第二十話 得体のしれない男
本日二話目の更新となります。
前話、第十九話を見ていない方はまずはそちらをお願いしますm(__)m
第二十話。
今回はロゥリの視点オンリーなります。
移動要塞サウザーマキナは生物が持つ魔力を探知し、その砲台を以てして絶対不可避の赤き魔力の砲弾をぶつける。
それを避けることは不可能。
「最初の足掛かりとしては十分」
まずは最初に都市パワルワを乗っ取り、そこを拠点にし他へと攻め入る。
魔を統べる王を名乗ってからの初めての初陣。
古代兵器を引っ張りだすのはちょっとやりすぎかなーって思ったけど、まあ、できるだけ苦労したくないし、初陣くらいは簡単に事を進めたい。
『うわぁーーー!』
『つえええええ!?』
『避けても追ってくるー!?』
ギャグのようなリアクションで魔弾が直撃し、宙を舞う人間達。
数にして二百を超えるほどだろうか。
そんなやつらがこの古代兵器サウザーマキナの前に無様に吹き飛ばされる様を見て、笑みがこみ上げてくる。
「ぷふ、ぷふふ!!」
手元の魔術の文様を操り、さらに攻撃を苛烈にさせる。
サウザーマキナに搭載された砲台は1345門。
最早、雨の如く降り注いだ赤い魔力弾により砂煙が上がり、平原地帯は白色に染まる。
「この攻撃から逃れることは不可能! ぷ、うふふふ!! あー、知略に長けている上に強すぎる私って可愛すぎ!!」
『またボスが調子に乗ってる……』
『かわいい……』
『それでこそボスだ……』
「お前ら! ちゃんと自分の仕事をしろぉ!!」
通信で無駄な会話をしている部下共を叱る。
……さてさて、奴らの方はそろそろ片付いたかな?
「発射やめー」
魔力の砲弾の発射をやめさせる。
玉座の前に映し出された映像には、砂煙に満ちた平原の光景が映し出される。
砂煙は徐々に風で流され、平原には地に倒れ伏した人間達の姿が露わになる。
「さすがに頑丈だな。人間は」
魔族が知力と魔力に長けているのならば、人間は肉体的な強さに長けている種族だ。
獣人ほどではないにしても体は頑丈だが、さすがに1000を超える砲門からの連続掃射には意識を保てまい。
「このままパワルワへ進ぐ――」
『魔王様! 煙の中に何者かが立っています!!』
「なんだと……?」
映像を拡大させ、未だ砂煙で隠された場所を見る。
すると、そこには赤いマントをなびかせた一人の男が立っていた。
「え、な、なんで!?」
玉座から滑り落ちそうになりながら映像を注視する。
ありえない! あれだけの砲弾を全て防ぎ切ったのか!? いや、それ以前に……!!
「あいつの周りにだけ砲弾が落ち……ない?」
まるで縁でくりぬいたように赤いマントの男、イズハラ・ユーマの周囲の地面には砲弾の余波すらも起きていない!
理解できない。
なんだ、あれは。
奴は前髪で目元を隠したまま、不気味に立っているだけで何かをした様子はない。でも、その何もしていないように見える仕草が、私に得体のしれない恐怖を抱かせる。
「放て!」
『りょ、了解!』
二つの砲門から放たれる魔力弾。
自動追尾によって向かっていくはずのソレは、まるで彼の傍を通り過ぎるように背後の砂煙へと堕ちていく。
魔法を使った形跡もない。
その腰に刺した剣を使った様子もない。
そもそも、彼は動いてすらいなかった。
「な、なんなんだよぉ、あいつぅ……」
思えば最初に存在を認識したその時から、意味不明な奴だった。
偵察のために私自らが都市に入り、重要と思われる建物、地理的な弱点を探っていたその時に、イズハラ・ユーマはなんの前触れもなく、私の背後に立っていた。
魔術で常に身を守っている私に、気付かれずにだ。
それがどれだけ異常なことかを、まるで気にも留めずに奴は私を見逃した。
「わ、私が狙って撃つ!」
『了解!』
サウザーマキナの砲台の一部の機能をこちらで操り、その照準を自動ではなく手動でユーマへと向ける。
どういう手段で躱しているのかは理解できないけど、当たればこっちのものだ!!
「吹き飛べ!」
放たれる砲弾。
真っすぐにユーマに直撃する軌道で放たれたそれらは、まるで見えない何かに弾き飛ばされるように霧散し、消えてしまう。
「ッ、無効化された!? 魔力反応の解析急げ!!」
『魔力反応ゼロ! 先程の挙動に一切の魔力もなにも使われておりません!!』
『え、映像越しで存在しているかすら確認できません!』
「はぁ!? 存在してない!?」
意味不明だ。
私達はいったい何を相手にしているんだ。
私の困惑を他所に、操舵室で解析を行っている部下達も混乱が広がっていく。
『あれは幻なのか!?』
『サウザーマキナの高純度解析機能を知らないのか!? 幻で欺ける代物じゃない!!』
『じゃあ、あれはなんなんだ!? あそこにいるのにッ、映像解析ではあそこには誰も立っていないんだぞ!! 姿は見えているのに!!』
確かにそこに立っている。
俯いたまま、赤いマントを風になびかせたまま、イズハラ・ユーマというパワルワ最強の存在はそこに立っているんだ。
「……攻撃再開!! 今度は奴目掛けて集中砲火!!」
『で、ですがこれ以上は死人が出ます!!』
「奴だけを狙え!! 奴の力を見極める! 早……ッ!?」
悪寒と共に、映像へと視線を戻す。
未だ動かずただ立っている奴の周囲の砂煙が一瞬で吹き飛ばされ、目にも止まらない速さで何かがサウザーマキナの巨体を揺るがした。
巨体を揺るがす衝撃の後に、内部の明かりが消え失せる。
「な、なにがあった!?」
『前方から衝撃!! 魔力駆動停止!!』
『あ、ありえない……なんだこの威力!? サウザーマキナの装甲が力だけで撃ち抜かれた!?』
「ッ、自動反撃機能に切り替え、修復に回せ!! それと何がぶつけられたか調べろ! ……ッ、はやく映像を映し出せ!!」
『は、はい!!』
一瞬で混乱に陥る内部。
私自身も焦燥を抱きながら、再度映し出された映像を見ると、既にイズハラ・ユーマの姿はなく、それどころか気絶し、倒れ伏していた人間共の姿すらも平原の中から消え失せてしまっていた。
「お、おおお、面白いじゃん……」
思わず声が震えてしまう。
元より、簡単なことだとは思ってなんかいない。
「さぁて、ここからどう攻略してくるんだろうね、ユーマ……!!」
たしかに私達はまだまだ弱者ではなかった。
だけど、今この時は本物の強者の存在を知り、歓喜とも恐怖とも分からない震えに笑みを浮かべる。
(この主人公、実は最初から立ったまま気絶してます)
敵から見ると本当に恐怖でしかない主人公。
主人公の姿がサウザーマキナが認識していないのは、センサーに小バエが通っても反応しないのと大体同じ理由です(辛辣)
本日の更新はここまでとなります。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




