黄泉の市場の真実の団子と誤解の怨霊
~勇者視線~
ここまでで分かったことは、裏切者と鬼子を恨んでいる霊がいる……だが鬼子は子供を救っている……
どういう事なんだろう……
僕たちは宿を後にした。鬼子は少しスッキリした表情をしている。
しばらく進むと市場が見えてきた。ここって黄泉の国だよね……もう何でもありだな……
「女神様、一応聞きますね?寄って行きますか……」
「愚問ね。行かない理由がどこにあるの」
時間は有限なんですよ……
市場にはたくさんの店があった。鬼子が団子屋をじっと見つめている。何か思い出したのか……
「お団子、好きだったのか?」
「うん……村のおばあちゃんが、よく作ってくれた……」
「食べるのはやめときなさい。全部食べたら動けなくなるわよ?」
女神が軽口を叩きながら、山盛りの団子を既に平らげている。いや、どんだけ食べるんだよ……
そんな時、団子屋の奥から白髪の老婆が姿を現した。
「あら、………じゃないかい?」
「え……?」
老婆は微笑みながら近づいてきた。鬼子が困惑している。
「おばあちゃん……?」
「覚えてるかい?あんたが小さかった頃、よくお団子作ってたんだよ」
「うん……でも、どうしてここに……?」
老婆は少し悲しそうに笑った。
「村が滅んだ後、私も命を落としてねぇ。気づいたらここにいたんだ」
「ごめんなさい」
鬼子が申し訳なさそうにうつむく。老婆はそっと頭を撫でた。
「いいんだよ、あんたが悪いわけじゃないさ。ただ……」
老婆の顔が少し曇る。
「あんたが時間稼いでくれた時に助からなかった人もいるんだ。それで一部の者が勘違いしているんだよ。あんたが裏切ったって」
「そんな……」
鬼子が動揺している。
老婆は続ける。
「でもね、本当はあんたが鬼を引き付けていたおかげで、たくさんの子供が逃げ延びたんだ。それを知っている者もいたさ。でも……」
老婆は寂しげに笑う。
「真実を知らない者たちが、あんたを憎むことで自分を保っているんだよ。だから、怨霊になっても恨みを捨てきれないのさ」
僕は口をはさんだ。
「その怨霊たちを鎮める方法はないのか?」
老婆は首を振る。
「それは本人たちが真実を受け入れるしかない。でも、怨念が強すぎてそれができないんだよ」
女神が口を挟む。
「なら、真実を見せてやればいいのよ」
「え?」
「私に任せなさい。記憶を追体験する儀式をやれば、彼らに真実が届くはずよ」
「そんなことができるんですか?」
「できるかどうかは別として、やらないよりマシでしょ?」
強引だけど、確かにその通りだ……女神の力ならできるような気がした……
~女神目線~
誤解とか勘違い……人の恨みほど強い力もないし……ちょっと本気出さないといけないわね……