表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第五皇子はどこへいく!  作者: 太白
95/165

勅命

お待たせしました。

 じりじりと包囲を縮める兵士たち。絶体絶命のその時、荷車の箱が内側から弾け飛んだ。

「すべてを知っての狼藉ろうぜきならば、容赦は無用。――構わぬ、かかれ!」

 悠然と姿を現した脩璃しゅりの号令が響き渡る。それを合図に、箱から飛び出した華鳳かほうげん、そして車夫に扮していた「破玉」の精鋭たちが一斉に牙を剥いた。


 直後、将軍の傍らにいた三十余名の兵が、音もなく次々と崩れ落ちた。

「毒針か……!」

 倒れた兵の首筋にきらめくまだら模様の針を見つけ、将軍は戦慄した。後方の物陰に、同数の潜伏者がいる。将軍が背後の気配に気を取られた隙に、「破玉」の筆頭・あかが咆哮とともに突進した。

 赤の振るう棍棒は、兜越しに兵士の頭蓋を粉砕せんばかりの勢いで炸裂する。赤が突き進んだ後には、なぎ倒された兵士の列が道のように続いていた。


 その傍らでは、華鳳と阮の師弟コンビが実戦さながらの修練を繰り広げていた。

「ほら阮、次は左だ!」

「はいッ!」

 必死に食らいつく阮。その戦いぶりに触発され、オユンも「血が騒ぐわ!」と短刀を手に乱入する。彼女の素早い身のこなしに、兵士たちは手首を斬り裂かれ、なす術もなく転がった。


 形勢不利と見た将軍が懐から笛を取り出し、援軍を呼ぼうと鋭い音を響かせる。

「ピィィィィィ――!」

 だが、その音を切り裂くように赤の剣が閃いた。笛は両断され、将軍は後退を余儀なくされる。

「お主、名を聞こう」

「……名乗る必要はない。死ね」

 二人の一騎打ちが始まる中、示現しげんが先陣を切って包囲の一角をこじ開けた。

「皆様、こちらです!」

 その鮮やかな剣捌きは、陽明ようめいが「相当な使い手ですね」と舌を巻くほどだった。


 一団が検問所を突破した頃には、背後の敵軍はほぼ制圧されていた。悠然と立つ赤の足元には、泡を吹いて倒れた将軍の無残な姿があった。


 ◇


 一行は示現に導かれ、大型の楼船がひしめく軍港へと辿り着いた。

「皆様、お急ぎください!」

 追撃する新手の兵数百人を赤たちが食い止める中、脩璃たちは将軍旗の翻る楼船へと駆け上がった。甲板では、威厳ある壮年の将軍が待ち構えていた。

「お待ちしておりましたぞ、れん殿」

「お待たせしました、大都督」


 斉賢せいけんが困惑の声を上げる。

「蓮だと? 一体誰のことだ。示現、説明しろ!」

 示現は答えず、代わりに壮年の将軍――水師大都督・魯忠漣ろ・ちゅうれんが斉賢の前に跪き、抱拳礼を捧げた。

「御前にて拝謁つかまつる。私は水軍を預かる魯と申します」


 次の瞬間、示現の纏う空気が一変した。彼は懐から「白璧紅龍はくへきこうりゅう」を高く掲げ、朗々と宣言した。

「勅命である! これより本璧を第二皇子・崑斉賢こん・せいけんに下賜する。併せて崑国璽こん・こくじを継承せしめ、これより崑斉賢を『新崑国王』に任ずる。――以上!」


「ははっ、謹んで拝承いたします!」

 魯大都督が平伏する。示現は呆然とする斉賢の手に、白璧と国璽を半ば強引に押し付けると、自らも甲板に膝を突いた。

「……示現、お前……」

 手の中の重みに、斉賢はただ狼狽し、後ずさるしかなかった。

次回の更新は3月25日(予定)です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