興味があればまずは調べよう
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「あらー、野生の竜を見れるなんて羨ましい。」
「そんなに珍しいんですか。」
「そんなに珍しいのよー。」
衝撃の竜目撃事件から2日程経った日、図書室で司書さんと雑談していたら自然とそんな話になった。
司書のお姉さんも竜の移動の習性については知識としては知っていたとのことだが、実際見たことはないとのこと。
「竜も色々あるからねー。サラちゃんが見たような体の長い龍は、私も鱗しか見たことない。」
「うろこ……。」
「博物館にあったの。正直竜騎士さん達が乗る竜の鱗と何が違うのかよくわからなかったけど……超レアなのは間違いないね。」
「……もっとちゃんと見ておくんだった。」
「あはは、そーゆーもんだよ。」
快活に笑う司書のお姉さんは、そこでサラリと、しかし衝撃の事実を明かしてくれる。
「私もちょっと竜とは縁があってね。実は私の遠いご先祖に、竜人がいたらしいの。」
「え!!」
あらやだ、びっくり。
でも、見た目は普通の人間にしか見えない。
同じ東ラクラエン出身で、トカゲ人種の血を引いているマルガレーテちゃんは、首とかに鱗があったのを覚えている。
まあ、彼女の場合は目や肌にも特徴は現れていたけれども。大体竜人種とトカゲ人種は近いのか?よくわからん。
「あはは、それらしい特徴なんて全然だけどね。……うーん、強いて挙げれば肌がこすれたり、乾燥して皮膚が厚くなると、そこだけ鱗っぽくなっちゃうのが悩みかな。」
「……ええ……。」
「困るんだよ、アレ。服とかに引っかかりやすくてさぁ。」
まあ……それは…女性としてはちょっと大変だよね。
どう反応していいかわからない情報に私が絶句していると、司書さんはもう一つ教えてくれる。
「竜人種は大昔に人間が竜と交わった子孫だからね。代を重ねた結果、私みたいになんの特徴も残さないのも多いよ。それでもいまだに竜の血が濃くて、ブレス吐ける人も稀にいるけどね。」
「マジですか!!!」
ブレスって、あの火とか氷とか吐いちゃうあれだよね!!ゲームとかだと大体超強力な攻撃として扱われるアレ。全体攻撃っぽいアレ!!
うおお、なんかテンション上がってきたーー!!
「凄い!かっこいい!!」
「それがね、本人たちにとっては結構大変らしいよ。普段は魔力を制御してるからブレスなんて出ないんだけど、体調が悪い時とか疲れてるときにうっかり出たりするんだって。」
「ブレスが?」
「うん。ブレスが。あと、子供も制御に慣れていないから同じように危険らしいよ。泣いたり、興奮した時にやっぱりブレス吐いちゃうことがあるんだって。」
「え、じゃあ、どうするんですか?」
「それが面白くてねー。そのうっかりブレス対策専用の魔道具があるらしいんだよ。需要は少ないから特注らしいけど。」
なんてこったい。結構大変なんだな。
しかし、うっかりブレスって……そんな名称があるの…?
「かっこいい事にはリスクもあるんですね。」
「そ。一長一短なんだよ。」
何事も完璧に優れたものというものは、存在しないってわけだ。
まあ、完全無欠な種族があったら、たぶんこの世界の支配者になってるだろうし。
「で、今日はその竜についての本を探しに来たのかな?」
「あ、そうだった。」
「ふふ。引き留めてごめんね。B-6の列だよ。」
相変わらず、パっとその場所がでてくるのが凄い。プロだなー。
さて、お礼を言い、教えられた棚にやってきた私。本棚をつらつらと眺めれば、それっぽいタイトルが目に入る。うわ、上の方だ。脚立いるな。
高い所はあんまり好きじゃない…ただ、図書室の脚立は、本を持って上り下りすることが前提になっているせいか、かなりがっしりした造りになっている。ちゃんと使えばぐらつきとかは無い。その点が救いかな。
(ぶっちゃけ、冒険者とか騎士団とかに入るなら、このビビリも直さないとな。)
まあ、別にその二つになりたいわけじゃないんだけど。
ただ、以前ディアンと森でロックベアに遭遇した時、圧倒的に私よりディアンの方が落ち着いていた。
……そう考えると、私かなりのヘタレだな。
自分がなんだか情けない人間に思えてきた………あ、いかんいかん、今は調べ物だ。
「『古代竜の成り立ち』、『竜の暮らしを探る旅』、『竜図鑑』…こんな処かな。」
あまり多いと時間かかるだろうし。
私は近くの机に本を下ろすと、まず『竜図鑑』という本を開く。図鑑という名前だけあって、豊富な図解で様々な竜が載っている。
その中にあのタイプの竜の図もあったが、体の大きさと体の形について少し載っていただけだった。
「…あー、龍らしき記述はこれだけかぁ。」
まあ、大体予想はしていたけどね。龍については皆噂程度しか知らなかったし。見た目の情報が少し載っているだけ良しとしよう。
『竜図鑑』をパラパラと読み終えると、私は続いて『古代竜の成り立ち』を手にする。
「おお、伝説とか伝承が結構載ってるなぁ。」
そして結構最初の方のページに、竜には主に二系統があるという記述がある。なんか核心に迫っている感があって興奮してきた。
「『人が使役するタイプの竜は、翼を持ち、がっしりした体つきの竜である。それとは全く異なった竜も存在しており、そちらは体が細く長く、翼を持たず、魔力のみで空を飛ぶのである。』」
ああ、間違いないな。あの『龍』についてだ。
私は興奮を抑えながら、ページを捲る。
「『この竜は、強大な魔力と高い知能を併せ持つが、人と関わり合うことはないとされる。かつて伝説の従魔師クラッスがこの竜と出会い、対話を試みたが、彼でさえこの竜を従わせることはできなかった。』」
…クラッス?はて?
従魔師には詳しくないから名前は聞いたことないけど、伝説なんて言われているくらいだから、すごい人なんだろうな。
「『しかし、クラッスは対話の中で、彼らが数十年に一度だけ子を成すこと、ある程度大きくなった竜は自分の縄張りを持つために生まれ故郷を旅立つこと等をその竜から聞いたという。』」
…ということは、あの龍はもしかして旅立ちの途中だったのかな。つまり、若者か。
その後は、滅んだ竜の種類…なんか恐竜っぽい竜とかについて書いてあったり、さっき司書のお姉さんが言っていたみたいに、竜人族の成り立ちについてのお話もあった。
ちなみに、最後の一冊『竜の暮らしを探る旅』は、翼がある竜の野生種についての内容で、長い竜についての記述は一切ないみたいだった。残念。




