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税収ランキング1位 ズラート

その日は朝食を終えると、自室で麻薬初期生産分の検品を執事のアルゲンとしていた。


ノワール「薄くない?」


アルゲン「葉からはこんなもんです。種からのやつはもっと強力です。」


机の上に置かれたサンプルの匂いを嗅いで舐める。舌の上で砂糖のようにシュワッと溶ける。甘くはないが。


直ぐに軽い酩酊感を覚える。しかし、量もあるのだろうが薄い。


ノワール「根からも採れる品種よね?」


アルゲン「はい。」 


苗の仕入れ業者にオススメされた品種を言われた通り栽培している。まずまずの滑り出しといったところだろう。


ノワール「隣国エンハンブルクへの道はどうなってる?」


アルゲン「これから、都心の下層民に呼び込みをかけてマンパワーを集めはしますが、なにせ素人の集まり。作業の遅れが予想されます。」


ため息をつくと私は目を閉じてクリオと相談した。


脳裏には自分の席に座ってくつろぐ無数の手を持つ蜘蛛に似た怪物がコップで何かを飲んでいる。


クリオ「ふーん、道かぁ。地元の土建屋に入札かければ?」


ノワール「足がつかない?」


クリオ「取り込んじゃえよ。」


ノワール「どうやって?」


クリオ「大体の人間は三大欲求を満たしてやればコントロール出来る。食う、寝る、性欲。」


ノワール「なんか弱くない?」


クリオ「あー、それだったらマインドコントロールは?疲れてシコウの鈍ったヤツにシソウを吹き込んで盲信させるんだ。」


ノワール「それね。つーか、クリオは何飲んでるの?」


クリオ「ノワールのオドさ。内なるマナ。体内の湧き水。」


私は目を開けた。


アルゲン「クリオ様ですか?」


私は頷いた。


ノワール「地元の土建屋に入札をかけましょう。」


それと、と私は続けた。


ノワール「アイツに様は不要よ。」




昼前、洗濯物を干したり、庭の手入れをして忙しそうに働くメイドを私は視姦していた。

そうして、庭のテーブルでくつろいでいると隣にヴァイスがやってきた。


ヴァイス「ノワール、これ見てよ。」


ノワール「何よ?私の趣味の邪魔しないでちょうだい?」


ヴァイス『趣味?』


ヴァイスが困惑して黙ってるのをよそに、私はヴァイスの持ってきた書類に目を通した。


ノワール「税収ランキング……あー、うちのとこビリッケツじゃない?」


ワースト1位ではないが、したから数えて3番目だ。

父が頑張った結果だろうか?


