討伐から戻った僕。魂を無くした私。
~勇者視線~
魔王退治から女神のもとへ戻った僕。女神は何かを探していた。
「ない。ない。ない。なーい!」
またトラブルですか・・・
「どうされましたか?」
僕を見る余裕もない女神は手を動かしながら答える。
「あんたの魂入れてた箱が無くなったのよ」
ええっと・・ぼくの・・魂って・・・無くしていいモノなの?
「一応伺いますね。最後に見たのっていつですか?」
ん?ふとした疑問が浮かんだ・・僕がそれを先に見つけたら自由になれるのでは?
「あんたがさっきの討伐行く前はあったのよね」
ふむふむ・・なら近くにあるな・・・
「ちなみにその箱の特徴ってどんな形ですか?」
女神は手に持っていた箱を見せながら説明してきた。
「この箱みたいな感じ・・・あ、手に持ってた。えへ」
えへじゃねえよ・・・・
~女神目線~
またやらかした。
「ない。ない。ないっ…なーい!!」
どこいったのよ、ほんとに。
どうして、見当たらないのよ…。
「あの…女神様、どうされましたか?」
あ。彼が帰ってきた。ちょっと嬉しいけど、今それどころじゃないの。
彼の顔を見る余裕もなく、私は手をバタバタさせながら答える。
「あんたの魂入れてた箱が、ないのよ…」
今思えば、ちょっと言い方が悪かったかもしれない……
けど焦ってたのよ、こっちは。だって、彼の魂が入ってるのよ?
彼は不思議そうな顔をして、一応って感じで聞いてきた。
「最後に見たのって、いつですか?」
そんな冷静に聞かないでよ。私がドジ踏んだみたいじゃない……
いや、実際そうなんだけど……
「さっきの討伐行く前には、ちゃんとそこにあったのよね…」
彼、少し考え込んでる。え、なに?なんか変なこと考えてない?
「ちなみに、その箱ってどんな形なんですか?」
あ、ちゃんと協力してくれるんだ。
私は手に持っていた箱を見せながら説明する。
「この箱みたいな感じで……あっ」
見せながら、気づいた。
「あ、手に持ってた。えへ」
……いや、ほんと、えへじゃないのよ。
私、ちょっとテンパってただけだから……