裏切り者の宴。開幕
~勇者視線~
老婆から話を聞いたあと、女神は何やら準備を始めている。
「おびき寄せるって言ってたけど、どうするんですか?」
「決まってるでしょ?裏切り者の宴をやるのよ」
いや、名前からして危険すぎるでしょ……
「宴って……どんなことするんですか?」
「要は鬼子が裏切り者だと証明するために、わざと目立って騒げばいいのよ」
「ちょっと待ってください。それじゃあ鬼子が危険にさらされます!」
「そこは私が守るから大丈夫よ。それに、奴らが出てこない限りどうしようもないでしょ?」
確かに……でもリスクが高すぎる……
「お兄ちゃん、私が頑張るから……」
鬼子が決意した表情で僕を見上げた。
「分かった。何があっても守るよ」
~女神目線~
準備完了。広場に特設ステージを作ったわ。
もちろんド派手な照明と花火付き。
「何ですかこれ……ライブ会場?」
「騒げば騒ぐほど霊が集まるのよ。ほら、鬼子ちゃん、これを着て」
用意したのは、キラキラのアイドル衣装。
「こんなの着るの?」
「いいのよ、可愛いから大丈夫。さあ、歌って踊って!」
鬼子がステージに立ち、恐る恐る歌い出す。
最初はおどおどしていたけど、だんだんリズムに乗ってきた。
その時――霊たちが集まり始めた。
~勇者視線~
「裏切り者……!」
「我らを見捨てた……!」
怨霊たちがステージの周りに集まり、鬼子を睨みつけている。
「やっぱり来たか……!」
僕は剣を構え、いつでも守れるように準備する。
「ほら、もう少しで揃うわよ。勇者、準備はいい?」
「もちろん!」
鬼子が少しずつ声を震わせながらも、歌を続けている。
「なんで……なんであの時守ってくれなかったんだ!」
霊たちが怒りをぶつけてくる。
その時――女神が高らかに宣言した。
「これから真実を見せるわよ!覚悟してなさい!」
女神が魔法陣を展開し、霊たちの意識を強制的に引き込む。
「これで真実を見せる準備はできたわ。さあ、あとは私が導く!」
~女神目線~
誤解を解くには、直接見せるのが一番よ。
いい加減、彼女を責めるのはやめさせないとね。
この宴の最後に、すべてを終わらせるわ。