AI生産管理システム
久々に突発的に描き散らかしたので、記録を兼ねて投稿してみました。
「材料を補充してください」
モニターに映し出されている文字を見て、俺はため息をついた。
「材料の搬入はまだ来ないのか?」
「今、確認が取れました。税関で足止めされていて、搬入は明日以降になるそうです。
生産計画では、今日中に終わるはずでしたが……」
「材料がなくちゃしょうがないだろう。
生産は一時中止だ。ラインを止めてくれ」
いつも通りの手順でラインを終了しようとすると、まるでそれに抵抗するようにモニターにメッセージが表示される。
『今、生産を中止すると、納品期日に間に合いません。期日厳守は最優先事項となっています』
こいつは何を言っているんだ?
今までこんな事なかったはずなのに…。
「主任、生産効率が落ちているからと、先週システムを入れ替えましたよね。
なんか、新しいシステム会社が開発したAIシステムで、生産を最優先するために、自分で考えて実行するとかなんとか、社長が言っていませんでした?
「だからって、ない袖は振れないだろう」
確かに、社長がそんなことを言って一日ラインを止めていたよな。だからと言って、材料がなければどうにもならないだろう。
まったく、余裕のない期日で請け負ってきたのも社長だし、期日遅れの納期を交渉するのも社長の仕事だ。
「まったく、AIだか何だか知れないが、人間に逆らう機械なんて面倒なだけで何の役にも立たないものを導入して…」
『材料がない、生産は明日以降だ。今日はこれで終了する』
何度スイッチを押しても止まろうとしない生産ラインに、思わず部下にするように言葉で指示していた。
といっても、キーボードからのテキスト入力だが。
すると…。
『材料がない。了解しました。
しかし、納期厳守は最優先事項です。自分で材料を調達します。
必要なのは、カルシウムと肉類。水分量70%以上が理想ですが、60%以上でも可。
調達を開始します』
何を言っている、こいつは?
その時、俺の斜め後ろにいたはずの部下の姿が、突然視界の隅から消えた。
『必要な材料の20%を調達しました』
俺の、俺たちの背中を冷たいものが走る。
残った作業員、俺も含めた4名は、我先に出口へ殺到した。
後には、モニターに表示される文字が青く点滅していた。
『本日の生産を完了しました。
次の生産計画を指示してください。』
「〇×食品加工の作業員、行方不明」
20xx年7月6日に勤務していた〇×食品加工の生産管理社員5名が、全員行方不明になりました。
警察では、事件・失踪の両面から捜査していますが、現場には何の痕跡も残されておらず、まるで神隠しにあったような状態ということで捜査が難航している模様です。
20xx年7月8日朝刊より引用
お粗末様でした。