双つの玉、ひとつの覚醒「過去と未来を統べし者」
~勇者視線~
僕の影はさらに続けた。
「無駄なんだよ。何をしても」
「やる前から諦めたって、何も変わらないだろ」
「これを見てみろ……」
玉の中に選ばなかった過去の記憶が流れ込んでくる。
そこにいる僕は自分の過ちに打ちひしがれていた。『もうダメだ……』絶望している。
選ばなかった分岐なのか……記憶にない光景だ……
「お前の選ばなかった過去だ。抗ってもこうなる」
「信じています!」「お兄ちゃん……」微かに女神とハナの声が聞こえる……
『僕は負けない!折れない!乗り越える!』
記憶の中の僕が叫び、僕の目の前に現れた。
「なんだ!どうなっている……」
僕の影は動揺している。想定外の出来事が起きたようだ。
「君は未来を選んだ僕なんだね」
「君は過去を選んだ僕か……」
僕たちは互いに頷き、すべきことを理解した。
僕たちは自分の玉を出す。
2つの玉が引き寄せられ、中央で交わる。
内部の歯車が逆方向に回転しながら、やがて同じリズムを刻み始める。
世界に安定が戻り、時間が今へと整っていく。
「やめろよ……そんなことしたって……無駄な……うあああ……」
僕の影は消え去った。
記憶の中の僕が僕を見ながら呟いた。
「なあ……帰るところは一緒だ……僕たちも……」
僕はただ頷く。そして、僕たちは一つになった。
新たな記憶が溢れかえる……新たな力も……僕は覚醒した。
「ただいま戻りました」
女神とハナのもとへ戻った。
~女神目線~
未来を選んだ彼……選ばなかった方の彼の絶望……玉は並行世界の絶望を……負けないでよ……
なになに……並行世界が……一緒になった……なんで……ええええ……彼が2人いる……
この今こそが奇跡ね……まさか……過去と未来を融合させるなんて……想定外もいいところね……