サプライズに気づく僕。逆にサプライズを受けた私。
~勇者視線~
僕は魔王討伐を終えて女神のもとへ帰ってきた。
女神の姿はなく机の上にメモが置いてあった。
━探さないでください。━
は?なんだこれ?女神失踪?
僕は部屋を見渡した。いつもと変わらず、色々なものが散乱としていた。
「さっきまでいたような感じだよな」
僕は独り言を言いながら部屋の片づけを行った。
1時間ほど過ぎた。ほぼ片付けも終わり、僕はお湯を沸かした。
コーヒーでも飲みたいな・・・
まだ女神は帰って来ない。
僕はもう一度メモを観察した。
よく見るとチラシの裏にメモ書きしていた。
表も見て僕は納得した。
「そういう事ね」
しばらくして、女神は帰ってきた。
「ただいま」
上機嫌だ、おそらく間に合ったのだろう・・・
「聞いて今日ね」笑顔で話す女神。
聞くまでもない、チラシに載っていた先着100名のプレミアムケーキを手に入れたんでしょ・・・
~女神目線~
彼が魔王を討伐に行った日、私はどうしても手に入れたいものがあった。
先着100名限定、プレミアムケーキ。
「探さないでください」
残したメモは、少し大げさすぎたかな…
こんなの、彼ならきっと心配する。
それなのに…ケーキのチラシの裏に書いちゃった。うっかり…
急いで戻ったら、部屋が綺麗になっていた。
私は思わず立ち止まった。
片付け、してくれたの?……
「ただいま」って言うと、彼は何も聞かずに、ただこっちを見て笑ってた。
ああ、こういうところがずるいのよ。
「聞いて今日ね——」
話しかけたその瞬間、彼はチラシを手にしている。
……バレてる。
彼はたぶん分かってた。
わざわざ何も言わず、片付けまでして待っててくれたことが、
胸にじんと染みて、私はそっと手を差し出した。
私がいなくても、この部屋を守ってくれる人がいる。
やっぱり、あなたのいるこの場所が、いちばん甘いのよ。