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あの子と私  作者: N


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十三話

 さらに手がかりを探すうちに、思いがけず一つの新聞記事が目にとまった。


 


 ──【2013年7月】○○市内マンションで少女転落

 ──近隣住民によると、当時少女は一人でベランダにいたとされ……

 ──遺族の希望により、詳細は控えられた。事故との見方。


 


 日付を見て、私は思わず手を止めた。


 10年前。ちょうど、私がまだ幼稚園にも入らない頃の出来事だった。


 名前も、写真も載っていない。

 けれど、どこかで読んだような、不思議な既視感があった。


 それがただの偶然なのか、あるいは——


 


 私はそっとパソコンを閉じた。


 たしかに“繋がり”を感じた。けれど、それが何だったのか、

 今の私には判断できなかった。


 


 ベッドの上に座って、私はカーテンの隙間から夜の街を見た。

 遠くのビルの窓が、小さな光の点になってまたたいている。

 虫の声が、遠くで響いていた。


 


 彼女のことを知りたくて、調べたはずなのに、

 知れば知るほど、彼女はまた少しだけ遠くなってしまったような気がした。


 


 でもそれで、よかったのかもしれない。

 あの夜のことは、私の中にだけ、あのまま残っていてほしいと思った。


 誰の言葉でもなく、誰の証拠でもなく、

 あのとき彼女が確かに私の手を握った、という記憶だけで。


 


 私は目を閉じた。


 少し風が吹いて、カーテンが揺れた。


 その一瞬、背中に誰かの気配がよぎったような気がして、

 私は、そっと胸の前で手を組んだ。


 「……ありがとう」


 今さらながら、声に出して言ってみた。


 


 あの子に届くとは思っていなかった。

 けれど、もしほんの少しでも、どこかで聞こえていたなら——


 それだけで、じゅうぶんだと思った。


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