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思考回路がショート寸前


「………。」

「サラ、しっかり。」



私の後頭部を軽く叩くのは、ルゥナちゃん。

地味に痛い。でも、おかげで少し頭がはっきりした。





さて、涙涙の卒業式から早一か月。


悲しみや寂しさにくれている暇もなく、私達の学生生活は続いている。





私とルゥナちゃんは現在、魔術師団の演習に参加している。


上級魔術学校の卒業者の殆どは宮廷魔術師団や騎士団内の魔術師団に入ることから、そちらの訓練に参加することが結構多いのだ。



これが結構厳しい。

私みたいにトロい人間にはきっつい。


そんなこんなでヘロヘロになっていたところをルゥナちゃんに見つかったのだ。

まあ、優秀なルゥナちゃんもさすがに楽ではないらしく、薄っすら汗を浮かべている。



「しんどい…。」

「まあ、それは同感。しっかし、サラの町の子…ソーン君だっけ?あの子凄いね。」

「あー、彼は……魔力の応用上手いんだよね。昔っから。」



私の脳裏に浮かぶのはラクラエンから王都へ向かう途中の出来事だ。

先生に言われるまでもなく、馬車の衝撃を和らげるため自らに強化魔法をかけていた。


今回の訓練は、相手の魔法を上手に受け流したり、防御したりする訓練。

魔力の素早い切り替えが要求されるので、より実践に近い訓練と言える。


それを何とかこなしたものの、既に精根尽き果てた私とは対照的に、涼しい顔で続けるソーン君。


凄いなぁ。まあ、感心するばっかりじゃなくて、彼のやり方をよく見て参考にしなければ。

普段ぼーっとしているようで、デキるやつなんだよね。例の実習でもわかっちゃいたけど、こうやって改めて見ると彼はルゥナちゃんとはまた違った意味で優秀だ。



そんな風に遠目でソーン君を眺めていたのだが、驚いたことに、彼はいきなりその場でぶっ倒れた。

なんの前触れもなく、突然に。まるで糸の切れた人形のようにその場に前のめりに。



……はぁぁ!!???



「あーだいじょーぶかー?」



教官役をしている士官のお兄さんがソーン君をツンツンしているけど反応がない。おいおい、大丈夫か、マジで。


流石に心配になって駆け寄ると、静かな寝息が聞こえてきた。

…寝てんのか!!!!?



「……寝てるな。」

「あー…。」

「魔力切れだろうな。魔力の回復にゃ寝るのが一番だからな。こんな風になるってことはよほどギリギリだったんだな。」



魔力切れ……。


またまた昔の事を思い出す。

入学してしばらくしたころ、彼が廊下で寝ていたという話をそういえば聞いたことがある。

その話を伝えると、お兄さんはケラケラと笑い、ソーン君を担ぎ上げた。



「たまにいるんだよな。魔力の運用が苦手な奴。」

「運用?」



曰く、魔力の制御とかに問題が無くても、魔力の残量の把握が苦手で、知らず知らずのうちに無理をしてしまう人の事らしい。

こればっかしは訓練だな、と言われ、私もうなづく。まあ、感覚的な物は本人しかわからないしね。



「どうだった?」

「魔力切れじゃないかって。」



私がそう伝えるとルゥナちゃんは安心半分、あきれ半分といった表情でため息をついた。



「面白い子。」



まあ、そうとしか言えんよね。

私達には思いつかないような魔法の使い方をするのに、肝心の魔力の残量はそっちのけだなんて。



「さて、君たちは続きだ。」



と、そこで魔術師団の士官のおじさまが、残った私達全員を招集する。

そして、細身の剣を手渡してきた。あ、魔鋼が混じってるな、これ。



「我々は魔法を主として戦うが、背後で安全に魔法を使っていればいいというわけではない。前線で戦う兵の補助も行うし、場合によっては背後から敵に襲われる可能性もある。」



まあ、そうだよな。

隊列をキチンと組んでいたとしても、相手が常に真正面から来るわけではないし。



「器用貧乏はダメだけどな。しかし、時間稼ぎにもならないようでは意味がないのだ。」



魔法を極めるのが重要。しかし、だからと言って肉体的にも貧弱な状態では使い物にならない。

理屈ではわかるが、なんとなくイメージがつかめない私達だったが、次に言われた言葉でその悩みは霧散する。



「まあ、この辺りはキュミラス様を見ればよーーーーくわかるのではないかな?」

「「「「あ、はい。」」」」



ムッキムキの宮廷魔術師団長、キュミラスさんを思い浮かべ、皆納得である。




「クルーヴは、現在休戦中とはいえ、常に、インリス、コスリア、リレグラを警戒している。」



士官のおじさまの言葉に私は内心ぎくり、とする。

いや、別に後ろ暗い所はないと言えば無いんだけど……。

まだ一年も経ってないんだもん。


実習の夜、こっそりインリスの騎士団の人と会ってから。


いや、でも見逃したと言っても、私はまだ学生だし、インリスは敵国とはいえ休戦協定中だし。

後ろ暗い所はない………はず。



別にあれから何にもないけどね。キュミラスさんには特に何も言っていないけど、ぶっちゃけ精霊さん経由でバレることは覚悟していた。

出も何もないから……別にいいのかな、とスルーしてたんだ。




「とはいえ、最近はそれら敵国より、魔人の活動が活発化しているという報告もある。」

「……。」

「そういった勢力に対抗するためにも、我々は日々鍛錬を行ってはならない。君たちの中には、騎士団や魔術師団以外に活躍の場を見出す者もいるだろう。

しかし、たとえ冒険者や研究者といった職を選んだとしても、そのような存在との戦いに備える必要はあると言えるだろう。」



…つまり、はっきりは言わんけど、近いうち数年前みたいに魔人や、場合によっては魔王との戦闘があるかもしれないということを言っているのだろうか。


その場合、人間は国の垣根を越えて協力できるのだろうか。

いや、むしろのその可能性があるからこその休戦協定なのだろうか。



規模が大きくなればなるほど、簡単に協力体制を築けないのが、人の愚かなところである。



……あああー、分からなくなってきた!!!

難しいことを考えた私の頭はショート寸前である。



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