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アラウ

辺境領イスラ


●地形について。

 東西に山脈を有する盆地、故に

  1.耕作面積は少ない。

  2.日照時間が短い。


●エンハンブルクと国境を接しているが、

 1.街道はイスラの南に位置するマンテス領を

  通っている。

 2.通っている道は山に沿った細い道のみ

  交易には適していない。


●町のゲルブムントの人口について。

若者は仕事を求めて都会にでていってしまうため

 1.高齢化、過疎化が進んでいる。

 2.人を集めるための産業がない。




ノワール「だからなに?」


私はヴァイスの話を頬杖をついて、うんざりしながら聞いていた。庭の垣根の木につけた花に蜂が蜜を採取しに飛び回っている。


これから冬になる。


ノワール「陰鬱になるだけじゃない?昼前だってのに食欲が失せちゃった。」


といいつつ、テーブルに出されていた焼き菓子を口に放り込んだ。


ボリボリ……


ヴァイス「僕らのイスラ領の問題点を洗い出すのはいいことだよ。」


ノワール「真面目ねぇ、ヴァイスは。」(モグモグ)


私はメイド達の尻を眺めていた。


アルゲン「交易、商売には適してませんな。」


ノワール「アナタも立ってないで座ったら?」


ヴァイスの座っている長椅子が一人分空いている。しかし、アルゲンシュタインは固辞した。


私はその態度に短くため息をついた。


クリオ「クソ真面目。」


アルゲン「村興しですね。」


ヴァイス「うん。」


ノワール「まだ町と呼べるくらいには人がいるでしょ?村じゃなくない?

それに、ゴブリンや屍兵も増えたし。」


ヴァイス「えぇ……」


アルゲン「アレらは人口に含まれません、ノワール様。」


私の発言の何がいけなかったのか2人は少し引いていた。


ノワール「彼らもマンパワーには変わりないでしょ?」


ヴァイス「あ、下層民も入れたらそれなりになるかな?」


アルゲン「秘密裏に連れてきて、秘密裏な道路開発に従事させている彼らも人口には入らないのでは?」


ノワール「いっそアイツラも屍兵にしちゃう?

南の宿場町のベンダから食糧の買い付けと輸送してもらってるけど、

量が量だけにコストがばかにならないのよね〜。」


ヴァイス「だ、ダメだよ〜殺しちゃ。カワイソーじゃないか!」


ノワール「私が来てからのことを書きなさいよ。」


ヴァイス「あ、そうだね。アルゲン、紙とペンを貸して?」


アルゲン「はい、ただいま。」


アルゲンが用紙とペンとインクをもって来る。


ヴァイス「えーと。」




●麻薬栽培を始める。

 1.人手、土地はゴブリンから提供してもらっている。

  (女性、食糧提供が条件)


