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第五皇子はどこへいく!  作者: 太白
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【閑話】脩奏さんのあれから

思い付きで、あの一件からの脩奏さんを書いてみました。

 話は遡る。第三皇子・脩奏しゅうそうが、兄の脩晟しゅうせいによって中郎軍の屯所とんしょへと「拉致」されていった時のことである。


 襟首を掴まれ、おもちゃを買い与えられぬ子供のようにのたうち回る脩奏。暴れる弟に対し、脩晟は無造作に当身あてみを食らわせた。一瞬で沈黙した脩奏は、そのまま荷物のように馬車へ放り込まれ、連れ去られた。


 揺れる馬車の中で目を覚ました脩奏は、絶望した。後ろ手に縛られ、猿ぐつわを噛まされ、足も封じられている。

「んんー! んんんんーー!」

 窓から覗き込んだ脩晟が、憎たらしい笑みを浮かべる。

「おう、起きたか。もうすぐ着くぞ。お前の『新職場』にな!」

 ドナドナと売られていく仔牛のような心境で、脩奏は流刑地――もとい中郎軍のテントへと運び込まれた。


「脩奏、今日からここでお前には『主簿しゅぼ』として事務をこなしてもらう。逃げようとしても無駄だぞ」

 言い捨てて去っていく兄の背中に、「国家の損失である!」と呪詛を吐きながら地面を蹴った。その時である。

「い、痛ってぇぇぇ!」

 悲鳴が上がり、脩奏は飛び上がった。足元を見ると、そこには化け物のように顔色の悪い男たちが四人、折り重なるように倒れていたのである。

「ひぎゃぁぁぁぁぁ! %$#”!!」

 言葉にならない絶叫を上げ、脩奏は再び気絶した。


 ◇


 目を覚ますと、頬がこけ、死人のようなクマを作った男たちが自分を凝視していた。

「どひゃぁぁぁ! 吾輩はマズいのであるぅー!」

 訳のわからぬ叫びを上げる脩奏に、男たちは泡を吹いてひっくり返る。ようやく彼らが「過労死寸前の中郎軍・主簿(事務官吏)」であることを理解した脩奏は、持ち前の好奇心で彼らを問い詰めた。


 三万人の大軍団を支える食糧、給金、武器、衣服の管理。その膨大な事務作業を、脳筋の将軍・脩晟は「明日までにやっとけ」と矢のような催促で四人に押し付けていたのだ。

「……なるほど。あの脳筋め、やりおるのである」

 不憫に思った脩奏は、あっさりと意気投合した。

「よかろう! 吾輩が手助けしてやるのである!」


 そこからの脩奏は、まさに神懸かっていた。

 テントに散乱する膨大な竹簡を一瞥するや、右から左へと内容を把握し、次々と仕分けて投げていく。主簿たちが一週間かけて終わらなかった照合を、彼はわずか数時間で終わらせた。

「お主ら、これでは無駄に仕事を増やしているだけである! もっと効率的な『時短整理術』を伝授してやるのである!」


 脩奏は事務フローを根本から書き換え、倉庫の輜重しちょう管理に独自の「分類法」を導入した。これがのちに麟国全軍で採用されることになる革命的ロジスティクス管理法――通称『脩奏的輜重管理法』の誕生であった。


 ◇


 一ヶ月も経つと、軍の物資流通は劇的に改善された。兵士たちから感謝され、現場の熱気に当てられた脩奏に、異変が起きる。

「吾輩も、やればできるのであーる!!」

 任期終了間際、そこには上半身裸で日焼けした肌を晒し、剣を振るう脩奏の姿があった。あれほど嫌っていた脳筋の世界に、彼はいつの間にか足を踏み入れていたのである。


 調子に乗った彼は、重い鎧をまとい、馬に跨がった。

「突撃であるぅーー!」

 右手に剣を掲げ、意気揚々と馬を走らせる。だが、運命は非情だった。馬の鼻先に一匹の蜂が飛来したのである。

 驚いた馬が激しくいななき、脩奏は木の葉のように宙を舞った。


「……あ、吾輩は、脳筋にはなれないのである……」

 地面に叩きつけられ、青空を見上げながら彼は悟った。

 結果、脩奏は全治六ヶ月の重傷を負い、療養中に本来の「偏屈な工作マニア」へと戻っていった。


 療養が明ける頃。廊下では官吏たちが「十歳の子供が書いた、凄まじい上奏文」の話で持ちきりだった。だが脩奏は「吾輩には関係のない話である」と鼻を鳴らし、再び自室の工作機材に没頭するのであった。

思い付きで書いたので面白くなかったらごめんなさい……。

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