はじめまして?こんばんは。
「あ、サラ、来た。」
「道草くってた?」
「お前じゃあるまいし。揃ったから行くぞ。」
茂みを抜けたところでは、三人が待っていてくれた。
深く追及されることも無く、私は内心胸をなでおろす。
そして当初の目標地点である野営スポットにも問題なく到達し、私たちは少し休憩を取ることにした。
軽食を取りながら、またまた作戦会議である。
「時間的には大丈夫だな。奥行くか?」
「一応ここの確認と水の補給したい。」
「そうだな。」
「順調にいけば、最深部に行ってここまで戻ってこれるね。」
まだ昼前だ。
流石に今日中に奥まで行って、そのまま森の入り口まで戻るのは無理だろうが、ここまで戻るのは大丈夫そうだ。
それは皆同じ意見だったらしく、反対するメンバーはいなかった。
さて、ソーン君の提案に従って、私たちは水と設備の確認をする。
入り口の野営地点程流石に充実していないが、水場もあるし、雨避けのある広場もある。
これなら簡易テントを張れば夜も大丈夫だろう。
「水の補給はオッケー。」
「よし。じゃあ、行くか。」
ちゃっちゃと準備を済ませて私たちは気合を入れなおす。
いよいよ最深部。
ちょっとドキドキする。
「あと採ってない素材なんだけっけ?」
「ストーンリザードの尻尾と、ドゥーラの鏡石、ペグリルの実、森林オオトカゲの生き血、バツルヌ草の根っこ。」
グレッチェンちゃんの問いかけに、私は実習前に渡された課題リストを読み上げる。
今回の課題は一人一種類は指定された素材を採取し、最深部の札を取って戻る、という内容になっている。
つまり、最低4種類は必要ってわけだ。
「採ったのは、フォレストボアの肉と、ポイズンフロッグの毒液、あとヤミキノコ。」
「もう一種類か。まあ、最深部に行く方優先する?」
「だな。」
最深部付近にあるのは、ペグリルの実だな。
また、最深部付近の脇道を行くと、ドゥーラの鏡石の採取場所もある。
名前の通りこの森の特産品であるこの石、光も魔力も反射する性質を持つので魔道具によく使われるのだ。
ちなみにバツルヌ草は薬草として使われる草だけど、無茶苦茶臭いという草なので、できれば遠慮したい。
他の二つについては、まず遭遇しない事には採取しようがないので、まずは先に挙げた二つが優先かな。
そんな話をしながらも、順調に私たちは進む。
途中で森林オオトカゲに遭遇したので、サクっと倒し、血を抜く。文字にするとアレだけど、森林オオトカゲの血は毒として使えるのだ。しかも強力なマヒ毒として。
「おお、あれか。」
「札見っけ!!」
と、いう訳であっさりと最深部に到着した私たちは、行き止まりにある木からぶら下がっている札を一枚取り、歓声を上げる。
同時にハイタッチがでてくる辺り、やはり最深部に到達したという達成感は他とケタ違いということなのだろうか。
ちなみに札の数からして、私たちより先に1パーティーが到達していたらしい。
途中の野営地点に居たっけな?まあ、素材を取るための脇道も少しあるから、必ずともすれ違うとは限らないんだけどね。
「あ、ペグリルの実発見。採ろう採ろう。」
「綺麗な実…。」
真っ青な実は、形こそブルーベリーだけど、半透明で淡い魔力も感じる不思議な実だ。
毒をもつ生物が多いこの森、この実はそれを浄化する作用を持つ。
勿論なんにでも効くわけじゃないけど、用途が幅広いため安定して需要のある素材なのだ。
「よし、採取オッケー。」
「戻ろうか。」
「うん。」
正直採取を済ませればこんなところに用はないぜ。
皆それは同じだったようで、私たちは帰路を急いだ。
そしてそのまま中間の野営地点へ到着し、荷物の整理をして私たちは明日に備え早めの就寝を取る。
課題の素材についてはドゥーラの鏡石も採れたし、たまたまバツルヌ草も見つけて採ったからマジであとは帰るだけなんだよね。
寝床に着けば、疲れていたのか皆すぐに寝息を立て始める。私も含め、だいぶ皆野営にも慣れてきているようだ。
暗闇に紛れたダークラビットちゃんもじっと部屋の隅で固まっている。彼(彼女?)のお世話になる事なく実習を終えられるといいなぁ。
冒険者の野営は基本見張りを立てるけど、魔道具や従魔を使うのが最近は主流になってきているらしいから、ダークラビットちゃんの様子も結構興味深いのだ。
そんな風に、ウサギさんの姿をぼんやり見つめながら、私もうとうとし始めた頃、突然ダークラビットちゃんがびくっと体を震わせ顔をゆっくりと上げた。
「ん?」
何事か、と私の眠気が少し飛んでしまう。ああ、もう少しで眠れそうだったのに。
だが、私のそんな不満をよそにダークラビットちゃんはぴょん、と跳ねると簡易テントからそのまま出て行ってしまった。
ええ…。
(いや、流石に、でも……気になるでしょ……。)
だって、監視&護衛役が何かに気づいて行っちゃったんだよ?
あまり警戒している様子には見えなかったけど、やっぱり気になる。
てか、眠気飛んじゃったし。
(しゃあない……。万が一皆に気づかれたらトイレに行ったと言い張ろう。)
そう決意して、私は皆を起こさないようそーっとテントから出ることにした。
「あ……。」
「あ、来た。」
月明かりがわずかに足元を照らしている。
間抜けな声しか出ない私に対し、向こうは余裕の表情だ。
「よしよし。ありがとうね。」
気持ちよさそうに目を細めるダークラビットちゃんを小さな手で撫でるのは…。
「こんばんは。」
「ど、どうも。」
黒髪ストレートのお人形サイズの人?だった。




