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○○の狗(いぬ)

屋敷の塀の外で犬が鼻を鳴らしてこちらを見ている。

犬が怖い僕は怯えて窓枠に隠れながらそれを見ていた。


ヴァイス「うわわ、何なんだ?あのでっかいの?!」


僕の後ろにアルゲンが近寄ってきて、こう進言した。


アルゲン「ヴァイス様、アレは麻取の犬です。」


ヴァイス「え!?そうなの?!」


アルゲン「うまく変装していますが、あの犬を連れているのは麻取の捜査官です。」


ヴァイス「ええー!?間違いないの?!ヤッバ!」


アルゲンは頷いた。


アルゲン「まだ秋口のこの時期、しかも四六時中、煙突から煙が出てるから怪しまれたのでしょう。」


僕は窓の外の犬と目が合って、咄嗟に身を隠した。外では僕のデスマスクに驚いた犬がけたたましくほえ始める。


ヴァイス「まずいなぁ、ノワールはエンハンブルクに行っちゃってるし。」


アルゲン「消しましょう。今ならまだ間に合います。」


その場に居づらくなった捜査官はそそくさと歩き始めた。


ヴァイス「ダメだよ!そんなことしちゃ!ずっと麻取に付け狙われるじゃん!」


アルゲン「ノワール様不在の場合はヴァイス様がここの責任者です!」


さあ!ご命令を!


といわれてもなぁ……


ヴァイス「あ!そうだ!いい考えがある!」




それからしばらくすると、麻取の団体が令状を持って屋敷に押し寄せてきた。


玄関の戸を開けたのがデスマスクをした長身の男だったので捜査官達は一様に驚きの声を上げた。


ヴァイス「僕がこの屋敷の代理のヴァイス•マルフィールです。」


捜査官A「うぅ、麻薬精製の容疑がこの屋敷にかけられています。」


捜査官B「中を改めさせてもらってもよろしいでしょうか?」


ヴァイス「失礼な奴、まぁどうぞ?」


捜査官達はあの犬を連れて来ていたが僕を見るなり、けたたましく吠えるので外に出された。


ヴァイス「僕は犬が苦手なんだ。以後、気をつけてよね。」


捜査官C「失礼しましたマルフィール公。」


捜査官達はヒソヒソ話を始めた。


『公爵家だぞ?麻薬密売の動機がないぞ!』(あります)


『しかし、捜査犬が立ち止まるのは、いつもココだ!』


『煙突の煙を見ただろ?!黒に決まってる!』


デスマスクの僕が見てるのに気がついて捜査官達は苦笑いして捜索を再開した。

そこへ、アルゲンが赤ワインを持ってきて言う。


アルゲン「ヴァイス様、今年のワインです。試飲されますか?」


ヴァイス「アルゲンシュタイン、今は無理だ。ワイナリーに戻してくれ。」


それを聞いていた捜査官の一人がワイナリーも見せてほしいという。


僕は焦った。


フリをした。


捜査官達の目が光る。

麻薬精製をしているのは地下だ。と。




ワイナリー


捜査官A「あったか?」


捜査官B「いや?どこにも?」


僕は壁の隠し扉の前でわざと栓抜きを落とした。


カラーン!


ヴァイス「おっと、失礼。」


捜査官達が壁の向こうに何かを引きずった跡を見つける。


捜査官C「マルフィール公!その床の跡は何です!」


ヴァイス「こ、これはその……!」


捜査官B「壁の向こうまで続いてるようですが?!」


捜査官A「開けてもらいましょう!」


僕は観念して隠し扉を開けた。中からは異様な匂いが立ち込めてきた。


捜査官A「うぅ!」


捜査官B「つ、つぼ?!」


捜査官C「マルフィール公、ここで何を作っておられるのですか?!」


隠し部屋の中央に何かが煮立った大きな壺とそれを取り囲むように虫や爬虫類の干物がぶら下がっていた。


ヴァイス「顔を治したくてね、黒魔術を試していたんだ。」


捜査官A「正教会にしれたら、大目玉ですぞ!?」


捜査官B「よせ!すがりたい気持ちも分かる。」


捜査官C「犬はこの匂いに反応してたのか……」


ヴァイス「このことは内密に。特に正教会には。」


捜査官達はこれまでの非礼を詫びて、逃げるように退散していった。

僕とアルゲンは彼らを玄関で見送って、その姿が見えなくなると僕らは大きなため息をついた。


アルゲン「切り抜けましたな。」


ヴァイス「これで麻取は僕が黒魔術を試していると思って煙を見ても怪しまないし、犬が立ち止まってもその匂いだと思うはずさ。」


アルゲン「しかし、精製は他でやるほうがよろしくないですか?」


ヴァイス「僕もそう思うよ。ノワールが帰ってきたら相談しよう。」




隣国エンハンブルク、ダシマ領


ソリタニア辺境領イスラに隣接するこの地で、私とイスキアは地元のヤクザの内偵をしていた。


イスキア「差し入れ買ってきましたよ。」


バタン


外でパンを買ってきたイスキアが部屋の扉を後ろ足で閉める。


ノワール「またこれ?(アンパン)好きねぇ。」(モグモグ)


