自立しようとする僕。見守ってみようと思った私。
~勇者視線~
祭壇への道は険しく、瘴気のせいで地面が崩れている。
「勇者よ、我が先導しよう」
魔神がそう言って前に出ようとするが、女神がすかさず阻止する。
「ちょっと!彼を守るのは私の役目よ!」
「何を言う。我の加護があるのだ、貴様など不要だ」
「誰が貴様よ! 彼には私が必要なの!」
ため息が出る……。この二人、相変わらず喧嘩ばっかりだ。
「大丈夫です。僕が先に行きます」
「何を言っている、危険だぞ」
「そうよ、瘴気が強くなってるのよ?」
「僕には二人の加護があるんですよね? それに、いつまでも守られてばかりじゃダメだと思うんです」
勇者らしくしなきゃ……僕が歩き出すと、足元が崩れてバランスを崩した。
「あっ……」
瘴気が一気に吹き出し、体が動かなくなる。息が苦しい……
「ちょっと!大丈夫……」
女神がすぐに駆け寄り、加護の光が体を包む。
「危ないわね……ほら、ケガはないの?」
「すみません、無茶しすぎました……」
「バカね。気をつけてよ……心配させないでよね」
「ふん、少しは骨があるではないか」
僕が頑張ると言ったのが意外だったのか、二人とも少し照れたようにそっぽを向いた。
やっぱり頼りないかもしれないけど……僕だって強くなりたい……
「僕だって強くなりますよ。だから……見守ってください」
二人は驚いたようで、少しだけ微笑んだ。
よし、覚悟は決まった。どんな困難でも乗り越えてみせる。
~女神目線~
デートするには雰囲気悪いけど……彼とお出かけ……邪魔なあいつさえいなければ……
あ……危なっかしい……どさくさに紛れて手をつないで……恥ずかしい……
わあ……転びそう……もう……私がいないと……そうね……いつまでも手を出し続けても……
少しだけ……見守ってあげるわよ……