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4・白の覚醒

 ヒンメル王国には異形の魔族が闊歩し、昼でも太陽は昇らず常に死臭が満ちている。などという不名誉な噂がまことしやかに語られているが、それらの全てが嘘という訳でもなかった。


 魔族と呼ばれる人々が多く暮らす国であったから他国の“純然たる人族”たちにとって、獣の耳や尾を持ったり蝶の羽を背に持ったりする彼らは異形であった。朝や昼であれば太陽は昇っているが、いつも分厚い“呪いと怨嗟の雲”に覆われて昼夜の区別をつけるのは難しい。唯一否定できるのは“死臭が満ちている”の一点だけだろう。多くの国がそうであるように、死した者を放置するような非礼はヒンメル王国では認められていないのだから。そして現在は天灯す陽時計が正常に作動している為に、呪いと怨嗟の雲でさえ退けられている。



「いやあ、まさか朝まで効果が持続しているとは。朝日を初めて見たと、皆喜んでおりました」



 朝、師父と呼ばれた老人から問題ないと言われたレジーナは、体調のことも聞きたいからとまた三人で朝食を食べることになった。その席でメイソンはレジーナを惜しみなく褒めたたえる。


 昨日レジーナが魔力を注いだ天灯す陽時計は、朝になっても作動を続けていた。ヒンメル王国で生まれ育った人々は初めて見る朝日に感動し、天灯す陽時計を継続的に作動させることのできるすごい魔道士が来たのだと口々に噂していた。


 メイソンは立場上、国外に赴くことも多かったので朝日や夕日、星空でさえ見たことはあったがそれでも自国で見るそれが格別であることを知った。表情は変えないものの、アランとて同じ気持ちであるようでとても機嫌が良かった。



「お役に立てて何よりでございます。本日はいつ頃、あの部屋に」

「今日は止めておけ」

「そうですね、大事をとった方がよろしいかと」

「しかし、昨日はわたくしのお勤めであると」

「それはそうなのですが、レジーナ様のような逸材に何かあればことですからな」

「体調には全く問題ございません。師父様もそう仰って下さいました」

「レジーナ」



 幼い子どもに言い聞かせるような甘い声色でアランはレジーナを窘めた。レジーナはその優し気な視線にも驚きつつ、恥じ入りながら頭を下げる。



「た、大変申し訳なく、出過ぎた真似を」

「そうではない」

「陛下はレジーナ様をご心配なさっているだけなのですよ。貴女は素晴らしい魔導士だ。あの天灯す陽時計をこんなにも長時間作動させることができる魔導士など、ヒンメル王国の長い歴史の中でもおりませんでした」

「そんな、わたくしなど…」

「過去」

「え」

「過去、ヴィント王国やその他の国からも数名、あの魔道具を作動させる為に魔道士を呼んだことがある」

「五代は前の話ですが、結局誰一人として碌に作動させることはできませんでした。レジーナ様はきっと天灯す陽時計との相性がとても良いのです。ですからどうそ“わたくしなど”とは仰らないで下さい。貴女は我々の希望だ」



 大袈裟な口ぶりではあったが、本当にそうなのである。“呪いと怨嗟の雲”とヒンメル王国は創国の時からの付き合いであったが、だからといって親しくなれる訳ではない。



 あの雲のおかげで作物は正常に育たない。雨は降っていないのに湿度が高くジメジメとしており、夏にはそれらを好む虫が大量発生することだってある。冬はひどく寒く、春と呼べる季節になっても太陽光が届かないから中々雪が解けない。その他にも弊害は多くあったが、長年の知恵と魔法と道具で何とかやり過ごしてきただけなのだ。


 何人もの魔道士や歴代の国王が天灯す陽時計に座り、その魔力を注いだが上手くいかなかった。酷い者になると魔力が枯渇する程に注いだけれど、発動時間はものの数分にも満たないなどということもあった。



