優しく尋問する僕。言いたいことを言えない私。
~勇者視線~
僕は女神に転生させられて魔王討伐の任務を与えられている。これまでに数えきれないほど討伐してきた。そんなある日の事。
「あんたってさあ、なんだかんだで仕事早いじゃん」
珍しく女神が僕を褒めている。何を企んでいるんだ・・・
「どういう事でしょうか?」
牽制を含めた質問を僕はした。また無茶言うな・・・
「だからさ、やればできるんだから、もう少しピッチあげてもいい?」
微笑みながら女神は無茶な提案をしてきた。ほら来た!来ましたよ・・・
「無理をして、怪我したり最悪死ぬこともありますよ」
少し脅すように僕は言った。妥協したら負けだ・・・
「そんなのイヤに決まってるでしょ。でも・・・」
女神は奥歯にものの挟まったような言い方をする。何か隠してるな・・・
「でも・・何でしょうか?理由があるのですね?遠慮せず仰ってください」
僕は優しく尋問した。まあ予想はついてるけどね・・・・
「怒らずに聞いてくれる?」内容によるけどね・・・
「なぜ僕が女神さまを怒るのですか」心では怒ってるよ・・・
「あのね、今なら討伐ポイント2倍なの」ドラッグストアーかよ・・・・
~女神目線~
もう何度目だろう。彼に魔王を討伐してもらうのは。
最近はむしろ、彼が戻ってくるたびに胸がきゅうってなる。
私、女神失格
「あんたってさあ、なんだかんだで仕事早いじゃん」
そんな気持ちを誤魔化ように、私は彼に話しかけた。
「どういうことでしょうか?」
あ、警戒してる。ちょっとだけ眉をひそめる表情も好き。って、何考えてるの……
「だからさ、やればできるんだから、もう少しピッチあげてもいい?」
できるだけ軽く、冗談っぽく。
でも内心はドキドキしてる。
本当の理由を言うには、勇気が足りなかった。
「無理をして、怪我したり最悪死ぬこともありますよ」
彼の声が少しだけ厳しくて、心がチクリとした。
「そんなのイヤに決まってるでしょ。でも……」
言葉がつかえる。言えないよ、こんな理由。
「でも……何でしょうか?理由があるのですね?遠慮せず仰ってください」
彼の声が少しだけ優しくて、私はうつむいてしまった。
ずるいなあ、そういうところ……
「怒らずに聞いてくれる?」
言いながら、自分でも情けなくなった。
怒るに決まってるよね、こんなこと言ったら。
「なぜ僕が女神さまを怒るのですか」
やっぱり、優しいんだ……
だから、ちゃんと伝えよう。
「あのね、今なら討伐ポイント……2倍なの」
言った瞬間、空気が固まった気がした。
でも、これは冗談でもテキトーでもないの。
あなたを救うために必要なのポイントが……