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怪しい?気配


フォレストボアの肉の量は十分といっていいものだった。

課題用を確保しても、十分私達が食べる分も残る位にな!!わっほい!!!今夜はバーベキューだ!?



……さて、喜びに浸るのはこのくらいにして、作業作業。

小型のナイフを使って、ちゃっちゃと解体していく。


最初の頃はこの臓物の臭いと見た目のグロさで気分が悪くなったものだけど、まあ、ある程度慣れた。

水魔法で洗浄しながら解体すると、臭いはだいぶ抑えられるのだ。風魔法も併用して、臭いを防ぎながら黙々と作業を続ける。



「穴作ったよ。」



ソーン君の空けた穴に食べられない部分を放り込む。

ちなみに、フォレストボアの毛皮は丈夫ではあるけど臭いもアレだし、魔法への抵抗性が低いので、装備品の素材としては二束三文。今回の実習の課題にも入っていない。ので、置いていく。


以前授業で習った。もったいない精神でなんでもかんでも持って帰ろうとすると、いざという時に困るのだと。

目先の欲を優先したばっかりに一番大事な命を失うことだってあるんだ!!とね。


ごもっともである。



「あ、俺持つぞ。」

「ありがとう!」



保存用の袋に肉を詰め込めば、ベリリアント君がひょいっと持ってくれる。男前~!


この保存用の袋も魔道具で、内側は防水加工をしてあるうえに、氷魔法のおかげで中の物が腐りにくくなっている。

高位の冒険者が持っている物だと、軽量の魔法とか、圧縮する魔法とかかかっているものまであるらしい。



(RPGの荷物ってどうしてるんだろう?持ち物の制限がないゲームもあったし。)



今更の疑問だ。更に凄い魔法のかかった袋とかがあるのだろうか。永遠の謎である。



「課題の素材が二種類と、俺たち用の肉の確保か。上出来だな。」

「だね。」




森の入り口を目指しながら私たちは速足で歩く。

少し陽が傾いてきたので、自然と急ぎ足になるのだ。



「明日は、早めに出る?」

「そうだな。この調子なら明日は中間地点…場合によっては最深部まで行けるかもな。」



相談の結果、明日は日の出後すぐに出発することになった。

森の途中にある野営スポット、状況によっては最深部まで進む計画である。

私を含めた皆は、今日の戦闘に手ごたえを感じたらしい。調子に乗れというわけではないが、ある程度の自信は必要だ。



「途中で、ヤミキノコの群生地もあるとかないとか。」

「あー、地図に載ってたな。」



ヤミキノコは魔法薬の材料になる茸である。

これも今回の実習素材リストに載っている。見つけたらぜひ確保しておきたい。



「漆黒のキノコって、想像つかないわ…。」

「だよね。」



目つぶし用の魔法薬(暗闇ってやつかな?)に使われるこの茸は、黒インクのように真っ黒らしい。

カサの開いていない物ほど素材としてはいい物らしいけど、そう都合よくあるかなぁ。あるといいなぁ。


そんな会話をしているうちに、森の入り口が近づいてくる。油断は禁物とはいえ、少し気が緩む……のだが。



「ん?」

「どうした?」

「いや、なんか、魔物?の気配。」



微弱だけど、何か小さな生物が近くに潜んでいる気配がする。

つか、これさっき森の中で感じた魔力に似てる気がする。敵意は無さそうなんだけど、常に一定の距離を保ちながらっていうか。まるで監視されているかのように。



「えー、魔物?」

「……。」



グレッチェンちゃんの問いかけに、私は答えないまま魔力を練りはじめる。

相手の魔力は抑えているのかわずかしか感じとることができない。



「闇だー。」

(闇?)



どの魔法を発動させようか悩む私の耳元で、わちゃわちゃと騒ぐ精霊さんの言葉に私は眉を寄せる。

そして更に集中して魔力を探ると、あ、確かに、闇の魔力。ちょっとだけど、意識すれば何とか感じることができた。


成程、これが言いたかったのか。



(ならば。)



「光よ、風よ、しなやかな糸となり、彼の者を捕らえよ!」

「プッ!またぁ!」



精霊さんの噴き出す声が聞こえたけど、もうツッコむ気すらしないです……。



「キュイィ!」



とにかく、近くの茂みをその気配が通った時、私は捕縛用の魔法をそちらに放つ。

叫び声らしきものがしたということは、どうやらちゃんと当たったっぽい。



「え、何?」

「なんかいた!」



突然、魔法を放った私に皆がびっくりしているけど、今はその気配の正体が知りたい。


少し緊張しながらも、私はその茂みに近づく。

そう危険な魔物じゃなきゃいいんだけど。



「キュイ、キュイ、」



慎重にそちらを覗き込むと、そこには私の放った魔力の糸に絡めとられてうねうね暴れている紺色の毛をしたウサギ?のような魔物。

思ってたより可愛らしいその魔物の姿に、私はちょっと拍子抜けする。



「え、なに?これ。」

「ダークラビット?でも、この森になんで?」



ダークラビット。

すごく強い魔物って訳ではないが、闇に紛れる能力を持ち、闇の魔法を使うこともあるウサギ型の魔物だ。

ぶっちゃけ、この森の魔物より強いんじゃないかな。まあ、初心者向けとは言えない魔物だったはず。



「え、ちょっとかわいい。」

「キュィー!」



グレッチェンちゃんは、可愛いその姿に胸キュンのようだ。うん。気持ちはわかる。

紺色と、赤い目を持ったウサギだ。もふもふだ。凶暴そうにも見えないし。



その間も、ダークラビットは糸から逃れようと暴れながらキュイキュイ言っている。

何か言いたげだが、うん、分からん。


まあ、敵意はやっぱりなさそうなんだけどね。

ぶっちゃけ、私の魔法くらいその気になれば力任せに破れる…と思う。それほどの魔物なのだ。



そして、捕らえられたままのダークラビットの魔力をより深く探ってみて、私はあることに気づく。



敵意の無いその気配。

攻撃的な魔力を放っていないっていうのもあるけど、他にも重要な理由があったようだ。



「……ポリーヌ先生?」

「え?」

「魔力の質が、ポリーヌ先生に似てる気がする。」



そう。


私達、ドゥーラの森組担当の、ポリーヌ・ギィ先生。

そのポリーヌ先生と、このダークラビットの魔力が似ている……気がする。


もちろん、同じじゃないんだけど、纏っている魔力の一部がこう、なんとなく……などとみんなに説明していると、向こうから人影がやってくるのが見え私たちは顔を上げた。



「あらあら、まさか見つかるなんて。」



噂をすればなんとやら。ポリーヌ先生がニコニコと笑顔を浮かべたままこちらにやってくるところだった。



「その子、私んちの子なの。」



あっさりと告げられれば、なるほど納得である。



「先生の従魔だったんですね。」

「そうなの。」



つまり、試験監督の先生は、従魔を扱える先生ばかりだということだ。

そして、一つの班に一匹ずつ従魔をつけて、生徒の様子を監視していたというわけだ。


従魔と術者はある程度の感覚共有、意思の疎通を行うことができる。

距離についてはそれこそ術者の腕次第みたいだけど、先生のことだ。きっとこの森の範囲くらいはカバーできるのだろう。




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