光を灯す者
「あなたは私の太陽だ。絶望の闇に沈む私を、柔らかな光で照らしてくれて、ありがとう」
若い男性患者の声は、かすれながらも、どこか透き通るような響きを帯びていた。彼の手は、私の手をそっと握り、その温もりはまるで命そのものを確かめるようだった。彼は急性リンパ性白血病に冒され、造血幹細胞移植を受けた後、合併症の重い波に飲み込まれていた。慢性的な下痢と吐き気が彼を苛み、身体だけでなく心までも削り取っていた。
ある日、彼は涙に濡れた声で呟いた。「もうやめたい。楽になりたい」。その言葉は、まるで彼の魂が折れ、砕け散る音のようだった。だが、今、症状が静まり、社会への一歩がほのかに見え始めた彼の目は、かつての絶望の色を脱ぎ捨て、かすかな光を宿していた。
「正直、生きることになんの意味があるのか、そう思っていた」
彼は静かに、しかし確かに言葉を紡いだ。
「でも、あなたがそばに来てくれた。あなたの温もりが、私に希望の形を教えてくれた。あなたに救われたんだよ。いつか、私もあなたのように、誰かの心に安らぎを灯せる人間になりたい」
彼の瞳は、希望という名の淡い輝きで揺れていた。それは、かつて闇に閉ざされていた魂が、再び世界と向き合う瞬間だった。私は思う。患者の心に寄り添うとき、その思いは確かに通じるのだと。だからこそ、私はこれからも、目の前にいる一人ひとりと真摯に向き合い、その苦しみをそっと受け止め、支え続けたい。たとえ小さくても、その一瞬が、誰かの光になるのだから。