狙われし少女!私が守る。私も守る。あとは誓約書を守って……
~勇者視線~
最近なんかたるんでいると言うか、緊張感が足りていない……
そう感じていた僕に久々に事件が起きた。女神関連のドッキリではなく……ガチっぽいやつだった……
僕が魔王を倒して帰ろうとしたときに、矢が飛んで来た。
矢は簡単によけることができた、ただ……手紙のようなものが付いていた。絶対これ嫌な奴だよ……
内容はハナをおとなしく渡せ、さもなくば……のような内容だ。例の組織ってやつか……
「女神様、見えますか?例の組織らしい相手から手紙が……」
「そのようね……近くにまだなんかいる?」
「気配はなさそうです」
女神様と連絡を取り合った後、僕はその手紙を慎重にポーチに入れた。
魔王退治の直後にこれは……もうちょっと休ませてくれても……良くないですか……
神殿に戻り、手紙を解析してもらうことになったけど……
「暗号らしいけど、読まなくても内容わかるじゃない」
女神が手紙を見下ろしている。
「どうせ“ハナ渡せ”系でしょう?」
「はい……その通りでした」
「もうそのパターン飽きたのよね~。ちょっとは捻ってきなさいよ……」
あの……捻られたらそれはそれで困るんですが……
すると、ハナがそっと僕の後ろから顔を覗かせてきた。
「お兄ちゃん……私、また迷惑かけてる……」
ううん、違うんだ……でもこういう時になんて声かければ……
え……ちょっと泣きそうになってる……あわわわわ……
「いやいや!迷惑なんてとんでもない!むしろ僕の人生の彩りだよ!華!ハナだけにね!」
「…………」
「………………」
あれ?寒かった?
女神が立ち上がった。空気がピリッとする。
「というか、何よ“渡せ”って。ハナはあんたのペットでも荷物でもないのよ?」
「うん……私、生きてるもん……」
「私が彼を渡せって言ったら渡すの?って話よ。ねえ、そうでしょ?」
「それは……やだ……」
あれ……この空気どこかで……このパターンは……
「やめてください!また変な言い争いに持って行く気ですね?誓約書をもう一度読み返して下さい」
僕はポーチから誓約書を取り出し、ふたりに見せつけた。
「一、勇者の精神的安全を第一とする。
一、勇者の心臓を止めるような事態は避ける。
一、不要な取り合いはしない。←ココ!!」
「…………」女神、そっぽ向く。
「…………」ハナ、しょんぼりしている。
まったく……こんな手紙ひとつで、こっちの胃が削られるなんて、割に合わなさすぎる……
「でも……心配しないでね、お兄ちゃん」
ハナが僕の手を握る。
「どんな敵が来ても、今度は私が守る側になりたいの……」
女神も、穏やかな表情に戻った。
「そうね……私も本気出す時が来たのかもね。ふふ、逃げ場なんてないってこと、相手に教えてやらなきゃ」
うん……やっぱり頼もしい……でもやっぱり……戦いが終わった後は平穏な日常が一番なんだ……ほんとに……いやマジで平穏ください……
~女神目線~
遂に……あいつらが動き始めたようね……さてと……罠でも仕掛けようかしら……どうしたものかしら……
ちょっと……彼がおっさんみたいなこと言ってる……ダメ……そんなのダメよ……思わず立っちゃった……
まあいいわ……この子も守って……彼の事も……ちょっと……ヤダ……誓約書なんか出して……
そんなことより……私の本気を見せつけてあげるわ……