何度でも、あなたを信じてる。立ち上がる理由は、信じてくれる人がいるから
~勇者視線~
剣が輝き始めた。光が僕を包み込む。過去の記憶がよみがえる。僕が負けるシーンだ。
大魔王戦……魔神戦……強敵に殺されかけ……何度も女神に救ってもらってきた……
僕は無力だ……一人では戦うこともできない……今も女神の加護が届かない……勝つことはできないだろう……
だが……僕の目の前に……強敵たちがいる……戦わないといけない状況だ……
僕は剣を構える。まずは、大魔王か、行くぞ……
あの時と同じ展開になっている。僕の攻撃を軽く往なす。通用しない。相手の攻撃が僕にダメージを与える。避けられない……地面にひれ伏す僕。何も変わらない……
今度は魔神が僕の目の前に立っている。見た目は女性、声はだみ声。完全な色物なはずが実力は大魔王以上。僕なんか相手にもならない……無様に倒れる僕。
何度も何度も繰り返される。僕は無力だ……立ち上がると、倒される。その繰り返しだ。
絶望しかけた、その時。声が聞こえた。
「過去を切れば、全てを忘れられる」
「誰だ……」
「忘れて進め、重荷を切れ。それが“断ち切る力”だ」
断ち切る力……どういうことだ……
「あなたを信じています」女神の声が……いやこれは僕の記憶の中だ……
「そうだ。切り捨てるんじゃない……背負って前に進む。それが僕の選ぶ未来だ!」
僕はまた立ち上がる。そして剣を構え、僕の心の中の強敵と対峙した。
勝てないと思っている、僕の心に勝つ……
剣を振るう…が、過去を断ち切るのではなく剣ごと幻影を突き刺した。
過去を変えることはできない。だが……乗り越えることはできる。
そして……大魔王も魔神もいなくなった。
空が晴れて、時が再び流れ出す。
剣が光を放ち、僕の手に吸い寄せられるように飛んでくる。
まるで正式な持ち主として僕を認めるかのように。
僕のそばには女神とハナがいた。帰って来れたんだ……
「過去の強敵と決着をつけてきました」
「過去に向き合ったからこそ、前に進めたのね」
「お兄ちゃん、ちょっとかっこよかったよ」
僕からは見えていなかったが、二人には僕の様子が見ていたらしい。
~女神目線~
彼はどこにいるの……私の全力で……彼を見つけてみせる……
「お姉ちゃん私も手伝う」
ハナも協力してくれている。
微かな彼のオーラを感じた。剣も一緒ね……見つけたわよ……彼が過去の亡霊と対峙している……
負けないで……倒されても……倒されても……立ち上がる彼……これ以上は近づけない……
「あなたを信じています」届いて……あなたなら……乗り越えることができるんだから……
早くやっつけなさい……
「お兄ちゃん……」ハナも叫ぶ。
彼は見事に過去の強敵と決着をつけたみたい……無事に帰って来てくれた……ありがとう……
「過去の強敵と決着をつけてきました」
「過去に向き合ったからこそ、前に進めたのね」
「お兄ちゃん、ちょっとかっこよかったよ」
ちょっとだけかっこよかったわよ……私が言いたかったのに……