報われたい僕。気づかれたくない私。
~勇者視線~
女神に転生させられ魔王を退治する日々。どれくらい時間が経ったのだろう。今月はすごくがんばったぞ、その事を女神に報告した。
「女神様、僕は今月魔王を42人退治しております」
僕の言葉に女神は特に興味なさそうに返事をする。
「うん、まあまあがんばってるね」
まあまあ・・・1日に1人以上退治してると思いますが・・・
「あの・・まあまあですか?」
これ以上の成果があるというのかい!・・・・
「あのさ、あんた意外と数字弱い訳?」
数字に弱いとは?どういうことだ?
「女神様、どういうことか教えていただいても宜しいでしょうか?」
ため息交じりの女神が説明してきた。
「今月は31日あるでしょ」
そうですが・・・それがなにか?・・意味不すぎませんか・・・
「あのさあ31日で42人てことはこのペースだと・・・」
何の計算をしているんだ・・・・
「1年で500人の魔王討伐できないでしょ!」
1年に500人討伐が目標って・・・やはりブラック・・まさに鬼畜転生・・・
~女神目線~
彼はこの世界に転生してきてから、ずっと戦ってくれている。
もう少しで、報告に来るんだろうな……その声を待っていた。
「女神様、僕は今月魔王を42人退治しております」
彼は帰還するなり私の報告した。待ってたのよ……おかえり……
彼は自分の頑張りを主張していた。でもね、残酷だけど……もっと頑張らないと……間に合わないの……
「うん、まあまあがんばってるね」
彼の顔が、すこしだけ曇ったような気がした。
「…あの…まあまあですか?」
その声が、なんだか拗ねたみたいで、思わず笑いそうになる。
ねえ、気づいてる?そういうところが、可愛いんだから。
「……あのさ、あんた意外と数字弱い訳?」
ちょっとだけ、意地悪な言い方になってしまったかな……でも、ちゃんと意味があるの……
「女神様、どういうことか教えていただいても宜しいでしょうか?」
ああもう……真剣に聞いてくるの、ずるいってば……。
私は小さくため息をついて、彼の目を見つめながら答えた。
「今月は31日あるでしょ」
彼は不思議そうな顔をしてる。やっぱりまだ分かってないみたい。
そういうとこも、ちょっと可愛い……
「あのさあ、31日で42人てことは、このペースだと……」
指で軽く空中に数字を描きながら、私は計算してみせる。
ほらね、これじゃ――
「1年で500人の魔王討伐できないでしょ!」
そう、目標には届かないのよ。だから……もうちょっと頑張ってもらわないと。
でもほんとは、わかってる……彼がどれだけ頑張ってるかなんて……ずっと見てきた……
冷たく言ったのは……照れ隠し……かもしれない……
だって、こんな気持ち……本人には、まだ言えないもの。