彼女の嘘にひく僕。彼を守るため嘘をつく私
~勇者視線~
ある日のこと1本の電話が鳴り響き、対応する女神。
「はーい女神です。お世話になります」
声のトーンがいつもより高いな。お得意様だろうか?
「はい!はい!いえ、大丈夫です。大したことありませんわ」
内容は分からないが、適当に言ってるのはわかる。絶対に大変な内容だ・・・
「腕の1本くらい問題ありません。お安いですわ」
僕のケガの事ですよね!しかも腕1本くらいって、安くねえよ!
「え!移籍ですか?そ、それは本人が嫌がるかと。私から離れたくないと申しております」
移籍って何?僕が嫌がった?離れたくない?この人は何を勝手に・・・
「では、失礼いたします」
と言い女神は電話を切った。
「女神さん今のって?」
尋ねる僕に即答する女神。
「間違い電話!」
そんな訳あるか!
~女神目線~
私の大切な勇者(彼)がケガをした。そのことで本部から連絡が来た。
「私よ!要件は分かっているわね」
冷たい声、私の双子の姉、私の上司。
相手のペースになったら負け、ここは勢いで行くしかないわ・・・
「はーい女神です。お世話になります」
「あなたの新しい勇者。早速ケガしたみたいだけど、使えないのかしら!問題ないの?」
姉は私と違って昔から優秀だった。変な情に流されるような人でもない。
もう、出たとこ勝負だわ・・・
「はい!はい!いえ、大丈夫です。大したことありませんわ」
「聞くところによると、腕をケガしたらしいじゃないの?治療費高くついたでしょ?」
お金の話ばっかり。予算!経費!コスト!そればっかり。
私の大切な勇者(彼)はプライスレスなの・・
「腕の1本くらい問題ありません。お安いですわ」
「あなたの手に負えないのなら、移籍させてもいいから。いつでも言って」
そんなこと。イヤだ、私は絶対に離れたくない、大切な勇者(彼)と一緒にいたい・・
「え!移籍ですか?そ、それは本人が嫌がるかと。私から離れたくないと申しております」
「あっそう、まあいいわ。同じ失敗しないでね。期待してないけど。」
私が大切な勇者(彼)を守るんだから。もう、一人で戦わせない。ずっと見守っていく・・・
「では、失礼いたします」
私は電話を切った。
不安そうな彼が私に尋ねてきた。
「女神さん今のって?」
どうしよう、なんて答えよう・・・
「間違い電話!」と噓をつく私。
私のバカ!そんなのウソだってすぐバレるし・・・
彼は呆れた顔をしている。
嘘をついてごめんなさい・・・