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第五皇子はどこへいく!  作者: 太白
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斉門瓢の偽計

 翌朝、オユンは昨夜の奔放な振る舞いの代償――凄まじい二日酔いに悶えていた。

 あまりの飲みっぷりに呆れ果てた黄花おうかが水を運ぶ。脩璃しゅりはその隙を見逃さず、彼女の身元を探るべく、黄花に懐の短刀を調べるよう依頼した。


「ところで陽明ようめい崑国こんこくへ急ぐ身とはいえ、この街の川賊を放置はできないよね」

「左様です。一度、斉門瓢せいもんひょう殿に会い、状況を確認してはいかがでしょうか」

 脩璃と陽明が役所へ向かう一方、華鳳かほう慧軻けいかは街へ情報収集に繰り出した。


 ◇


 臨光りんこうの役所は、七層もの黄色い楼閣がそびえ立つ、街を一望する要塞のような威容を誇っていた。

 陽明が門衛に「御史大夫ぎょしだいふ」の佩玉はいぎょくを無造作に示すと、衛兵の顔色は一変した。御史台は官吏を監察する聖域。いかなる長官もその調査を拒むことは許されない。

 案内された奥の広間で、斉門瓢が二人を迎えた。

「わざわざ御史大夫様がお出ましに……っ!?」

 陽明の傍らに立つ少年の顔を見るや、門瓢はその場で平伏した。

「こ、これは失礼いたしました。臨光尹・斉門瓢、王様に拝謁いたします!」

「ごめんよ門瓢、驚かせるつもりはなかったんだ。川賊の件で、君の考えを聞きに来た」


 門瓢の話によれば、役所内に警備情報を川賊に流している内通者がいるという。しかし、尻尾を掴ませぬ巧妙さに手を焼いていた。

「御史大夫様が来られた今、妙案がございます」

 門瓢が囁いたのは、大胆な偽計だった。

 陽明が「更迭こうてつ」を言い渡し、門瓢を職から罷免する。すると、必ず内通者が川賊へその「朗報」を知らせに動くはず。そこを一網打尽にするというのだ。

「一網打尽にする兵はどうする? 内通者が衛兵にいたら、動きを勘づかれるよ」

「それなら大丈夫。僕には、優秀な『隠れた護衛』たちがいるから」

 脩璃が手を叩くと、柱の影から破玉はぎょくみどりが現れた。一瞬の出現に、門瓢は目を剥いて驚嘆した。


 脩璃は門瓢の机で筆を執り、一枚の絹布に勅書を書き上げた。

「これを陽明に託すよ」

 内容を確認した陽明が、ニヤリと不敵に微笑む。「……承知いたしました」


 ◇


 同じ頃、船着き場付近。華鳳と慧軻は、物陰に身を潜めていた。

「おい、どうした慧軻。急に引っ張って」

「……しっ。あの足を引きずっている男を見てください」

 そこには、かつて梁山泊で宗興そうこうの腹を刺した裏切り者、張俊ちょうしゅんがいた。

「……あの野郎、逃がしてもらった恩も忘れて、まだ盗賊の面をしてやがる」

 二人は慎重に尾行を開始した。張俊は警戒しながら街外れの目立たない民家へ入り、そこから炊事の煙が立ち上るのを見届け、二人は宿へと引き返した。


 ◇


 宿に戻った一同。ようやく復活したオユンが食堂へ現れ、豪快に笑い飛ばした。

「いやぁ、ほうの酒はあまりに旨くてついつい飲みすぎたぞ、ハッハッハ!」

 その隙に黄花が脩璃へ耳打ちする。

「例の短刀ですが……刀身に神鳥カルダの装飾が施された逸品でした。彼女の氏族の証だそうです」

(カルダ……北狄ほくてきの伝説に聞く高貴な紋章か)


 脩璃が思案していると、商人に扮した破玉の者がすれ違いざまに囁いた。

「門瓢殿を更迭し、代理として次官の陳秦ちんしんを据えました。現在、役所を監視中――」

 偽計の幕は上がった。誰が罠にかかるのか。脩璃の瞳に、静かな闘志が宿った。

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