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第五皇子はどこへいく!  作者: 太白
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侠漢立つ

長らくお待たせしました。

 紫苑しおん奉師ほうしの動きは電光石火であった。北狄ほくてき侵攻の報を受けてから一週間、太原たいげんを発つまでの間に、彼らはほう国全土へ伝令を飛ばした。主要な城や砦には兵の供出を、臨光りんこうをはじめとする商業都市には食糧や資材の準備を命じ、進軍の途上でそれらを合流させるという緻密な動員計画を組み上げたのである。さらに、不測の事態に備えて隣国・りん国へも援軍を要請する急使を放った。


 大事業を成す陰には、往々にして誰にも顧みられない「些細な急所」を黙々と支える者がいる。新たに相国へと着任した玄李志げんりしは、まさにその役割を完璧にこなしていた。

 奉師の右腕として経験を積み、自らの才に自信を深めていた自誠じせいは、当初、地方官吏出身である李志の能力を侮っていた。しかし、李志が処理した書類を検分した自誠は、その完璧さに愕然とし、震えた。


「自誠君。君は確かに優秀だ。だがね、我ら官吏が競うべきは書類の美しさや処理の速さではない。現場の人間が間違いなく動きやすいよう配慮し、計画を完遂させることにあるのだよ」

 地方の苦労を知る李志の言葉に、自誠は己の慢心を恥じた。それからの彼は憑き物が落ちたように、李志の忠実な補佐役として覚醒していく。


 ◇


 一方、銀盤宮。明玉めいぎょくは、隠密組織「破玉」のせきを召喚していた。

「赤。無理を承知で頼みます。こん国にいる脩璃しゅりに、これを届けて」

 差し出されたのは、金色の鵬印で厳重に封印された朱色の書状。北狄侵攻、緊急事態の発動、そして新体制の報告と帰還命令が記されている。

「……承知いたしました。崑国まで、この赤、死力を尽くして十日でお届けいたします!」

 一陣の風が吹き抜けた刹那、赤の姿は忽然と消えた。


 ◇


 紫苑の屋敷に、物々しい装いの男たちが押し寄せた。万力社の宗興そうこうと、その手下たちである。

「大司馬様! アッシらにもお国の大事、戦へ加えていただきやすようお願いに上がりやした!」

 義理に厚い梁山泊の荒くれ者たちは、王・脩璃への恩返しに燃えていた。足手まとい扱いはさせないと食い下がる宗興に、紫苑はふっと表情を和らげて諭した。

「……宗興よ。あの小僮(脩璃)が、お前さんたちを戦場という死地に連れて行くと思うか?」

 毒気を抜かれたように宗興が立ち尽くすと、紫苑はニヤリと笑った。

「だが、お前さんたちにしかできん、極めて重要な『戦』がある。輜重しちょうの輸送だ」

「輸送……でございやすか?」

「そうだ。本来なら軍の役目だが、今は一人でも多くの兵を長城へ送りたい。この国の物流を一手に担う万力社に、軍の命脈である食糧と武器の運搬を託したい。……受けてくれるか?」


 宗興は両手を地に着け、魂を込めて応じた。

「へい! 命に代えても、滞りなく柏陽長城へお届けいたしやす!」


 翌日の日の出前、万力社の前には無数の荷馬車と、厳つい男たちが集結していた。朝日を背に現れた宗興が、抜いた剣を高く掲げる。

「いいかテメーら! この仕事は、俺たちをお天道様の下で歩けるようにしてくださった王様への恩返しだ。荷駄を一軒でも遅らせてみろ、俺がこの腹を掻っ捌いてお詫びする。梁山泊の意地、王様にご覧いただこうじゃねえか!」

「「「おおおおお――!!!」」」

 地鳴りのような咆哮。それは、軍服を着ない志願兵たちの戦いの幕開けであった。

年末年始の多忙につき次回の更新は1月7日(予定)です。

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