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領民会議

ノワール「打ち合わせ?」


ヴァイス「そうだよ。領民達と懇親会も兼ねてる。一緒に行こうよ?ノワール?」


ヴァイスの持っていた招待状に目を通す。


ノワール「議題が女性誘拐事件の……って、行けるわけないじゃない?!」


廊下で立ち話。メイド達に聞かれる。そう判断して私は近くの部屋に入った。


ノワール『ゴブリン達の畑も麻薬植物の苗付けが始まるっていう次期にか?めんどくさ!』


部屋のカーテンを全部、閉め終わると、デスマスク姿のヴァイスに向き直った。


ノワール「私はゴブリン達の所に行かないといけないから。ヴァイス、代理で行ってきてちょうだい!」


ヴァイス「えぇ?!僕一人かい?」


ノワール「アルゲンのとこの者もつけるからお願い。」




ヴァイス「ってことなんだ。よろしくね?イスキア。」


イスキア「私は全然平気ですけど。ヴァイス様のそれ。だいぶ悪目立ちしますね?」


うう、そうだよなぁ。デスマスク目立つよなぁ。


馬車の箱車で会場の領民館を目指す。領民達になんて言おう?

この病気は認知度がそこそこあるから理解は得られるだろうけど、新しく着任した領主が来ないで代理の僕だけだもんなぁ。


イスキア「ふんふーん。」


ヴァイス『実行犯だよな?この子……』


どのつら下げて領民に会うつもりなんだろうか?


赤毛のこのコは、きれいな顔でスましている。肝が据わっているのはオルクスの女性の特徴なのか?