「どんなに強大になろうとも、ヒンメル王国は元は迫害を逃れた魔族たちの国です。呪いと怨嗟、その他の負の感情が集まる不毛の地であるから、この場所を選んで建国したとされています」



 そんな不毛の地を奪おうなどとする国はなかったのである。そして彼らは力を蓄え、そんな地にまで逃げた彼らに、それでも難癖を付けてくる国々を滅ぼしていった。そのようにして自国の領土を拡大させていったのである。しかしまさか拡大させていった土地にまで、呪いと怨嗟の雲が広がっていくとは誰も思わなかった。

 純然たる人族にはこの環境は厳しく、せっかく自国民として受けいれたとしてもぱたぱたと何かしらの病に倒れていった。生き残った者もいるが、そういう人々は既にこの国に慣れ親しんでいる魔族と結婚をして子を成すことが多かった。故に純然たる人族はヒンメル王国にはそういない。そうであるから先日ヒンメル王国が攻め滅ぼした、ヴィント王国の隣国にいた人々が他国に亡命することも止めはしなかった。



「…でしたら、本当にわたくしはヒンメル王国のお役に立つことができているのですね」

「そうだ。…もう少し食べなさい」

「あ、あああ…。恐れ入ります…」



 少しばかり呆けていたレジーナの前にアランが手ずから料理を差し出してきた。油断をしていたのか間の抜けた声を出してしまったが、国王自らの給仕に文句を言うこともできずそれを受け取る。そんな二人をメイソンが微笑みながら眺めていた。



「それにしてもレジーナ様は魔力量もさることながら、その質もあまり見ないですね。どのような魔法をお使いに?」



 世間話のように軽々と寄こされた話題は、レジーナを簡単に強張らせるだけの威力を持っていた。しかしレジーナも真実を申し上げるなら今だと腹をくくった。



「わたくしは、わたくしが使える魔法は小さな明かりを灯すもの、少しの飲み水を出すものとそよ風を呼ぶくらいなものです。他は、全く」

「全く?」

「その魔力量で、ですか?」

「…はい、わたくしは生まれつき魔力こそ多いもののそれを操ることができないのです。ですが幸いにもヒンメル王国におけるお役目は果たせるとのこと。精一杯努めさせて頂く所存でございます」



 レジーナはどんな風に思われたとて、胸を張ろうと決心した。自国では碌に魔法も使えない彼女が、そのように振る舞うのは恥ずべきことであった。しかしそれに羞恥を覚えるのは、自身を大切にしてくれた両親や近しい人への侮辱にもなる。小刻みに震える拳を膝に置きながらレジーナは言い切った。するとアランとメイソンは彼女を見ながらぶつぶつと二人で話しだす。



「とはいえ、その魔力を暴走もさせていない」

「何かしらの阻害がかけられているようにも見えません」

「師父はまだ城にいたか」

「いや、まず奥の書庫に智恵を借りに行くのがよいかもしれません」

「ああ、束ねの書か」



 何を話しているのかレジーナにはよく分からなかったが、あまり悪いような話でなさそうであることだけ理解して肩の力が抜けた。知ってか知らずか、昨日からレジーナの世話をしてくれている使用人の一人が食後のデザートを勧めてくる。



「こちら本日のデザートでございます。殿方のお話に付き合っていると長いのでお先に、とシェフが」

「ありがとうございます」

「レジーナ様は甘いものはお好きですか?」

「…ええ、実家では使用人の方と一緒に作ったりもしました」

「さようですか、シェフにも伝えておきますわ」



 レジーナは少し実家を思い出した。父母の死後、勉強は全て自宅学習で学校に行くこともなく引きこもっていた館は彼女の世界の全てだった。館から一歩でも外に出れば指を指されそうで恐ろしく、そしてそんなレジーナを使用人たちは何も言わず見守ってくれた。勉強ばかりでは退屈だろうとお菓子作りに誘ってくれたり、花の水やりをさせてくれたり、乗馬の真似事までさせてくれた。男爵家とはいえ、貴族令嬢のやることではなかったかもしれないが、そうすることでレジーナの気を紛らわさせてくれていた。


