嘘だらけ!黄泉のニセ両親と女神の撃退作戦!
~勇者視線~
僕たちは黄泉の世界の王を倒した。もうここに居る理由なくなった気がするのは僕だけだろうか……
「女神様、僕たちはあとここで何をすればいいのですか?」
「鬼子の両親を見つける」
そうだった……忘れてたけど、そもそもそのために来たんだよな……
「まあ、この辺で呼びかければ出てくるでしょ?」
ざっくりしすぎでしょ……
すると突然、霧の中から二つの影が現れた。
「おおおお! 我が娘よ! ようやく会えたなぁぁぁ!」
「 ママだよ! あなたの両親だよぉぉぉ!」
嘘くさい…… 全力で嘘くさい……
怪しさ全開の男と女が手を振っている。
鬼子が首を傾げている。
「お兄ちゃん、あの人たち、誰?」
「いや、君の両親を名乗ってるけど……あれ絶対おかしいでしょ!」
女神がニヤニヤしている。
「これはわかりやすいニセモノね。さて、どこまでボロを出すかしら?」
男が鬼子に駆け寄り、大袈裟に涙を流す。
「 いやぁ、お前が無事でよかった! 父さんは心配で心配で、夜も眠れなかったんだ!」
「黄泉の国で寝る必要あるの?」
「えっ!? あ、いや、その……心の安寧的な?」
次は女が鬼子を抱きしめようとする。
「私があなたのママよ! 大きくなったわねぇ~、さぁママに甘えなさい!」
「私、ママなんて呼んでなかった……」
「喜びすぎて間違ったわ、 黄泉の国だからテンションが乱れちゃってね!」
いやいや、もう言い訳が意味不明だろ……
僕は思い切って尋ねる。
「本当に鬼子の両親なら、鬼子の好きな食べ物くらい知ってますよね?」
すると男と女が声を揃えて答えた。
「辛口激辛ラーメンだ!」
「こってりニンニク増し増し餃子よ!」
鬼子がポカンとした顔をしている。
「えーと……お団子が好きなんだけど……」
女神がため息をつきながら、ニセ両親に向かって手を振る。
「はいはい、ニセモノ確定。解散解散!」
男と女が慌てて取り繕う。
「ち、違うんだ! 記憶が曖昧でな!」
「そうそう! 黄泉の国だから、記憶がちょっと混ざっちゃって!」
いや、何その苦しい言い訳……
女神がキレ気味に宣告する。
「はい、嘘つきは退場! 悪霊退散!」
塩をバッサァッとぶちまけた。
「ぎゃああああ! しょっぱいぃぃぃ!」
「くぅぅぅ、塩分過多で昇天するぅぅぅ!」
嘘くさい二人はあっという間に煙のように消えていった。
鬼子が僕に抱きつき、困った顔をしている。
「お兄ちゃん、変な人たちだったね……」
「ほんとにな。あんな両親いるわけないよな……」
「黄泉の国ではこういうニセモノが出るのよ。ほんと暇な霊が多いわね……」
まぁ、とりあえず鬼子が無事で良かった。
次こそ本物の両親を見つけたいけど……こんなんばっかりだったら、こっちが先に参りそうだよ……
~女神目線~
まったく、黄泉の国には本当に暇な霊が多すぎるわね。
あんな分かりやすいニセモノに引っかかるわけないでしょ……。
でも、鬼子の両親が本当にどこかにいるはず、ちゃんと探してあげないとね。