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戦闘!~今日の晩ご飯~


まあ、何とか無事に毒矢も作れたことだし、私たちは更に進むことにする。

辺りは相変わらず暗い。ホラーとまでは行かないけど、やっぱり不気味。慣れないし、慣れたくない。



「時間的に、もう一回くらい戦ったら戻った方がよさそうだな。」



懐中時計を覗き込みながらそうつぶやくベリリアント君。

まあ、復路でも敵に遭遇するかもしれないしね。もうちょっと、もうちょっと…といった様子でズルズルいった挙句夜になった!とかシャレにならん。



「だねー。」

「あー、そんなこと言ってるから、早速来たよ。」



ソーン君の気の抜けた声に視線をそちらへ向ければ、木々の向こうからやってくる何かが見える。

……ん?



「でかくない?」

「でかいね。」



嫌な予感がして、私は相手の方へ意識を集中させる。

魔力の強さや流れを見るためだ。そしてその結果から魔物の特定をする。



……うん、でかいね。

流石にロックベアよりでかくはないが、私達よりは大きい。


丸っこく、ずんぐりむっくりした体。

フンフン、といった音は、臭いをかいでいるのだろうか。


あと、近くになんか小さい魔力。小型の魔獣…にしては少し違和感がある。

まあ、向かってくるわけじゃなさそうだから、気にしなくていいかも。



さて、大きい魔獣は、近づくにつれてどんどん姿がはっきりしてくる。



「フォレストボアかな?」

「たぶんおそらく、きっとそう。」



フォレストボア。

森を主な生息地とするイノシシっぽい魔獣。

それがこちらにゆっくりと近づいてくる。



私達はゆっくりと武器を構えた。



ちなみに、逃げるという選択肢はない。

野生動物あるある(?)で、フォレストボアも大騒ぎしたり、背中を向けて逃げると急に襲ってくると言われているからだ。



しかし、ある意味ラッキーでもある。

フォレストボアは食肉として重宝されている。

そして、今回の実習の課題リストの中には、フォレストボアの肉も含まれているのだ。



「……。」



じっと、お互いの出方を窺う。

と、そんな緊張した空気の中、横でソーン君が小声で何やらブツブツ呟いていることに気づく。



(ん?)



何をしているんだろう。私はとっさに彼の魔力を探ってみる。

水と、地…土の魔力?それをどうやら混合して……。


まあ、その意図に気づく前に精霊さんが正解言っちゃったんだけど。



「どろどろー!」

「泥遊びかなぁ?」



んなわけあるか!……と、ツッコむのは置いておいて、正直私は感心する。


フォレストボアの周辺の地面。

ソーン君は水と地の魔法で、そこを沼のような泥地にしているのだ。


フォレストボアの武器は、その突進力と前に突き出した鋭い牙である。

だが、その両方とも足元がぬかるんでいる状態では十分に発揮できない。



(はぇ~、やるなぁ。)



そうなんだよ。

ぼーっとしてるようで、意外と機転が利くのだ、この子。昔っから。



(よし、私も負けてらんない。)



私の中にあったらしい闘争心?らしきものに少し火が付いたようだ。



「土魔法連発すればいい?」

「!うん。」



私が小さくささやくと、ソーン君は一瞬驚いた顔をしながらもうなづいた。

ベリリアント君とグレッチェンちゃんも察したらしく、二人とも剣を構える。


ちなみに、さっき作ったばかりの毒矢は今使わない。

一応、食料候補だからね。毒入り肉とか、ちょっと私は遠慮しておきます。



「脅かせばいいかな?」

「うん。じゃあ、叫ぶか。」

「任せて。」



ベリリアント君の言葉に、私とグレッチェンちゃんは顔を見あわせて、うなづいた。



「「わっっっ!!!!」」

「!!!フゴッッ!!」



体をまさに飛び上がらせて、フォレストボアが驚く。

そして、興奮した様子で走り出した。



「プギャァ!!????」



が、次の瞬間、ぬかるみに足を取られて大きくバランスを崩す。


よし!狙い通り!!!!

間髪入れず、私は魔法を発動させた。



「破壊の岩よ、天より彼の者に降り注げ!」

「あはは、サラ、だからさー。」



精霊さんの笑い声をガン無視し、私は倒れこんだフォレストボアに次々と大岩をぶつける。

これではさすがのフォレストボアもなすすべがないようだ。暴れてはいるが、大きな岩の衝撃でどんどんそれも鈍くなる。



「フガッ、フグアァァァァ!」

「今だ!」


ベリリアント君の叫びに合わせて、私は魔法を打つのをやめる。

ふぅ。



「ふんっ!」



まず、ベリリアント君が剣でぬかるみにはまったままのフォレストボアの前足を一本斬り落とす。

岩がゴロンゴロンあるから難しそうだけど、彼はいともたやすくそれを成し遂げる。やるなぁ。マジで彼、剣士でも十分やっていけるんじゃないか?



「ビィィッッ!」



これにはさすがのフォレストボアも悲鳴を上げる。

可哀想だけど、しょうがない。やるか、やられるかなのだ。


…そう考えるようになったってことは、私もだいぶ慣れたってことなのか。



「てりゃっ!!!」



続けて眉間に皺を寄せながら、硬いフォレストボアの体にグレッチェンちゃんが刃をめり込ませる。首に一撃である。


フォレストボアは、皮が分厚い上に、毛も硬い。

グレッチェンちゃんは、あらかじめかけていた強化魔法に更に上乗せして、強化魔法をかけたのだ。


それによって、剣の刃がグッと深く飲み込まれていく。


どうやらそれが致命傷だったらしい。

流石にフォレストボアも、そこで暴れるのをやめる。



「……終わったぁ。」

「や、やった……。」

「おつかれー。」



お見事!!我々の勝利だ!!

しかも、初心者向けの魔獣・魔物の中では強い方であるフォレストボア。

更に言えば結構でかい!!素晴らしい!!!


喜びに打ち震える私達だったが、そこで足元からぐちゃっと不快な音と感触がして我に返る。

あ、忘れてた。



「足元、泥だらけだ。」

「あ。清き水よ、降り注げ。」



靴に付着した泥や汚れを洗い流し、風魔法で乾かす。

魔法版ドライヤーです。便利。



「ソーン君って、凄いね。」



濡れた靴の中を乾かしていると、唐突にグレッチェンちゃんがそう口にする。

うん。私も同感。



「そう?」

「うん。とっさの判断と応用が上手いと思った。」

「はは、ぼーっとしてるようで意外と頼りになるだろ?」



まるで自分が褒められたかのように誇らしげなベリリアント君。

いいなぁ。男同士の友情って感じで。相棒ってやつだな。



「…解体する。」

「ああ、そうだな。」



と、突然そこでぷいっと顔を背けると、一人フォレストボアの方に行ってしまうソーン君。

だが、機嫌が悪いわけじゃないみたいだ。



くくっ、と笑いをかみ殺すベリリアント君の様子を見る限り、どうやらソーン君は照れているらしい。

うんうん。ぼーっとマイペースなソーン君だけど、年頃の少年らしいところもあるようだ。




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