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第五皇子はどこへいく!  作者: 太白
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臨光での自由時間

お待たせしました。若干残酷な表現があります。

 川賊のアジトから押収された証拠により陳秦らの罪は確定し、臨光を揺るがした騒動は幕を閉じた。

 宿に戻った陽明ようめいは、労いの言葉をかける脩璃しゅりの前に、硯と筆、そして一枚の絹布を置いた。脩璃はその意図を即座に汲み取り、さらさらと筆を走らせる。

 それは、斉門瓢せいもんひょうを再び臨光尹に任命する「親任の勅書」であった。


 翌日。脩璃と陽明は役所へ登庁し、門瓢を前に新たな策を打ち出した。

「門瓢、今回の事件を機に、僕は『保険制度』を創設したいんだ」

「保険……でございますか?」

 川賊から没収した財宝を原資とし、商人が一定の保険料を納めることで、事故や襲撃の際に被害を補償する仕組み――。

「この制度の成否は、門瓢、君の双肩にかかっている。立案を命じるよ」

「斉門瓢、謹んで勅命を承ります!」

 こうして、鵬国の経済を支える新たな仕組みが産声を上げた。


 ◇


 一方、華鳳かほう黄花おうかはオユンに連れ回され、繁華街で悲鳴を上げていた。

「華鳳殿、この石は何だ?」「それはぎょくだ、北狄ほくてきにはないのか?」「なんと、美しいものだな!」

 見たこともない異国の品々に子供のように目を輝かせるオユン。彼女は歓楽街の屋台で次々と酒を煽り、二人を強引に引き連れて臨光の街を堪能していた。


 ◇


 その頃、街外れの静かな街道。木々の間に潜む慧軻けいかの視線の先に、二人の男が現れた。

 役所から「証拠不十分」として放免された張俊ちょうしゅんと、飯屋の老人である。

 二人が谷川の水を飲もうと足を止めたその時、張俊が豹変した。彼は懐から短刀を抜くと、無防備な老人の背中を躊躇なく突き刺した。

「ぎゃあぁ!」

 絶叫を封じるように老人の顔を川に沈め、張俊は冷酷に吐き捨てた。

「悪く思うなよ。俺が仲間を売ったなんて知られちゃ、生きていけねえんだ……」


 だが、返り血を浴びて立ち上がった張俊の前に、一人の男が立ちはだかった。

「お、お前は慧軻! なぜここに……」

「張俊。お前と同じさ。俺も『義理』を立てに来たんだよ」

 慧軻の目が冷たく据わっている。

「義理……だと?」

「忘れたか。俺の親分・宗興そうこうの腹を刺した落とし前、まだつけてもらってねえんだわ」

 逃げ場はない。張俊は捨て鉢に短刀を振り回したが、慧軻の間合いは一瞬だった。老人の死体に足をもつれさせた張俊の胸に、慧軻の短刀が深く沈み込んだ。

 苦悶に満ちた絶叫は川のせせらぎに消え、かつての裏切り者はその生涯を閉じた。慧軻は静かに手を合わせ、亡骸を弔うと、何事もなかったかのように宿へと歩き出した。


 ◇


 破玉はぎょくの面々もまた、束の間の休息を楽しんでいた。

 色街へ向かおうとするあおを横目に、むらさきが掲げたのは「臨光名物百珍」という美食の案内書きだった。

「脩璃様考案の『豚骨味噌麺ラーメン』を出す店を見つけた。俺はあの時、食いそびれたのだ……今日こそは堪能してやる!」

「「「何だと!?」」」

 緑、青、藍が色めき立つ。

「それを早く言え! 全員で行くぞ!」

 隠密のプロたちが、最強の麺を求めて街へと消えていった。


 ◇


 夜。宿で今後の予定を話し合っていた脩璃と陽明の部屋に、激しい足音が響いた。

 扉が荒々しく開かれ、華鳳に支えられたオユンが姿を現す。

「おぅ、修……。お主に……話がある……ヒック」

 酔い潰れているかと思われたオユンの目が、一瞬で冷徹な色を宿した。彼女は陽明を突き飛ばし、千鳥足とは思えぬ速さで脩璃の背後に回る。


 カチリ、と金属音が響く。

「……動くな。少年の皮を被った王よ」

 オユンの手には、あの神鳥の短刀が握られ、脩璃の喉元に冷たく押し当てられていた。

次回の更新は11月15日(予定)です。


本日でちょうど70話を迎えました。ここまで更新できました原動力はご覧くださっている皆さんの存在があってのことです。ブックマークやスコアが徐々に増えていくのをとても感謝し、ありがたく思いながら毎日チェックしています。


今後まだまだ続きますが、何卒ご愛顧くださいます様お願いいたします。


11月13日追記

活動報告にも書きましたが、私の至らない文章の体裁を、誤字報告という形で実に丁寧に直してくださっている方がいらっしゃいます。この場をお借りしてお礼申し上げます。訂正されている箇所を少しずつ学びながら、今後に活かしたいと思います。 頓首


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