豪商金満堂!黄泉ビジネスの闇と髪の毛一本の価値!?
~勇者視線~
嘘くさいニセ両親を退けたあと、僕たちは再び黄泉の道を歩いていた。
鬼子は少し寂しそうにしている。
「お兄ちゃん……本当のパパとママって……どんな人だったのかな……」
僕はそっと鬼子の頭を撫でた。
「大丈夫だよ。きっとすぐに見つかるさ。」
女神がニヤリと笑っている。
「ふふん、安心しなさい。次に出てくるのが本物かもしれないわよ?」
ほんとかよ……絶対また変なの出てくるだろ……
すると、前方から何やら妙な行列が近づいてくる。
なんだあれ…… 貴族だ貴族…… 見たことないくらい豪華だ……
着飾った霊たちが行進し、真ん中には金ピカの豪華なカゴが揺れている。
「おおおおお! よくぞ来た勇者殿! 黄泉の世界にようこそ!」
中から現れたのは、やたらとキラキラしたおっさん霊。
「我こそは黄泉の豪商・金満堂! 名だたる富豪である!」
いや、名前からして胡散臭すぎだろ……
金満堂が腕を広げて宣言する。
「聞いたぞ! お前たちはその子の両親を探しているとか!」
「え? そうですけど……」
「我が情報網を駆使して調べた結果、両親の痕跡が見つかったのだ!」
「ほんとに!?」
鬼子が目を輝かせる。
「ほ、本当ですか?」
「もちろんだ! ただし、情報には代価が必要でな……」
出たよ、金の亡者……
女神がキレ気味にツッコむ。
「何よ、黄泉の国でお金って意味あるの?」
「なにを申すか! 死してなお財を貯めるのが商人の鑑!」
いやいや、黄泉の国でビジネスってどういうことだよ……
「代価として、勇者殿の装備一式をいただきたい!」
「ふざけるな! それじゃ戦えなくなるだろ!」
「ならば……鬼子殿の髪の毛一本でよい!」
「怖っ! なんで髪の毛!」
「我が館に飾って、幸運のお守りとするのだ!」
「い、嫌だよそんなの……」
金満堂がニヤつきながら手を伸ばすと、女神が塩を取り出した。
「はい、塩ぶっかけタイムね。」
「ま、待て! 塩は勘弁! 言う、言うから!」
必死に命乞いする金満堂。
「両親は……黄泉の森の奥深くの泉に眠っていると聞いた!」
「泉……」
「かつて黄泉王により囚われた者が流した涙が集まった場所だ……」
僕と女神は顔を見合わせた。
「どうする?」
「行ってみるしかないわね。」
鬼子が意を決したように頷いた。
「うん、行ってみる!」
金満堂がそっと囁く。
「気をつけなされ……泉を守る者がいると聞くが、それが何者かはわからぬ……」
「情報が中途半端だな……」
「お金が足りなかったもので!」
「もういいよ! 行こう!」
こうして僕たちは泉を目指して歩き出した。
金満堂が後ろで叫んでいる。
「また来てね! いつでも商売してるから!」
行かないってば……
~女神目線~
泉……黄泉王ですら触れなかった場所。
そこに鬼子の両親がいるのか……気になるわね……
でも、あの金満堂の胡散臭さも半端ないわ。
もしやこれは罠…… いや……面白そうだから行ってみましょうか……
どうせ私は塩があれば無敵だしね……