表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第4話 猫耳

 わたしは、遊園地にいた。


幼い頃のわたしは、迷子になったのか、メリーゴーランドの前にいた。


一人でいる。


周りには見ず知らずの大人がわたしなんてちっぽけな存在を目にも入れずに通り過ぎていく。


おねえちゃん!おかあさん!おとうさん!


どこにいるの?


ねぇ、おねえちゃんってば!!


一人にしないで、






「一人にしないで!」

「どうしたの、【アリス】?」


 少し驚いたような声が聞こえた。

嗚呼。この呼ばれ方はまだ何だかの国にいるってことなんだ。


 目を開くとふわふわのレースがかかっていた。

知らない天井。

エ◯ァのあの台詞ってこんな場面に使うのかな。何かズレてる気もしないでもないけど。


 寝ているわたしの腕は、何かを掴んでいた。

ん?何だろ…。


「そんなに俺にいてほしい?ずっと服を掴んでいるけど」

「…は?」


 実際に自分の手を見てみると、わたしの寝ていたベッドの端に座っている男の服を掴んでいた。

 その男は、黒髪の二人目の誘拐犯。


「ふぎゃあっ?!」

「そんな勢いよく手を離さなくっていいのにぃ」


 振りほどくように離すと、お姫様の使うような天蓋付きのベッドの端まで逃げた。

寝てる間、寝てるわたしの近くにいたってことは…。

はっ!

服はちゃんと着てるよね?!

制服のスカートはクシャクシャに皺は付いているが、これは、着替えずにそのまま寝ちゃったのと少しバタバタした時のやつだろうし。

そんな様子を黒髪の男は、呑気に頬杖をついて見ていた。

背中では、「紫色の何か」が揺れている。

「何か」とは――


「猫の尻尾?!」

「あぁ、初めて見た?耳もちゃーんと着いてるよ」


 本当(マジ)だ。

紫色の尻尾をゆらゆら揺らしながら、紫色の耳をピクピクさせている。

うーん。改めて見ると、やっぱり美形顔(イケメン)

細身の黒いジャケットを羽織り、鎖骨が見えるほど、胸元の広いTシャツのような物を着ていて、妖艶な雰囲気は醸し出していた。

…じゃなくて!


「あんた何者?」

「切り替え早いなー。さっきまで自分の貞操が大丈夫かって、ワタワタしてたのに」

「う、うっさい!」


 自分でもオブラートに包んで考えたのに、ズバズバ言われたこっちが恥ずかしいんだから!

羞恥と動揺から耳まで真っ赤になったわたしを見て、腹を抱えて笑い出した。

…殴っていいかな?


「ごめんごめん。殴らないで。で、何だっけ?俺のことだっけか」


 やっと笑い終わったようで、涙目になっていた目を拭うと座り直した。


「俺は【チャシャ猫】のペリコローソ。ローソとでも呼んで?」

「チャシャ猫?」

「そう。またの名を『狂気の殺戮者』」

「…何でまたこの国の人は物騒な名前しか付けらんないのよ」


 ヴァイスといい、コイツ――ローソといい、名前を聞く限り、無茶苦茶危ないじゃないか。

もしかしてこの国の国民性?


「そうかもねー。まぁ、俺も白兎も元から『物騒』だし」

「元からって…。っていうか、何でアンタらはわたしの考えてることわかるの?!」


 自分の尻尾をくるくる回しながら、首をカクンと曲げていた。


「だって君、顔に出てるし?」


 ウーン。つまり、分かりやすい反応な訳ね、わたし。


「ちなみに此処は、【帽子屋】の家。その【帽子屋】はちょっと買い出し兼街中の様子の偵察に行っちゃってるけど」

「偵察って…。結局、わたしは何に巻き込まれてるの?一日に二人には誘拐されてるけど」


 恨めしげに睨みつけたのもさほど気にした様子なくいたが、ふと何かに気付いたようにハッとした。


「もしかして、ゲームのことは何にも説明していなかったの?」

「えぇ。何なのそれ?」

「…。話が長くなる。場所を移すよ」


 深いスプリングから立ち上がると、スタスタと出ていこうとしていた。

唖然としているわたしをチラリと見ると、小首を傾げた。


「あれ?また抱っこされたいの?」

「け、結構ですっ!」


 ざーんねんっ、と尻尾を左右に振って軽い口調で言われた。

からかわれたみたい。

それにしても、このくしゃくしゃの制服で歩くのは気が引けるな。


「ねぇ、ローソ。何か着替えとかないかしら。」

「ん?確かにもっと女の子らしい服を俺的には着てほしいけど☆」

「いい加減に意味がわからないんだけど…。」


 可愛いげのない呆れ顔になっているであろう私の目の前では、いつの間に持っていたのか、エプロンドレスを持っていた。

なかなかセンスが良いと思う。

白黒とのシックなデザインで、ふんわりしたレースやカチューシャまでついている。


「【アリス】の基本衣装(コスチューム)、可愛いでしょ?十何代ずーっと同じ衣装」


 なんか、せっかく『可愛い』と思っていたテンションを下げやがったぞ、この猫。

だいたい『ずーっと』同じって材質面、平気なのかしら。


「着替えていいよ?」


 能天気に小首をかしげる猫に対して、私の中で何かが切れた。


「――…馬鹿かぁぁ!あんたがいるのに着替えれるか、ボケぇぇぇっ!!」


 わたしは、枕を猫に投げつけた。




**キャラクター**

 ペリコローソ(通称・ローソ)【チャシャ猫】

 特徴*黒髪。金色の瞳。紫の尻尾と耳。エメラルド色のクローバーとサファイア色のスペードのネックレスを身に着けている。

 備考*またの名を『狂気の殺戮者』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