ヴァイス「ウチと税収1位の差すごくない?」


ノワール「マルが3つ違うわね?どこそれ?」


ヴァイス「首都のあるズラート。補助金でビジネスしてる貴族が多いんだ。そもそも、はいてる下駄からして違うよ。」


足を引っ張って、蹴落とす。


一瞬、考えたが母国ソリタニアが揺らぐ。国がなくなったら私たちの地位も居場所も危うくなる。


だから、それ以外でやってやる。


ノワール「中央の奴らを見返してやるわ。」




エンハンブルクへの新規道路開発入札を領民館でやる。


その中で一番安い金額を提示した業者に別室で会う。

明らかにカタギではない風貌の社長がそこにはいた。


土建屋「エンハンブルクへの新規道路ですか?ソリタニアの正式な署名がないですね?」


ノワール「気づいたか、まぁ、領民どもは騙せても、お前らは感づくだろうとは思っていたよ。」


土建屋「すると、我々も危ない橋を渡るわけですな?」


来たな?値をつり上げる交渉だろう?土建屋は女の私の足元を見だした。


クリオ「俺の出番だ。」


ノワール「任せる。」


土建屋「任せる?ソレはーお?オオォーけけ、江ケケケ……」


土建屋は椅子から転げ落ちると奇声を発しながら、床で痙攣しだした。


ノワール「土建屋よ、これは母国ソリタニアへの忠義の行いである。わかるな?」


土建屋「アイエエエ……ええエエエッス。」


ノワール「人員もこちらで確保する。いいか?」


土建屋「オオォ、けけぇー!」


ノワール「よし。クリオ、もういいんじゃない?」


クリオ「そうか?まだやっとこうぜ。」


私は大事なことを思い出した。


ノワール「あ、見聞きしたことは他言無用だ、いいな?」


クリオ「それと、ノワールに忠誠を誓え。」


土建屋は口から泡を吹いて、痙攣している。


クリオ「これでよしっと。」


ノワール「後は、人員確保ね。」




首都下層民地区


ルーカー「久しぶりに来たなぁここ。くせー。」


イスキア「文句言わない。ほら、足元気をつけて。」


狭い路地の真ん中の蓋が所々されてない側溝に悪臭を放つ黒い水か流れている。


下層民「何だ何だ?」


下層民地区の広場に着くと、イスキアは赤いポップ調で数字の書かれたプラカードを掲げた。


イスキア「辺境地イスラで新規道路開発のお仕事だよー!毎月の手取りは30万!衣食住付きだ!」


ルーカー「母国ソリタニアにその身を捧げる覚悟があるものは一歩前へ!」


イスキア「道路が完成したら石碑に名前が刻まれる!後世までその名が残るよ!」


ゾロゾロ


「毎月30万だってよ!」


「俺、行く!」


「イスラって遠いのか?」


「どうでもよくね?」


「これでクセーここともおさらばだ!」


「俺の名前が残るのかぁ。」


「墓代の心配なんていらなくなるなw 」


「そんなもん、最初からしてねーだろ!」


初回の募集でそこそこの規模の人数が集まった。

ホロ馬車2台に下層民たちが満載されているのを見て、イスキア達が今後の相談をしていた。


イスキア「次は第2都市ねー」


ルーカー「こんなに集めると寝る場所とか食料とか心配じゃね?」


イスキア「そこら辺はゴブリンがやってるわよ。」


ルーカー「寝るとこは奴等が作ってるけど、食料だよ。

今まではそんなに数の居ないゴブリンに食料を供給するだけだったから、

輸送もそれほどでもないからよかったけど、コイツラが暮らす場所まで大量の食料輸送が必要だろ?」


イスキア「そこまでの道路開発もやらなきゃダメね……?」




アルゲン「どうされます?」


イスキア達の進言を受け私は第2都市での募集を中止させた。


ノワール『ソリタニア側にも道路か、さすがにバレるなぁ。』


ゴブリン、誘拐、麻薬。


どれも発覚するとまずいものばかりだ。


クリオ「バレたら、正教会で拷問されて、火炙りだな。」


ノワール『なにそれ?嫌な死に方。私はベッドでお酒あおりながら死ぬって決めてるのよ。』


クリオ「それならいい考えがあるぜ?」


ノワール「どうするの?」


アルゲン「…………。」


クリオ「ネクロマンス。食料問題はこれで解決さ。」




私は深夜に墓場にスコップを担いで行った。漆黒のドレスの輪郭が月夜に照らされ白く映る。


クリオ「そこのでいいんじゃん?」


ノワール「それじゃ、遠慮なく。」


ザク、ザク……


大きな雲に月は隠れ闇夜の静粛に土を掘り返す音が響く。


クリオ「おー、でてきたな。」


簡易的な木の棺、所々、傷みが出ている。私はスコップをバールに持ち替えると棺をこじ開けた。


ノワール「うわ!クッサ!」


クリオ「すぐ慣れるよ。」


クリオがそう言うと、中から棺が開く。


クリオ「屍兵シヘイ一丁〜!」


ノワール「これで、食料問題とマンパワーの確保は行けそうね?」


後日、辺境地イスラを中心に墓が暴かれ死体だけ持ち出されるという不可解な事件が多発した。




墓の怪奇事件の多発していた某日、昼


ノワール「初期生産分のサンプルはエンハンブルクのブローカーに渡した?」


アルゲン「はい。」


私は執事を自室に呼び出して麻薬販売の進捗を聞いた。


ノワール「つかみは?」


アルゲン「低価格帯なら流通するだろう、とのことでした。」


ゴブリンを使っているから人件費は抑えられる。種や根から作るころには道路による大量輸送も可能になる。


ノワール「好調ね。価格は原価割れしないくらいでいきましょう。」


アルゲン「さすれば、定価の1.2倍ほど低くして様子を見ましょう。ただ……」


ノワール「何よ?珍しい。アルゲンが言い淀むなんて?らしくないわよ?」


アルゲン「地元のヤクザに目をつけられるのではと。」


クリオ「そりゃ、そうなるわな。」


ノワール「競合他社ね?」


アルゲン「あちらは兵隊が多いです。正面からやり合うにはこちらも覚悟が必要になります。」


ノワール「そうねぇ。」


私は目を閉じた。


クリオ「なんだよ?」


ノワール「クリオはなんか知恵ない?」


クリオ「数が多いなら別れてもらえばいい。」


ノワール「各個撃破?」


バケモノは首を横に振る。


クリオ「漁夫るんだよ、ノワール。」


ノワール「ふーん、どうやるの?」


クリオ「闘争心。下克上志向のやつの心に火を付ける。そしたら分裂して互いに潰し合う。勝ってもぼろぼろだろう、そこを攻める。」


ノワール「いいわね。それで行きましょう!」

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