猫を撫でる僕。犬に変身する私。
~勇者視線~
魔王を倒した僕は女神のもとへ戻った。しかし、女神が見当たらない。代わりに一匹の犬がいた。
まさかと思うけど・・・こっち見てる・・・おそらく女神が変身したのか?
「ワン!ワン!ワン!」
犬は僕を見つけると尻尾を振りながら、近づいて来た。僕に頭をさすれと言うような仕草をする。
「はいはい・・・いい子だね・・・」何やっているんだろ・・・・
僕が頭をさするとさらに、首の辺りもさすれと言う仕草をしてきた。
「ここが良いのかい?よしよし・・・」はあ・・なんなんだこれ・・・
しばらくして、満足した犬はどこかへ去っていった。
何を考えているんだあの人は・・・
すると上機嫌の女神が現れた。
「お帰り!調子はどうですか!」
良くわからない人だ・・・
そして僕は次の魔王討伐へと向い無事終了した。また、女神のもとへ帰還した。今度は一匹の猫がいた。
もうさ、好きにしてよ・・・はいはい・・・撫でればいいんでしょ・・・
「はいはい・・・かわいい子だね・・・」
僕は猫を頭から全身までなでまわした。すると後ろから声がした。
「あんた何?浮気してんじゃないわよ」
そこには涙目の女神が立っていた。はい?この猫も女神の変装ってパターンじゃないの・・・
「現行犯逮捕」
女神は僕を羽交い絞めにした。まぎらわしい事するから・・・
~女神目線~
魔王を倒して、彼が帰って来た。
だけど今日は、ちょっと変わったお出迎えをしてみた。
「ワン!ワン!ワン!」
私は、一匹の犬に姿を変えた。
どうしても、彼に甘えたかったの。
女神の姿だとプライドが邪魔をして、なかなか「撫でて」なんて言えないし。
そっと彼に近づいて、尻尾を振ってみる。
「はいはい・・・いい子だね・・・」彼が頭をなでてくれる……
「ここが良いのかい?よしよし・・・」あぁ、しあわせ……
私は満足するまで彼に撫でてもらった。
犬のふりのまま、その場をあとにした。
ふふっ。ちょっとだけ、癒されちゃった。
私は女神の姿に戻り、彼を出迎えた。
「お帰り!調子はどうですか!」
そしてまた、彼は次の魔王討伐へ旅立ち、無事に戻ってきた。
私が彼を出迎えた時、彼の声が聞こえた。
「はいはい・・・かわいい子だね・・・」
かわいい子?私以外に?誰かいるの?
彼は一心不乱に猫を撫でていた。
私は彼の後ろから声をかけた。
「……あんた何? 浮気してんじゃないわよ」
私は彼を思いっきり抱きしめながら叫んだ。
「現行犯逮捕」
私以外にしたらダメ……私だけのあなたなの……