イスキア「美味しくないですか?これ。私、気に入っちゃった!」(ハムッ)


クリオ「後で、チーズの買いに行こーぜ?」


ノワール『賛成。』


私は双眼鏡でヤクザのアジトの一つを見ていた。


イスキア「マフィアガトロマーノのナンバー3スリガラ、どうですかね?」


ノワール「今のままじゃ、動かなそう。」


イスキア「発破かけないとだめですか?」


そうねぇ。と私は続けた。


その時、マフィアの畑の場所を探らせていたルーカーも帰ってきた。

玄関で体についた細かい葉やクモの巣を払っている。


ノワール「そっちは?」


ルーカー「ふぅ、見つけましたよ。国境スレスレの山の中です。そこに例のやつの会計人も来てました。」


イスキア「スリガラのとこのサメンフントね?」


ルーカー「そう!そいつです!」


ノワール「オッケー、じゃあ、そこ焼き払っちゃいましょう!」


イスキア「いつにします?」『さらっと言うなぁ……』


私は立ち上がってアルゲンのところの二人の忍者の顔を見渡した。


ノワール「ルーカー。そこまでの距離は?」


ルーカー「ここから2日ってとこですかね?」


ルーカーはイスにドカッと座ってジュースをのみ始めた。


ノワール「出発するわ。ルーカーは案内よろしく。」


ルーカー「えぇ?!帰ってきたばっかなんすけど……」


イスキア「男が文句言わない。」


ルーカー「途中まで巡回バスがあったんでそれ使っていいですか?!」


しかし、


巡回バスは立ち乗り客が出るほど混雑しており、座って休もうとしていたルーカーは絶望した。




夜の山の中、麻薬の畑の向こうに建物の光が見える。時折、巡回の光源がこちらを向いたのか眩しい。


ノワール「イスキア、ファイヤーバードよ。」


イスキア「ウグイスです。行きますよ!」


イスキアは手元で手印を素早く回した。


イスキア「臨兵闘者皆陣烈在前!火遁!ヒトリウグイス!」


イスキアは大きく息を吸い。勢いよく吐き出した。

その息に無数の火の小鳥が舞い、広範囲に飛んでいく。


巡回「うわ!何だ!?」


鳥が着地したと同時にそこが燃えだした。

いたる箇所で火の手が上がり畑は瞬く間に大きな火の海と化した。


クリオ「俺達も行くぜ!」


ノワール「カスカータ!」


私は両腕を自分の髪の毛に突っ込んでそこから、漆黒の片刃剣を二刀取り出した。


イスキア『普段、どこにあるんだろう?』


私はその二刀を持って消火にでてきた男たちを次々に撫で斬りにしていった。後ろに続くイスキアに指示を出す。


ノワール「一人も逃がすな!皆殺しにしろ!」


ズバ!


ヤクザA「ぎゃぁ!」


ヤクザB「相手は女だ!何やってんだ!」


ガキィン!


ノワール「筋力で勝とうって?」(グググ)


シュルル……


ヤクザB「ほぐ!ほむむむ……!?」コキッ


切り結んでいた相手を髪の毛が絞め殺す。


ヤクザC「うわぁ!バケモンだ!!」


ノワール「ダークフォンス!」


漆黒の球体を手から高速で放つ。


ボン!


ヤクザC「アベシ!?」


球体に当たったヤクザの男は変な断末魔とともにぐちゃぐちゃに破裂した。


イスキア『ひぇぇ!』


ノワール「失礼なやつ。死んでろ。」


私は建物中に隠れてるやつがいないかイスキアと共に改めて回った。そこへ慌てた様子のルーカーが走ってやってきた。


ルーカー「増援です!」


ノワール「潮時だ!撤収するぞ!」


麻薬畑の火は山火事になり、国を挙げての消火活動に発展し、エンハンブルク•ダシマ領はちょっとした避難騒ぎになった。




イスキア「これで動きがありますかねぇ?」


ノワール「そうでなくてはこっちが困るわよ。」


借りていたホテルに戻った私達3人はアンパン片手にマフィアのアジトを見張った。


ルーカー「あ、ガトロマーノです!スリガラのとこに来た!他の幹部もだ!」


イスキア「さすがに今後の相談をするわよね?」


ノワール「スリガラが麻薬畑管理してたからねぇ」(ニチャァ)


うずっ


今、踏み込めば幹部連中の首をはねられるだろうが、カチコミたい衝動を抑え、行くすえを見守る。


ルーカー「…………出てきませんね?」


イスキアが頷く、中で何かあったのかもしれない。


しばらくするとドン•ガトロマーノが数人のドスを抜いた男たちに守られながら通りに出てきた。


イスキア「やりましたね。」


ノワール「さぁ、潰しあえ。」(ニヤニヤ)


ルーカー『おっか姉……』


スリガラの部下たちがドン•ガトロマーノに襲いかかるもガトロマーノの部下たちがそれを阻止する。


ドン•ガトロマーノは這々(ほうほう)の体でその場を逃げ出していった。





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