 レジーナに優しかった使用人の人々は元気でやっているだろうか、ガレスに頼んできたのだから悪いようにはなっていないだろうと信じているが僅かばかりの心配くらいは許して欲しい。



「レジーナ、食後に城の奥の書庫に向かう」

「え、あ、はい?」

「食べ終わりましたら、昨日に行った書庫とは別の場所にある書庫に一緒に来て頂きたいのです。何百年とそこにある知恵袋がおりましてな、あれならばレジーナ様の魔力がどうなっているか分かるやもしれません。…ここまで言って初めて伝わるんですからね、陛下」

「…」

「誤魔化さない、横着をしない!」

「閣下、大丈夫です。閣下!」



 初日にも驚いたが、二日目ではこの気安さには慣れなかった。メイソンとアランは気心の知れた仲であるようだったが、それは是非二人きりの時に存分にして頂きたいとレジーナは心の底から思った。


―――


 渡り廊下から見える外には未だに青空が見える。天灯す陽時計はまだ作動を続けているようであったので、レジーナはほっと胸を撫でおろした。あんなに賞賛されたにも関わらずすぐに作動が止まってしまっては何となく立つ瀬がないような気がしていたのだ。


 城には幾つかの書庫があるらしいが、彼らの言った“奥の書庫”に着くといきなり甲高い声が狭くはない室内に響いた。



【あらあらあらあら! まあまあまあまあ! お久しぶりねえ! 大きくなったかしら? そのままかしら? ヒトガタって分からないのよねえ!】

「久しく、束ねの書」

「あ、やっぱり自分無理なので。陛下、レジーナ様、頑張って下さい」

「え、閣下?」

「大丈夫です、レジーナ様。あれは声が甲高く大きいだけで害を与えることはしてきません。ただ自分は他の方々よりも耳が良いので耐えられないだけです、それでは!」


 メイソンは脇目も振らずに書庫から飛び出して行ってしまった。アランはそれに慣れているのか、げんなりとした雰囲気を醸し出しながらも止めも追いかけもしない。レジーナもメイソンが出て行った方を見るのを止め、アランが向いている方向に視線を移した。



【あっらー。めっずらしい子がいるじゃなーい。ご機嫌いかが、お嬢さん。アタクシは束ねの書、この城ができた時からここに置かれている最高級の魔道書ヨ!】



 アランの視線の先には一人でに浮く大判でクラシカルな分厚い本があった。装丁を彩る模様や文字は金とも銀とも銅ともとれない複雑な色で輝いており、何より本自体から溢れる魔力が正しくその魔道書の力を示していた。


 レジーナは膝をおり丁寧に礼をとる。自我を持つ魔道具の機嫌を損ねることは決してしてはならない、と彼女は両親からよくよく教わっていた。それらは人間などよりもずっと永く存在し続け、力を貯め続けた物である。レジーナはそういった魔道具を何度か見たことがあったが、気難しい物もあれば気安く人に構ってもらいたくて仕方がないという物まで様々だった。このような魔道書は珍しく、本物を見るのは初めてであるが同じようなものだろう。



「初めまして束ねの書。わたくしはレジーナ・ヴォルケと申します」

【アラ、礼儀正しいわ! 素晴らしいわ! 見たかしら国王陛下? アタクシにはこうやって接するべきなのよ!】

「レジーナの魔力を診てもらいたい」

【無視? ねえ、無視?】

「早くしてくれ」

【ンもー!】



 束ねの書は絶叫しながらもレジーナの傍に近寄ってきた。そのまま周りをふよふよと飛ぶと、また元に位置に戻る。



「どうだ」

【どうも何も、珍しいわね】

「何がどう珍しいのだ」

【…ねえ、レジーナちゃん? アタクシこの王様と意思疎通するの苦手なのよネ。通訳してくれない? 結局何が知りたいのよ】

「ええと、あの。わたくしは昔から魔力量は多いのですが、魔法が上手く使えなくて」



 束ねの書に会話を拒否されたアランは少しだけ悲しそうにしていたが、レジーナは促されるままに目的を話した。本来ならこれは恐らくメイソンの仕事なのだろう。昨日会ったばかりではあるが、レジーナは彼の口下手を理解しつつあった。