●精製した麻薬について。

 1.エンハンブルクに流通させている、

  顧客リストに大臣、貴族が数名いる。

 2.壊滅させた地元のヤクザの販路を再利用。

 3.近々、輸送路開通予定。

 4.道路開発従事者は首都で集めてきた下層民、

  墓荒らしして集めた屍兵。

 5.土建屋の売春宿を経営させ、払った給料を回収。


●鉱山について。

 1.道路開発で偶然、鉄の鉱脈を見つける。

 2.今後、開発予定。




ヴァイス『こうして見ると、だいぶエゲツナイことしてるな……』


ノワール「道路開発が終わったら下層民どもはそのまま、鉱山開発に充てましょ!」


アルゲン「(ピコーン!)鉱山開発となると、鉱毒やガスが発生しますね。」


ノワール「垂れ流しでよくない?」


ヴァイス「ダメだよ!」


アルゲン「ここは耕作や飲料水を地下水に頼っています。

それらが汚染されるとなると、深刻な健康被害が発生します。」


クリオ「たぶん、麻薬植物も駄目になるぜ?」


ノワール「あぁ、そっか。ここの人を全員、屍兵にするわけには行かないか……」


ヴァイスとアルゲンは深く頷いた。


ノワール「あ、そうだ!鉱毒って回収できる?」


アルゲン「一応は可能でしょう。」


ヴァイス「そんなもん集めてどうするの?」


ノワール「毒屋に売り払いましょう。」


ヴァイス「い゙!?」


アルゲン「なるほど、いいアイデアDEATH。蓄積毒で使えますね。」


ヴァイス『この人、忍者だっわ……』


そこに慌てた様子のルーカーがやってきてアルゲンと共に屋敷にはいっていった。


ヴァイス「何かあったのかな?」


ノワール「私たちも行きましょう。」


私はヴァイスと共に二人を追いかけた。




ワイナリー


ルーカー「雇ったやつがドジりました!」


アルゲン「エンハンブルクに放ってたやつか?」


ルーカーは頷いた。そこへ私たちも到着した。


ノワール「何か問題?」


アルゲン「エンハンブルクに墓荒らしに行ってたやつが当局に見つかったそうです。」


ヴァイス「えぇ!?まずいよ!」


ルーカー「なんとか、口を割らずに死んだようですが、うちの里の関与がバレました。」


アルゲン「……国際問題になるな。」


ノワール「ソレは想定外ね、どうする?」


ヴァイス「しばらく、大人しくしてたほうがよくない?」


アルゲン「エンハンブルクと敵対関係になるのは避けなければ。」


ルーカー「街道閉鎖となれば、ソリタニアの経済的損失は計り知れませんよ。」


ノワール「先手を打てない?騒いでるエンハンブルクの奴らを黙らせるの。」


アルゲン「我らの出番ですか?」


ノワール「エンハンブルクとソリタニアの仲介役として私も行くわ。」




かくして、ソリタニアがエンハンブルクで敵対的行動をしていたとして国際問題に発展し、一時的に街道閉鎖の措置が取られた。


ノワール「うちの関所もか……」


私たちは今後のことを話し合うためにワイナリーに集まっていた。


イスキア「アンパン買いに行けないじゃないですかー。」(モグモグ)


ルーカー『今、食ってんじゃねーか……』「毎日の、経済損失は数百億単位だって大臣たちが色めき立ってるみたいですよ?」


アルゲン「外交特使としての正式な要請はまだ来てません。」


ヴァイス「手を挙げてるのに?」


アルゲン「事が事だけに、中枢も混乱してるみたいです。」


ノワール「エンハンブルクへの道が開通したっていうのに。」


私は目を閉じた。


クリオ「なんだよ?」


ノワール「またアレをやりに行くわよ、クリオ。」


クリオ「ノワール。神遣いが荒くないか?」


ノワール「とかなんとか言って、ニヤけてるのはなんなの?」




エンハンブルク某所


領主「クソ!ソリタニアの奴ら!一体、墓を荒らして何が目的なんだ?!」


墓荒らしの被害に遭った地域の領主は荒れていた。


執事「侵略のための難癖づくりでしょうか?」


領主「アイツラ、友好国ヅラしといて!」


領主は一気にグラスのワインを飲み干した。


ドサッ


領主「?おい、お前!」


突然、執事が倒れて、驚く領主。執事は返事もなく起き上がる気配もない。


フッ


部屋の明かりが突然消えて真っ暗になる。かろうじて、月明かりが窓から差し込んでいた。


一気に酔いが覚める。


領主「え?!だ、誰か明かりを!?」


ノワール「はい。領主様?」


そこに見知らぬ女が人魂とともに現れた。


漆黒のドレス、長い黒い髪、白い肌、顔にはギラギラ光る目、すらっと筋の通った小鼻、赤い口紅。


私、ノワール=B•オルクスが立っていた。


領主「ひぃ!ほ、ほろろろ……」


領主は私を見るやいなやビクン、ビクンと脈打つように痙攣しだした。


ノワール「お前か?エンハンブルクの大臣共にソリタニアに不都合な発言をしてるのは。」


領主「…………」(ピクピク……)


ノワール「おい、答えろ。」


領主「いいいいいいい、ええぇぇぇ酢!」


ノワール「そうか、墓荒らしのことは忘れろ。いいな。」


領主は痙攣するだけで答えない。


クリオ「あ、ダメだぜ、ノワール。こいつソリタニアに敵意があるんだ。」


ノワール『どうするのよ?』


クリオ「感情の上書きをしよう。ちょっと待て。」


しばらく私はそこにあった机に腰掛けて痙攣するオッサンを眺めた。


人は来ない。みんな眠っている。


クリオ「できた、できた!この簡易霊をコイツに取り憑かせてっと、よし!もういいだろう、帰ろうぜ!」


ノワール「あ、ちょっと待って。」


クリオ「なんだよ、まだ、なんかあんのか?」




後日


私は庭先の席でいつもの趣味を堪能していた。そこへヴァイスが新聞を持ってやってきた。


ヴァイス「街道閉鎖、解かれるってさ。」


ノワール「よかったじゃない?」


ヴァイス「墓荒らしにあったところの領主も和解合意に協力……

エンハンブルクの武闘派大臣らが不慮の事故で急死。

ソリタニア側、国の関与が認められないってことで。

まぁ、今後も犯人捜索は続くだろうけどね。」


テーブルに広げられた新聞には両国の大臣らが署名を持って笑顔で写真に載っている。


ヴァイス「それと、街道をもう一本……イスラ領に通すって!

すごいや!これで宿場町としてここも機能するよ!」


クリオ「やったな。」


ノワール「やったわ。」

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