僕は女神の目が怖かった。私は彼に伝えられない気持ちを、ただ見守りながら待っている。
~勇者視線~
転送された世界で、また魔王を倒した僕。
ようやく帰ってきたと思ったら、女神は機嫌が悪い。
僕を見ないで、ぷいっとそっぽを向いた。
しばらくして、やっと口を開く女神
「帰り、遅いわよ」
え? 時間の流れ、違うんじゃ……?
「まさか、他の女と仲良くしてたんじゃないでしょうね」
魔王しか倒してませんけど!?
「私だけを見なさいって言ったわよね?」
そんなの言われてないし!
でも僕は逆らえなかった。
女神の目が、ちょっと怖かったから。
~女神目線~
彼が戻ってくるのを、私はずっと待っていた。
魔王を討伐している、彼の無事を祈りながら。
もう帰って来ないかも。
それがどうしても、耐えられなかった
彼を送り出すたびに胸が苦しくなる。
無事でいて、毎回祈ってる。
やっと彼が帰ってきたその瞬間。
私は視線をそらし「帰り、遅いわよ」と言った。
ちょっとだけ冷たくして、彼がどう反応するか見たくなった。
「まさか、他の女と仲良くしてたんじゃないでしょうね」
私の頭の中では、彼が他の誰かに取られてしまうのが嫌で、
その考えに耐えきれず、心が痛む。
「私だけを見なさいって言ったわよね?」
その言葉を言った時、ちょっと強くなりすぎたかもしれない。
彼が返事をしなかった。なんだか不安になる。
私の目が、きっと怖かったんだろうな。
でも、私は彼に伝えられない気持ちを、ただ見守りながら待っている。
それが私の恋の形だから。