白金の魔女リリ
ルルが部屋から去った後、ジカスとゲロドの二人は、今後の身の振り方について考えていた。
「ジカスさん、奴があの白金の魔女っていうのは本当なんですか!?」
白金の魔女、リリ
今から90年以上も前、ポートリス王国とその周辺国で民間人も冒険者も王族ですら関係ない無差別大量殺人を犯した、その犠牲者は一万人以上。
各国協力の元、優秀な冒険者も組み込んだ10万以上の討伐隊を編成したが、その全てを殺害して行方を晦ました。
今もなお、全世界で指名手配されている最低最悪で最強無比の魔女である。
「ええ、私の烙印は若い頃に白金の魔女に押された物。これが他者に譲渡出来ない以上、奴が白金の魔女であることに間違いないありません」
ジカスは15の頃、彼の特異な力を利用するべく近づいて来た白金の魔女によって契約の烙印を押され、35歳まで奴隷のような扱いを受けていた過去がある。
「そうですか……。それにしても、まさかジカスさんが、あの魔女の弟子だったとは思いませんでしたよ」
「ほぼ奴隷同然の扱いでしたけどね……。しかしアイツが、あんな姿になって今も生きているとは…………」
「優に110歳超えているはずですからね。普通、人間なら寿命で死んでいるはずですから……しかし、いいんですか、月々利益の1割を渡すなんて」
「それで、あの魔女を敵に回さなくて済むなら安いもの……だが問題は、奴に命を握られている、この状況」
「それでは…………!」
「フッ……ええ、力を貸して貰いますよ、ゲロドさん」
(……あの日、何の前触れもなく俺の前から蒸発した癖に、今更出て来て俺からまた自由を奪うだと!?そんな事、許せるものか!)
「勿論喜んで!この烙印の痛みと部下を皆殺しにされた恨み辛みを晴らしたくてウズウズしてましたよ!!」
「ぶ、部下を皆殺しに?」
「ええ」
「そ、それは災難でしたね……」
翌朝。
「ねぇねぇ、おばあちゃん、なんか裏通りでバラバラ殺人事件があったみたいよ?」
佐藤太郎は、ルル婆さんと一緒に泊ってる宿で、ポートリス王国で発行されている新聞を読みながら優雅にコーヒーを飲み、ルル婆さんに話を振る。
出来る大人の男、ビジネスマンって感じだ。……でも今度からコーヒー牛乳を飲もう。
「えー、やだー、ルルこわーい」
「ぶほっ!ゴホッ!?ゲホッ!!」
むせた、思いっきりむせた。
「変なロールプレイ止めろババア!!」
「え~、何で~?可愛いでしょ~?」
「恥ずかしいから絶対外でやるなよ……」
「…………お主は本当に……覚えておれよ…………」
「それより今日はどうする?俺は、もう少しでランクが上がりそうだから、今日もギルドに行って依頼をこなして来るつもりだけど?」
「じゃあルルも、お兄ちゃんと一緒に行こうかな~」
「ホント、外でやるなよ!?」
突然ドアベルが鳴った。
「お主、出てこい」
ルル婆さんは、いつも通り俺を顎で使う。
「はいはい」
俺は席を立ち、ドアを開ける。
外にいたのは、この宿の従業員で封蝋の施されたルル婆さん宛の手紙を一通渡された。
「おばあちゃんに手紙だってー」
「ん?」
ルル婆さんは俺から手紙を受け取って手紙を読む。
「……ふむ、急用が出来た。今日は、お主一人で行くがよい」
ルル婆さんは、ゆっくりと立ち上がる。
「まあ別にいいけど、手紙誰から?」
「ヒ・ミ・ツ♪」
「ウッ!…………身の毛がよだつってこういう事かぁ」
「チッ!」
ルル婆さんに思いっきり舌打ちされた。
「はぁ……くれぐれも無理はするなよ?」
ルル婆さんは部屋を出て行った。
「メスガキロリババアツンデレで朝から胃もたれしそう…………」
俺は新聞を読み終えてから冒険者ギルドに向かった。
この日を境に、ルルは帰ってこなかった。




