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第五皇子はどこへいく!  作者: 太白
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単于の娘として

お待たせしました。

 様子のおかしいオユンの心内を察し、華鳳かほうが静かに声をかけた。

「オユンさん、ちょっと場所を外そうか」

 二人は馬車から離れ、静かな木陰へと歩いた。

「……我は、奪った側の人間なのだ」

 俯いたままのオユンが、震える声で絞り出した。げんの人生を狂わせた北狄ほくてきの残虐行為。その血筋である自分への嫌悪が、彼女を苛んでいた。

「戦を始めたのはお前さんじゃねえだろ。……ぼうは、出所なんかで人を判断するような男じゃねえ。自分の思いを、正直にぶつけてみろよ」

 華鳳の不器用な励ましに、オユンは「お主は本当にしゅうを信頼しているのだな」と、涙混じりに少しだけ微笑んだ。


 そこへ、状況を察した脩璃しゅり陽明ようめいを伴って現れた。

「オユンさん……」

 名前を呼ばれたオユンは、背を向けたまま、自国の歴史を語り始めた。果てしない草原での牧草地の奪い合い。力を尊ぶ気質。そして、祖先ボルテから父の代まで受け継がれてきた単于ぜんうの誇り。

「父は、我には優しい。だが、阮の故郷を焼いたのも……父の軍なのだ」

 再び肩を震わせる彼女に、脩璃は静かに、けれど断固とした口調で告げた。

「富や名誉のために戦うことを、僕は断じて許さない。たとえ君の父上であってもね。……でも、過去の責任をすべて今の君に押し付けたりはしない。もし君が責任を感じるというのなら、これからほうと北狄がどうすれば争わずに済むか、それを一緒に考えてほしいんだ」


「修……お主……」

 その言葉は、オユンの呪縛を解くには十分だった。彼女は感極まり、あろうことか華鳳たちの前で脩璃を力一杯抱きしめた。

「すまぬ、修……っ」

 不意を突かれた脩璃は、逃げる間もなく彼女の豊かな胸元に顔を埋める形となってしまった。

「ちょ、これは、そのっ!」

 顔を真っ赤にして指先を泳がせる少年に、華鳳がニヤリと笑う。

「おっ、坊。今の姿、あの方に知られたら修羅場だぜぇ?」

「華鳳殿、修様が望んだわけではないですから……多分」

 陽明の微妙なフォローも重なり、場にようやく明るい笑いが戻った。


 ◇


 買い物から戻った五人と合流すると、一同は驚愕した。

 身なりを整えた阮は、ボロボロの衣服からは想像もつかないほどの美青年へと変貌を遂げていたのである。

「阮、本当にお主なのか?」

 真顔で尋ねるオユンに、「黄花おうか様が選んでくださったのです」とはにかむ阮。幼いケンとコンも新しい服を喜び、黄花に懐いている。

 こうして、一行は新たな仲間を加え、再び昆命こんめいを目指して旅立った。


 ◇


 その数日後。こん国の王宮・阿望宮。

 堅城けんじょうからの知らせを受けた国王・賢志こんけんしは、息子の賢帥けんすいを呼び寄せた。

「鵬王は特に警戒する様子もなく、罠にはまったようだ。あとはしょう国の依頼通り、二ヶ月ほどここに留まってもらうだけだ」

「ご安心を。物流はけい国経由の海路で確保しております。民に支障は出ません」

 満足げに頷く賢志に、賢帥が疑問を投げかけた。

「しかし、なぜ鍾国はこのような回りくどい真似を?」

「鍾国は、かつてのりん国――今の鵬国と浅からぬ因縁があるのだ。特にあの国の宰相一族にとっては、代々の怨嗟えんさよ」

 書物にも記されない裏の歴史。権力者が書き換えてきた歪な因縁。

「我らは傍観者であればよい。両国が争うほど、我が崑国には利が落ちるのだからな……」

 賢志はニヤリと醜い笑みを浮かべ、闇を見つめた。

次回の更新は11月30日(予定)です。


多少の増減があるとは思いますが、目標のブックマーク100件を超えることができました。ここまで読んでくださいました皆様に感謝いたします。頓首

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