対鬼神戦 適わない僕。諦めそうな私。
~勇者視線~
鬼神が姿を現した瞬間、その圧倒的な重圧に息が詰まる。
漆黒のオーラをまとった巨大な体、赤く輝く瞳がこちらを見下ろしている。
デカい……ヤバい……足が震えて動けない……
「勇者よ、気を引き締めろ!」 魔神が鋭い声で叱咤する。
「大丈夫、私たちがついてるわ!」
女神も力強く言うが、二人とも緊張感を隠せていない。
「うおおおおおおお……」
自分に言い聞かせるように、剣を構えた。
震える手を無理やり押さえつけ、鬼神に向かって駆け出す。
「行けえええええ!」
渾身の力を込めた一撃が、鬼神の胸を正面から叩いた。
カキンッ!
金属音が響き、剣が弾かれた。
「硬ってええ……くっ……全然効いてない……」
そのまま連撃を繰り出しても、まったくダメージを与えられない。
鬼神は微動だにせず、赤い瞳がさらに鋭さを増している。
「加護を強めるぞ!」
「私もやるわ!」
魔神と女神が光を放ち、僕の体が強化される。
だが、鬼神には通じない。
「こんなに強いなんて……」
焦りと恐怖が強くなっていく。
何とかしないと……このままじゃ……
「鬼……僕を見ろ!行くぞ……」
叫び声が自然と口をついて出た。
その瞬間――鬼神がピタリと動きを止めた。
「なんだ……」
突然の静けさに戸惑う。鬼神の目が揺らぎ、何か苦しそうな表情を浮かべている。
「お兄ちゃん……」
かすかな声が耳に届いた。
「誰だ!」僕は叫んだ。
鬼神はさらに苦しそうになる。何が起きたかわからないが……
鬼神を封印するチャンスになりうると直感した。
~女神目線~
彼が鬼神に立ち向かっている。私たちもできる限りの加護で彼を強化……でも……届かないみたい……
ありがとう……あなたはよく戦ってくれた……もう十分だわ……彼は恐怖に立ち向かう。
大声を出したその時。何かしら……鬼神の様子がおかしい……何かしら……彼の声に反応している……
まだわからない……でも……何か起こりそう……