そうこうしてると馬車が領民館に到着する。


イスキア「先導は、私が。」


ヴァイス「頼むよ。」


歩き慣れた場所ならいいが、仮面の視野は限られているので、新しいところは先導が必要だった。


女性の細くて柔らかい手、ではなくイスキアのはがっしりしていた。


僕はノワールの手が良かった……


領民代表「こ、これは領主様?ようこそおいでくださいました。」


案の定、領民達はデスマスクに困惑している。


ヴァイス「悪いね。僕は領主の代理のヴァイス•マルフィール。」


領民達がざわつく。


「マルフィールって公爵家じゃなかったか?」


「領主様は伯爵家だ、それの代理が王族の公爵家?!」


「ワケワカメ……」


デスマスクの公爵家が辺境伯の代理、ますます混乱する領民達を領民代表は咳払いをして、その場を鎮めた。

そして、ヴァイス達を会場の部屋へと案内した。


代表「それでは、議題を始めたいと思います。」


領民A「誘拐された女性は3人。全員20代。1人は来月結婚が決まってました。」


ヴァイス「な、なんとも痛ましい事件が起きたね?」


僕は事の重大さを痛感した。


ヴァイス「領主が代替わりしてすぐのこの事件、犯人の目星は?」


イスキア「…………」


犯人は不明。被害者達は忽然と消えた。少量の血痕を残して。


その報告にヴァイスは大きな息をついた。


後ろに控えるイスキアは何食わぬ顔をしている。ボスの依頼、ただただ仕事をこなしただけ。倫理観や感情は彼女らには不要なのかもしれない。


領民A「きっと、ゴブリンの奴らだべ。」


領民B「ここらの娘さ、さらうのは奴らしか居ねぇ!」


領民C「領主代理様!蔵を開けて山狩に行きましょう!」


ヴァイス「そ、それにしては手際が良すぎる。犯人はきっと性奴隷目当てに来たブローカーか、それに雇われたプロの奴らじゃないかな?」


領民達は「確かに。」と言って納得した。


ヴァイス『うわー、もう終わりにしてくれー!』


領民代表「では、今後は人身売買ブローカーを重点的に当たるとして、新しく着任された領主、代理様との懇親会に参りたいと思います。皆様よろしいですか?」


領民の何人かは何かもの言いたげだったが、ヴァイスは議題の終了に胸を撫で下ろした。




ルーカー「アレ?イスキア、ヴァイス様。早いですね。」


ヴァイス「懇親会はねー?僕はお断りしてきたよ。」


御者のルーカーに声を掛ける。アルゲンシュタインの部下だけあって箱車から軽やかに飛び降り、ヴァイス達に音もなく歩み寄った。


そこへ、夕日の向こうから漆黒の馬にまたがった、漆黒のドレス姿のノワールが駆けつけてきた。


僕の黒い女神。


ノワール「懇親会は今から?」


ヴァイス「うん、議題は今さっき終わってこれから、主役なしの懇親会(?)が始まるところさ。」


ノワールは誰の助けも借りず、馬から降りる。かっこいい。


ノワール「夕飯、節約しようと思って。」


ヴァイス『ちゃっかりしてるなぁ。』


ノワールはバッグから大きめのタッパーを取り出してヴァイスに見せた。


ノワール「アナタの分も取ってくるから先に帰ってなさい。」


ヴァイス『親戚の図々しいオバサンかな?』「ありがとう。じゃ、僕は一足先に退散するよ!」




アルゲン「切り抜けたか。」


イスキア「はい。」


ルーカー「ヴァイス様も中々のタヌキでいらっしゃる。」


屋敷の地下のワイナリーの誰もこない奥でアルゲンシュタインは部下達から会議の報告を聞いていた。


アルゲン「ヴァイス様のノワール様への忠義、ノワール様からの信頼も厚い。」


イスキア「今後も使われるので?」


ルーカー「あの仮面、視線誘導、思考誘導に使えますしね。」


アルゲンは頷いた。


アルゲン「例の苗は仕入れてきたか?」


イスキア「抜かりありません。」


ルーカー「その道の連中から足がつきませんかね?」


アルゲン「その時は先に仕掛ける。」


ルーカー「でしょうね。」


ルーカーは懐から紙を出してアルゲンに渡した。


ルーカー「奴らの住所です。帰宅ルートも押さえてあります。」


イスキア「今から?引っ越されるかも。」


アルゲン「いや、これはこれで参考にはなる、今後も定期的に見張れ。」


忍者たちはそれぞれの持場へ戻っていった。




ノワール「娘達?ゴブリンと仲良くしてたわよ。はい。」


私はヴァイスに借りていた仮面を返した。


ヴァイス「今後も使うだろ?それ。ノワールでとっときなよ。」


後頭部が折りたたみ式の簡易着脱式のフルフェイスマスク。彼が成人する前につけていたもの。私は懐かしくなってぼんやりとそれを眺めた。


ノワール「そうね、そうする。」


ヴァイスはタッパーの料理をここで取れたワインで楽しんでいた。


ヴァイス「ここのワイン、結構、美味しいと思うけどなぁ?あんまり売れてないんだ?」


ノワール「その価格帯のワインは競合他社が多いのよ。新規のソレはなかなか手に取ってもらえないの。味もそんなに変わりないし。」


ヴァイス「ん〜、どうにかできそうではあるんだよなぁ。」


ノワール「例えば?」


ヴァイス「価格を下げるとか?味に変化を持たせるとか?かなぁ。」


ポン!私は手をたたいた。


ノワール『そうだ!麻薬入れちゃお。依存性持たせりゃいいのよ。』「味ね!?それなら価格も釣り上げてやりましょう!」


ヴァイス「え!価格を上げる?!」


ノワール「高級路線で行くのよ。価格が味に影響するものよ!」


クリオ「商品は変わらなくても、値段で味覚は変わるもんだからなぁ。低価格なら低価格の味、高価格なら高級な味。」


私の読みは当たった、それまで見向きもされなかったワインだったが、ラベルも一級絵師に外注し、店頭ディスプレイにもこだわると、貴族たちに飛ぶように売れた。


ノワール「いい夢みな。」




原材料の植物の育成も進み。ようやく、その葉から麻薬を精製する段階になった。が、麻薬取締の所にメイドが垂れ込む騒動が発生した。


間一髪、アルゲンシュタインが捕まえたが……


ワイナリーの奥に作った精製室でくだんのメイドを監禁する。私は趣味で持っていたムチを片手にそのメイドに尋問をした。


ノワール「おい、貴様。どこぞの組の回し者か?」


鞭打ちで気絶していたメイドに水をぶっかけて起こす。


メイド「……こんなこと許されない!」


メイドは瞳の輝きをまだ失っては居ない。骨のあるやつだ。女にしておくのは惜しい。


アルゲン「ふむ、ノワール様。コヤツは自己の正義感で動いたのでは?」


その様子を椅子に逆さに座り、背もたれに胸を押しつけているイスキアが続けた。


イスキア「良心の呵責かしゃくってやつですか?」


ルーカー「そう見せかける演義では?」


イスキアの隣で腕を組んだルーカーが言う。


ノワール「なんにせよ、運が悪かったな。」


ゾワワワワ……


私の黒髪が逆立つ。


クリオ「おいおい、また上玉じゃねーか!いいのか貰っても?」


ノワール「やれ。」


髪の毛がメイドに突き刺さり、みるみる、中身を吸い取っていく。


メイド「ぎゃぁぁぁ!」


メイドはミイラのようになり、事切れた。


イスキア「うわ、えっぐ。」


ルーカー「ウチの姫様が一番おっかねーよ。」


アルゲン「死人に口なし。イスキア、ルーカー。ソイツを片付けてこい。」


イスキア「はい。」


ルーカー「へーい。」


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