表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの子と私  作者: N


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/14

十二話

 気づけば、あの夜からひと月が経っていた。


 手のひらの跡は消えてしまったし、

 足元に広がっていた風の感触も、もう指の隙間からすり抜けてしまったようだった。


 けれど、あの子のことだけは、日が経つにつれて胸の奥に沈んでいく代わりに、

 ますますはっきりとした輪郭を持って、私の中に居座り続けていた。


 ほんの一瞬の出会いだったはずなのに、忘れるどころか、

 ふとした瞬間に彼女の声が耳元に蘇ってくる。


 


 ──「忘れてる?」


 


 その言葉が、妙に引っかかっていた。


 “忘れてる?”ということは、

 私はかつて彼女のことを“知っていた”のだろうか。


 


 ある夜、私はノートパソコンを開いた。


 あまりネットを使う方ではないけれど、どうしても確かめたくなった。


 「六階」「転落」「少女」「○○市(地名)」

 思いつく限りの言葉を組み合わせて検索する。


 事故当日のニュース記事は、ほんの数行のもので、

 私の名前も「未成年のため匿名」とされていた。


 


 でも、その下に、一つの小さな掲示板が表示されていた。


 それは向かいのアパートの住人たちが利用している地域掲示板だった。


 


 ──7月×日夜、ベランダに立っていた子を見た人いますか?


 という投稿が、数日前にされていた。


 スレッドは短く、返信もわずかだったけれど、その中に一つだけ、私の心を止める言葉があった。


 


 ──白いワンピースの子、見ました。

 ──細い腕で、誰かと手を繋いでたように見えた。

 ──顔までは見えなかったけど、あれって子どもだったんでしょうか……。


 


 投稿者の名前は仮名で、「たつき」とだけ記されていた。

 しかし、プロフィールをクリックすると「このユーザーは削除されています」と表示されるだけだった。


 連絡する術はなかった。


 


 それでも、私は少しだけ、息を詰めた。


 やっぱり、あの子は私一人の幻じゃなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