「それを、束ねの書であれば原因が分かるのではないかと」

【原因? …? …。 えー? どんな魔法が使えないの?】

「例えば、炎を出したり、嵐を起こしたりなどは全く」

【そりゃあそうでショ。それって黒魔道士の魔法じゃない、アナタ白魔道士なんだから使えないわよ】

「…白魔道士?」

「とは、何だ」

【嘘でショ!?】



 束ねの書は部屋に入った時と同じくらいの声量で叫んだ。思わずよろめいたレジーナの肩をアランが支える。



【白魔道士は白魔道士よ! 結界張ったり人や物を治したり、あ、浄化とか強化付与とかもできちゃうワ!】

「それは、普通の魔道士とて」

【黒魔道士たちの比じゃなく強力なそれができるのが白魔道士なのよ!】



 束ねの書が大きく上下に揺れるものだから、埃っぽい室内の空気が舞う。



「で、ですが、束ねの書。わたくしはそれらの魔法もあまり」

【何ですって!? そんな筈はないわ! ちょっとやって見せてごらんなさいヨ!】



 束ねの書は再びレジーナに近寄ると、自身の中身を開いた。そのページの幾つかある文字列の中で光り輝いている一文を唱えよ、と言いたいのだろう。その魔法には見覚えがなかったが、もしかするとと期待を込めてレジーナは魔力を込めた。


 しかしやはり、何も起きなかった。


 レジーナはこの手のことには慣れてはいたが、それでもやっぱり口惜しく恥ずかしかった。何か言わねば、やっぱり駄目でした。ご期待に沿えず申し訳ございません。才能が、無くて、すみません。口の中で舌に転がしたその言葉のどれもが、レジーナがこれまでに何度も放ったそれであった。苦く塩辛いそれは、それでも吐き出してしまえばこの場は何とか切り抜けられるるだろう。



「あの」

【何してるのヨ! それは黒魔道士の魔力の込め方でしょ!? 白魔道士はそれじゃ使えないわよ!】

「え」

【いい? アナタ今、息を吸って止めて念じたでしょう。その方法は黒魔道士のやり方よ。白魔道士はねえ、息を吸って吐きながら念じなきゃあ。魔力の質が違うんだから、同じようにやってもできないわヨ。もう一回やって! さあ! 早く!】



 束ねの書のあまりの剣幕に、レジーナは慌てて言われた通りに魔力を込めなおした。



「《悪しきは彼方へ、清きは此処へ。始まりをこそ思い出せ》」



 詠唱ははっきりと区切りは間違えずに、目の前ではなく自分の魔力がそれに呪文に乗る様を見て。両親から何度も教わったことに、束ねの書からの注文を加えてレジーナは魔力を込めた。


 そしてレジーナは生まれて初めて、魔力が自身の声に溶ける様を見た。



【キャー! 完璧よ! 完璧だわ、久しぶりだわ!】

「束ねの書、今何をさせた」

【アラ、いたの。そうね、いたわね。ま、簡単なお掃除魔法ヨ。ついでにアタクシたちのことまで直してくれちゃったみたいだけど】

「…」

【何よ、その目。いいじゃないちょっとくらい。アタクシたちだってさっぱりしたい時があるのヨ!】



 奥の書庫はレジーナの魔法が発動した途端に白い光と柔らかな風に包まれた。それは一瞬の内に治まったが、次の瞬間には書庫の空気が全く違うものになっていた。きっと掃除はしていたのだろうに古い本が多くある為か埃っぽかった室内は、新しい空気だけを閉じ込めたように清々しくまるで朝露を抱いた庭園のようであった。本棚の所々にあった細かい傷は不自然にならないように直っており、目の前で浮く束ねの書も先程よりも紙に張りと光沢が出ている。調べてみないと分からないが、本棚に収まっている本たちもきっとそうなっているのだろう。レジーナは自身の魔法の成果をじっくりと見るのに忙しく、すぐ横でアランと束ねの書が言い合っているのにも気付かなかった。



