第1話 異世界と古びたカメラ
【あらすじ】
平凡な高校生だったツヨシは、ゲームの異世界へ転生してしまう。
手にしたのは「古びたカメラ」――
だが、この一見頼りないアイテムが、運命を変える力を秘めていた。
美少女ティナと共に、ツヨシは世界を救うため、数々の試練に挑む!
【登場人物】
<ツヨシ>
主人公。平凡な高校生…だったはずが、転生先の異世界でまさかのパンツ一丁&無一文に!
唯一手にした「古びたカメラ」とともに、無理やり冒険の旅へと巻き込まれていく。
<ティナ>
予知能力を持つ謎めいた美少女。 その力で危険を察知し、敵の攻撃を回避するが、攻撃能力は持たず、ツヨシを頼る場面も少なくない。 素朴な笑顔や優しさでツヨシを支える。
学校の昼休み。ツヨシは教室の隅でヨーヨーを操っていた。複雑な軌道を描くヨーヨーの動きは、見る者を驚かせるほど精巧だった。ツヨシ自身も、その技術だけは誇りに思っていた。
だが、クラスメートたちの反応は冷たかった。
「またヨーヨーかよ。そんなの何の役にも立たねえよ」
クラスメートのケンジが鼻で笑い、教室には乾いた笑い声が響いた。
ツヨシは何も言い返せず、そっとヨーヨーをポケットにしまった。
「どうせ、俺のヨーヨーなんて誰にも認められないんだ…」
帰宅したツヨシは部屋に閉じこもり、ヨーヨーの練習を始めた。
滑らかに動くヨーヨーだけが、彼にとって唯一の心の拠り所だった。
「いつか、これが役に立つときが来るのか…?」
そうつぶやきながら、彼は愛用のゲーム機を起動した。
お気に入りのTVゲーム「天界空士・GaGa」をプレイしようとしたその時、
手に握ったヨーヨーをふと見つめた。
「この技、試したことなかったな…。成功したらすごいかも」
そう思ってヨーヨーを動かした瞬間――。
眩い光が放たれ、ゲーム機の画面が激しく点滅した。
ツヨシは驚き目を見開いたが、次の瞬間、ヨーヨーごとゲーム機に吸い込まれるようにして意識を失った。
目を覚ますと、ツヨシは見知らぬ荒野に立っていた。しかし、その風景はどこか懐かしい。
「…ここ、『天界空士・GaGa』の地上界じゃないか?」
ツヨシがいつも画面越しに見ていた世界が、目の前に広がっていた。
しかし、ゲームの単なる仮想空間とは思えないリアルさと空気の重みがあった。
「ここは…やばい。盗賊がよく出るエリアだ…」
ツヨシは草むらに身を隠し、周囲を警戒した。
その時、遠くで農夫が盗賊に襲われる光景が目に入った。
「助けた方がいいのか…?でも…!」
体が震え、茂みから動けない。結局、農夫は命を落とし、ツヨシはただ震えながらその様子を見ているしかなかった。
「ここ、ゲームじゃないのか…?命がかかってるなんて…!」
恐怖と絶望に打ちひしがれながら、ツヨシはあてもなく荒野を歩き始めた。
そんな中、彼は一軒の古びた建物を見つける。そこには「骨董屋」と書かれた看板が掲げられていた。
「なんでこんなところに骨董屋が…?ゲームでは、ここに骨董屋はなかったはずだが・・・」
恐る恐る扉を押すと、中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。剣や盾、見たこともない壺や巻物が雑然と並ぶ異世界らしい店内だ。
「いらっしゃい」
低く渋い声が聞こえ、振り返ると筋骨隆々の店主が鋭い目でツヨシを見ていた。
その迫力にツヨシは思わず後ずさりした。
「ヤバい…ここ、絶対危ない店だ」
そう思いながら店を出ようとしたが、店主がにやりと笑いながら引き止めた。
「せっかくだ、何か買っていけよ」
ツヨシは商品を見て回るが、剣や盾には高額な値札が並んでいる。
「こんなの、俺には買えない…」
すると店主が埃をかぶった壺を指さし、言った。
「この壺、めったにお目にかかれない貴重品だぜ。20万円が、今だけ特別に10万円だ。どうだ?」
その時、小さな地震が建物を揺らした。壺はカタカタと揺れ続けている。なんだか妙に軽そうだ。
「これ、プラスチック製じゃないのか…?」
ツヨシが壺に手を伸ばすと、店主はにやりと笑い、手を伸ばして止めた。
「触れるのは、買った後だけだ」
諦めかけたその時、ツヨシの目に古びたカメラが飛び込んできた。値札には「1000円」と書かれている。
「これなら買える!」
ツヨシが店主に告げると、店主は値札をずらして隠れていたもう一桁を見せた。
「1000円じゃない。1万円だ」
「ええっ!?」
「そうだ。このヨーヨー、ただの玩具じゃない。ここはきっと異世界。何かすごい力があるはず!」
ツヨシはヨーヨーを店主に向かって投げつけた。
「これでもくらえ!」
だが、ヨーヨーは店主の鍛え抜かれた胸筋に「ぽてっ」と当たり、そのまま床に落ちた。
「…なんだそれ?そんな軽いヨーヨーが効くかよ!」
ツヨシは、店主に全財産をむしり取られたあげく、店を追い出された。
ツヨシが荒野をさまよっていると、2人組のゴツいオッサンが現れた。
「よお、坊主。金持ってんのか?」
「持ってねぇなら、その服置いてけよ」
ツヨシは後ずさりしながら、手に持ったカメラを見つめた。
「ここはきっと異世界。このカメラ、きっと特別な力があるんだ…!」
「そうだ・・・。写真を撮ると、魂を抜き取るやつじゃないのか!どこかで見たことがある!」
ツヨシはカメラを構え、
「これでお前らの魂を抜き取ってやるー!!」
と叫びながらシャッターを押した。
「カシャッ」
シャッター音だけが響き、オッサンたちは呆れた顔をした。
「なんだ、それ?」
「写真撮る暇あったら逃げりゃいいのによ」
ツヨシはあっさり捕まった。しかし、ツヨシはお金がなかった。オッサンたちは、
「なんだ、こいつ金もってねーじゃねーか」
と言いながら、
ツヨシは身ぐるみを剥がされたが、ヨーヨーとカメラだけは「ガラクタ」として見逃された。
夕暮れ、ボロボロになり、パンツ一丁とヨーヨーとカメラだけしかなくなったツヨシは、木の根元で膝を抱えていた。
「俺、なんでこんな目に…」
ヨーヨーは効かず、カメラもただの古道具。そして、すべてを失った異世界の生活は、想像以上に厳しく残酷だった。
それでもツヨシは空を見上げ、つぶやいた。
「このまま、寒さで死んでしまうのか・・・?それとも、餓死するのが先か・・・?」
しかし、彼はゆっくりと立ち上がる。絶望の底から、何かを掴むために。
(続く)
<読者の方へ>
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