失敗する僕。心配する私。
~勇者視線~
僕は初めて魔王討伐に失敗した。とどめを刺す前に逃げられてしまった。
「女神様、申し訳ありません。魔王に逃げられました」
僕の報告に女神は激怒した。
「あんたって本当に使えないわね。倒すまで帰って来ないで良いから」
「分かりました」
ん?この状況って、このままここに移住するのもありだ・・・
「次の仕事もあるんだから早いのが良いんだからね」
何で今まで気づかなかったんだ・・・
「今日中には倒して帰ってきなさいよ」
どうしようかな・・・
「いつものように、出来るでしょ」
ふふふ、いつものパターン来たよ。甘えたら言うこと聞くと思ってるよ・・・
「あんた、立場を分かってないようだね。私がその気になったら、どうなるか教えないとだめみたいだね」
え?え?え?何かヤバくないかこれ・・・
「オートモードに切り替えたら、あんたの意思なんかなくなるからね」
初めて聞きました・・・
「すぐに退治を終わらせ女神さまのもとへ帰ります」
僕の返事に女神は満足した。
「分かればいいのよ」
~女神目線~
彼から連絡が来た。
「女神様、申し訳ありません。魔王に逃げられました」
聞いた瞬間、私は彼が無事か心配になった。
逃げられはしたが、彼は無事だった、ほっとしてる自分がいた。
でも素直に言えなかった。
「……あんたって本当に使えないわね。倒すまで帰って来ないで良いから」
お願い、危険な目に遭ったなら、帰ってきて。
でもそんなこと、言えない…
「分かりました」
本当に帰ってこないつもり?
「次の仕事もあるんだから早いのが良いんだからね」
言い方、強すぎたかな……
「今日中には倒して帰ってきなさいよ」
早く戻ってきてほしいんだよ。
……気づいてないの、私の気持ち。
「いつものように、出来るでしょ」
彼ならできる。いつもそうだった。
でも、不安だった。もしかしたら、どこか遠くに行ってしまいそうな気がして。
「あんた、立場を分かってないようだね。私がその気になったら、どうなるか教えないとだめみたいだね」
焦りが言葉になって出てしまった。
「オートモードに切り替えたら、あんたの意思なんかなくなるからね」
——嘘。彼の意思を奪うなんて、私が一番望まない。
「すぐに退治を終わらせ女神さまのもとへ帰ります」
その言葉が素直に嬉しかった。
「……分かればいいのよ」
本当は、早く帰って来てって言いたかったの…