまでに俺とリヴァータが全員寝かしつけといたぜ」
「ブルルルルゥゥゥ……!」
白馬が『ふん、他愛もない……』と言わんばかりに唸る。
「なんだと!?」
「…………のぅタロウよ、その馬は……?」
「ふっ……俺とこれまで数々の死線を潜り抜けて来た盟友さ」
「ブルゥゥゥ……!(フン……)」
「そ、そうか……」
ルルは、これ以上追及するのは止めた。
「くっ、本当に誰も居ないのか!?」
ジカスは後退りしながら周囲を見渡すが警備兵の気配は無い。
それどころか先程までオークションの視界をしていたスタッフが白馬に吹き飛ばされていた。
「おっと?逃げようとしたって無駄だぜ。今頃、衛兵や冒険者達が俺を取っ捕まえようと此処に押しかけて来てるからな……!」
「……な、何?」
ジカスとルルが一瞬理解できず、同時に聞き返す。
「……だって無理矢理入って来たし」
「ヒヒーン!(中々面白かったな、あれは)」
「お、おい、リリ!さっきから何なんだコイツは!?」
ジカスは狼狽えながらルルに説明を求める。
「……最近取ったワシの弟子じゃ」
ルルは、どこか遠い目をしながら答えた。
「弟子だと!?」
「リリィ!?おい待て!ルルの次はリリって、婆さん後いくつ名前あるんだよ!?」
「今は、そんな事どうでもいいじゃろ!」
「…………フッ、そうだったな」
「ブルルルルゥ!(さあ、ケリをつけろ)」
タロウは交互に拳をポキポキと鳴らす。
「さあ、ゴミ掃除の時間だ(フッ、決まった…………ッ!)」
「何をしておる!?さっさと逃げろ!!」
タロウは思わずガクッと体勢を崩した。




