#2
次に、彼女は強欲な人間を嫌う。
あいつを打ち負かしたい。世間の鼻を明かしてやりたい。誰彼構わずに己の有能さを見せつけ、やたらめったら称賛されたい。そんな不純極まる動機をぶらさげているタイプからは、
「……」
無言のうちに一定の距離を保つ傾向にあるようだ。
偏執的な負けず嫌い。異常な目立ちたがり。病的な認知渇望欲。これらはこれらで、使いどころを見誤らなければ大きなアドバンテージにもなり得る。
しかし、優雅な立ち振る舞いを常に心がけている彼女からしてみれば、そういったクチはちょっと下劣に見えるというか、どうしたって品性に欠けるのだろう。
最後に、女神様は、自分自身を常に卑下しているタイプに対して、生理的な拒否反応を示す。それはもう、容赦なく。
己の可能性を信じきれていない人間にいくら優れたインスピレーションを授けたところで、だいたいは骨折り損に終わってしまうことを嫌というほど理解しているからだ。
「これまで色んな時代の人たちを見てきたけど、今の人たちが一番不可解。見境なく功をがっつく割には、自己肯定感が著しく低いんだもん」
これはある意味合いにおいて、彼女が生来備えているなかで最も厄介な特質といえるだろう。なにせ端っから自信満々でいられたなら、こちとら苦労なんてしていないのだから。
自分に確固たる自信が持てないからこそ、一発逆転・一撃必殺のインスピレーションを武器に、差し迫った難局を打破しようと、僕たちはもがきにもがくのだ。
そのような人間特有の哀しい性を、彼女はなかなか理解してくれない。いや、理解しようともしてくれない。
早い話が、
「より早く、効率的に。勝ちさえすれば、儲けさえすればそれで良い」、
そんな成功至上主義が根強く幅を利かせている昨今の資本主義社会と、マイペースかつ慎み深い姿勢を頑として崩したがらないインスピレーションの女神様とは、所詮、水と油ほどに相容れない間柄なのだ。
その相性の悪さは、不本意な縁談によって結ばれた仮面夫婦のそれにも例えられるだろう。
(非常に残念なことではあるのだが)僕たち現代人と彼女とでは、そもそも住む世界が違い過ぎるのである。何をどうやったって、理解し合えるはずもないのである。
次回へ続く




