甘くて甘くて溶けてしまう
拙い物語ですが、お暇にどうぞ。
「本日は季節の果物タルトです。どうぞ、プリンセス?」
にっこりと笑うのは綺麗な顔をしたお兄さん。
『……プリンセスって言われていいような歳じゃないんですけどね……。』
むず痒いし言われて良いような容姿をしているわけでも無いので申し訳なくて胃がいたい。
あれから何回も訪れるたびにこのお兄さんは私のことをお姫様のように扱ってくれる。
「おや?呼び方に不満でも?……じゃぁ、名前教えてくれるかい?」
ニヤリと笑う意地悪な顔にどきりとするが口をつぐむ。
この世界で名前は重要らしくキールに絶対に名前は言うなと念を圧されているのだ。
『……いいえ。不満なんて…私には烏滸がましくて寒気がするだけ。』
遠目をしながら告げるとクスクスと笑われる。
このお兄さんは思ってたより意地悪で思ってたより口が悪い。
でもってとびっきりに甘いんだから私の手に負えない。
「プリンセスこっち向いてよ。」
頭がいたくなってきて頭を押さえていると手をのばしてくる。
『なっ、に…「んー?……………っごちそうさま。」……………っ』
ケーキを食べるたびに目元にキスしてくるこの人は吸血鬼かなにかなのか?吸涙鬼?言いにくい。
「相も変わらず真っ赤で可愛いねぇ~」
『それ、思ってないでしょ。というかお兄さんの名前も知らないけどね』
「俺はただのお兄さんだよ。お嬢様?」
この人は自分がかっこいいことを自覚しているなぁと半目で見るとまた可愛いねぇ~と誤魔化すのだ。
ありがとうございました。