「束ねの書、レジーナは天灯す陽時計を作動させることのできる貴重な魔道士だ。お前の好き勝手にしていい人ではない」

【好き勝手なんかしてないじゃない! ちょっとこれしてくれたら嬉しいなって思っただけじゃない! ねえ、レジーナちゃん酷くない? この王様酷くない? アタクシ、レジーナちゃんに魔法の使い方教えてあげたの、に…】

「はい、束ねの書。本当にありがとうございます。わたくし、ずっと、こんな風に魔法が使ってみたかったのです」



 レジーナは心の底から束ねの書にお礼を言った。これは彼女と彼女の両親とその友人たちの悲願であった。堪えきれずまた涙が溢れてしまったが、レジーナは嬉しくて仕方がなかった。この国に来てから嬉しいことばかりで困る。何か罰でも当たってしまいそうだったが、当たってしまっても良いと思えるくらいには今この時が幸福であった。



【え、え? 何で泣いてるの? 泣かないで、しんどいの? 魔力は全然減ってないわヨ、体調が悪いの? 悪いのにこの王様に無理矢理連れて来られたの?】

「そうなのか、レジーナ!?」

「う、ふふ。大丈夫です、嬉しくて涙が」

【そうなの? 本当に大丈夫? あ、何やってるのよ、王様! ハンカチくらいさっと差し出しなさいヨ!】



 慌てた様子のアランが束ねの書に言われた通りにハンカチを差し出すので、レジーナはまた笑ってしまった。この国ではレジーナが習った貴族としての慣習はあまり通用しないらしい。魔道書も臣下も使用人も、国王陛下であっても気安く親切だ。足を踏み入れるまで恐ろしい国なのだと勝手に想像をしていた自身をレジーナは恥じた。



「陛下、わたくしは生国では才能がない、無能であると言われ続けておりました」

【え、誰がそんなこと言うの】

「あの国では、魔法が全てでしたから仕方のないことだったのです。誰の期待にも応えることができず、役立たずとしてこれまで生きて参りましたが、きっと魔法の使い方を覚え陛下とヒンメル王国のお役に立てるよう励みますわ」



 レジーナは決意も新たに、アランの目を見て宣言した。そして。異様に顔が近いことに気が付いた。顔だけでない、全体的に近い。物理的に近い。身長差がある分、昨日抱き上げられた時よりはましではあったが、それでも近い。その場の雰囲気と勢いで忘れてしまっていたが、よろめいた時に肩を抱かれてそのままだったことをレジーナは今思い出した。



【え、滅ぼす…?】



 束ねの書がその不穏な言葉を発するまで、レジーナの時間は止まってしまっていた。動き出した今は心臓が煩く全身が熱くて仕方がなかったが、彼女はとりあえずその不穏な発言の真意を問いたださなければならなかった。



「え、滅ぼす、ですか、何を?」

【え、え? そんなことするような国なくなっていいんじゃない? 滅ぼす? 滅びの魔法はこのページに書いてあるよ? あ、でもこの魔法は黒魔法だからレジーナちゃんは使えない…】

「い、いえ、結構です」

「では…。燃やすか?」

「燃やさないで下さい」

【あ、結界魔法の応用でできそうなのがあるわよ!】

「滅ぼすつもりはないので、必要ありません!」



 レジーナが力いっぱい叫んだにも関わらず、アランと束ねの書は物騒な会話を続ける。恥じらいによる緊張などどこかへ行ってしまったが、今度はこの不穏極まりない話を収束させねばと背に汗をかく羽目になった。

読んで頂きありがとうございました。

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