酔った彼女にドキドキな僕。お酒で酸っぱい思いをした私。
~勇者視線~
僕は魔王討伐を終わらせ、女神のもとへ帰還した。待っていたのは顔が少し赤く、ほろ酔い状態の女神だった。
「おかえりなさあい・・きょうも・・元気でえすかあ・・」
少し呂律が回っていない女神。なんだ・・何があった?・・・
「女神様。大丈夫ですか?酔っていますね?」
少しオーバー気味な動きをしながら、女神は口を開く。
「だあいじょうぶ・・でーす・・よ酔ってなんかいません・・」とても大丈夫とは思えません・・・
女神は座り込んだ。
「何か嫌なことがありましたか?」お互いに嫌なことばかりですね・・・
僕が聞くと女神が叫んだ。
「本部長のバカやろーう!」本部長?誰だ?女神の上司なんだろうな・・・
女神は少し涙目になっている。
「女神様は責任のある立場ですし、日々大変ですね。僕ができることはお力になります」なんだかんだで、僕も助けてもらうことあるし・・・
女神は僕に寄り縋って来た。
「ありがとうね。いつも無理ばっかりさせて、ゴメンね」え!え!なに!何なの!
僕の心臓の音が激しく響いている。
「僕も迷惑かけています。女神様に助けて頂き感謝しています」ドキドキなんですけど・・・
女神が僕の顔に手を添えて囁いて来た。
「私のことどう思っているの?」え?なに?どういう展開?え?え?えええ?
女神は僕を見つめている、僕は視線を逸らしてしまった。次の瞬間
「うえええええええ・・・・・・」なんか出てますか・・・・・
~女神目線~
私は彼の帰還を待っていた。
魔王討伐という過酷な戦いを終えて、ようやく帰ってきてくれた。
ちょっとだけ……お酒に頼ってしまったのは……ほんの気持ちの整理のつもり……
「おかえりなさあい……きょうも……元気でえすかあ……」
少し呂律がまわらなかった……きっとお酒のせい……
彼が驚いたような顔で私を見る。
「女神様。大丈夫ですか?酔っていますね?」
うぅ……ばれてしまった……私は思わず少し大げさに、手を振ってみせた。
「だあいじょうぶ……でーす……よ酔ってなんかいません……」
全然だいじょうぶじゃない……分かってる……
それでも私は座り込んでしまう。重くなった心が……身体まで引きずっている……
彼が優しい声で尋ねてくれる。
「何か嫌なことがありましたか?」
その言葉で、抑えていた感情が堰を切ったように溢れた。
「本部長のバカやろーう!!」
泣きたいの、ほんとは……
あんな風に責任ばっかり押しつけられて、平然としていられるわけないのに。
だけど彼は、そんな私を責めたりしない。
「女神様は責任のある立場ですし、日々大変ですね。僕ができることはお力になります」
その言葉が、心にじんわりと沁みていく。
そして私は、気づけば彼に寄りかかっていた。
「ありがとうね。いつも無理ばっかりさせて、ゴメンね」
本当に、感謝してるの。だけど……どうしてだろう。
今夜はそれだけじゃ足りない気がして。
「僕も迷惑かけています。女神様に助けて頂き感謝しています」
ダメ……そんな真っ直ぐな目で見られたら……
心臓が、痛いくらいに高鳴ってしまう。
私はそっと彼の顔に手を添えて、想いを込めて囁いた。
「私のこと、どう思っているの?」
彼の目が揺れる。視線を逸らしたその表情に、私の胸もまた締めつけられる。
だけど、次の瞬間──
「うえええええええ・・・・・・」
えっ、ちょっと……!?
なにか、出てる……?!