特賞を当てた僕。賞品を奪った私。
~勇者視線~
僕は交通事故で亡くなり、女神によって転生させられた。使命という名の魔王討伐をしている。僕は今、とある行列に並んでいる。
「女神様、これって魔王討伐と何か関係ありますか?」
僕は隣に並んでいる女神に声をかける。
「当たり前でしょ、これも立派な使命なんだから」
日傘を指しながら女神は退屈そうに答える。
「だとしても、2人で来る意味ありますか?」
どうせ、何か欲しいものあるとかなんだし・・・
「ダメよ!お一人様1回なんだから」
お一人様?1回?ハイ来た!どうせいつものパターンでしょ・・・
「あんたが楽になるアイテム手に入れるわよ」
ん?楽になるアイテム?今回は僕の為なのか?
「ここのガチャは凄いのよ。疲れが無くなるドリンクや痛みを感じない目薬、レアだと手足なら千切れてもくっつく軟膏とかあるのよ」
どれも、凄いけど!何か嫌な薬だよね・・・
「私たちの番みたいよ」
年末の福引きのようなガラガラ回す物が台の上に乗っている。
「私から回すわ!」
ガラガラ・・・白い玉が出てきた。
「残念賞!」
女神は膝から崩れ落ちる。
「あんた気合!気合で当てるのよ!」
プレッシャーかけないで・・・
「行きます!」
僕は思い切り回した。
ガラガラ・・・金色の玉が出てきた。
カラン!カラン!カラン!
鐘の音が鳴り響く。
「おめでとうございます。特賞です!」
特賞!凄いけど、何が貰えるの?
「どうぞ!魅惑のスプレー缶詰め合わせです!」
戸惑う僕に目を輝かせながら女神が嬉しそうに話しかけて来た。
「あんたの物は私の物!私の物は私の物よ!」
⚪ャ⚪アンかよ・・・
~女神目線~
それは、ある特別なガチャイベントの会場。彼と2人で並んでいた。
「女神様、これって魔王討伐と何か関係ありますか?」
彼が少し不安そうに私に尋ねる。
「当たり前でしょ、これも立派な使命なんだから」
本当はね、使命っていうより……あなたをちょっとでも楽にしてあげたいだけなの。
だから、今日は付き添い。……なんて言えるわけないじゃない。恥ずかしいし。
「だとしても、2人で来る意味ありますか?」
もう、察しがいいのか悪いのか……
「ダメよ! お一人様1回なんだから」
そう。今日は“私の分”じゃなくて、“あなたの分”で狙うんだから。
私が欲しいのは――あなたが、もっと楽に、もっと笑っていられるような、そんな奇跡。
「あなたが楽になるアイテム、手に入れるわよ」
ちょっとだけ素直に言ったら、彼の目が驚いて見開かれた。
ふふ、どう? 少しはキュンとした?……なんて、ね。
「ここのガチャは凄いのよ。疲れが無くなるドリンクや、痛みを感じない目薬。レアだと、手足なら千切れてもくっつく軟膏とかあるのよ」
そう、戦う人にはたまらないラインナップ……でもちょっと物騒よね……
「私たちの番みたいよ」
白いテントの下、年末の福引きみたいなガラガラが台に乗っている。
ちょっとワクワクする……
「私から回すわ!」
ガラガラ――コロン。
白い玉が転がった瞬間、スタッフさんがにこやかに告げる。
「残念賞!」
うそでしょ……!?
膝から崩れ落ちそうになって、なんとか立て直す。
だ、大丈夫……本番はこれからよ……!
「あんた気合! 気合で当てるのよ!」
彼の番。祈るような気持ちで見つめた。
お願い、当たって……!
「行きます!」
彼の手が力強くレバーを回す。
ガラガラ――
キラッと光る。金色?
カラン! カラン! カラン!
「おめでとうございます。特賞です!」
やった、やった……本当に当ててくれた!
「どうぞ! 魅惑のスプレー缶詰め合わせです!」
……なにそれ? って思ったけど、内容はあとで確認しよう。
それより――目の前の彼が、ぽかんとしてる。
かわいい……ほんと、なんでこんなに可愛いの……
だから、思わず言っちゃった。
「あんたの物は私の物! 私の物は私の物よ!」
え、どこかで聞いたことあるって?
うるさいわね、それくらい許してよ。だって……
あなたの全部、私が守るって決めたんだから……