ランク1ダンジョン・ドゥーラの森
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暗い森だ。
遠くから聞こえる魔物の物らしい鳴き声が不気味である。
それなのに、所々にある木々の間から光が差し込んでいる場所なんかは、どことなく神聖な雰囲気を醸し出しているから不思議なものだ。
「足元、気をつけなくちゃね。」
「うおっ、こっちにもいたっ!!」
歩く場所、歩く場所に小型のネズミみたいな魔物……というか、魔獣がウロチョロしているのが見える。
魔獣は、魔物程危険じゃない生物の事を指す。定義はあいまいだけど。
世の中の生き物はすべて多かれ少なかれ魔力を持つので、線引き自体が困難なのだ。
ネズミ程度の大きさでも、攻撃魔法を使ってくるようなのは魔物。
熊くらい大きくても、せいぜい肉体強化魔法程度しか使わないのは魔獣。
ただ、前会ったロックベアみたいに、中には攻撃魔法使ってくるのもでてくる…とかなると、種族全体が魔物扱いになったりという具合だ。ええい、ややこしい!!!
「!構えろ!」
と、突然のベリリアント君の鋭い言葉に、私も短剣の柄に手をかける。
ふぅ、森に入ってから、これで3回目だ。
入り口に程近い所だから、今のところ小型の狸?狼?みたいな魔物しか戦っていないけど、油断は禁物だ。
私とグレッチェンちゃんを下がらせたベリリアント君が草むらを凝視する。ソーン君も少し緊張した表情で魔力を練っているようだ。
「…我らを守る、盾となれ。」
今回の実習では、皆の前だから詠唱を忘れないようにしないと。
自分を強化する時以外、全部詠唱しなきゃならないって考えただけでもめんどくせー。
まあ、普段から心がけてるから、大丈夫だとは思うけどうっかりに定評のある私だからね。用心に越したことはない。
「あはは、まーたサラ、無駄な事してる!」
「タテトナレー。うふふ。」
こうやって、精霊さんの茶々が入るから嫌なんだけどね!くっそー。
こっちの苦労も少しは分かれ!!
…なんか、すべての精霊さんの声が聞こえるより、ルダ様とか特定の精霊さんとコンタクトが取れる方が色んな意味で勝ち組な気がしてきた。
キュミラスさんは恵まれてることだと言ってたしそれは理解してるけど、なんかこう、ね。情報の取捨選択が大変というか、うん。
「お、気が利くな!」
ベリリアント君が、背中に背負っていた剣を抜き、構える。
こうやって見ると、あまり魔法使いに見えないな。普通に剣で強そうだ。剣も両手剣だから余計に。
実際彼は強化魔法が上手い。しかも冷静でリーダーシップもある。
つまり有能だ。全くうらやましい限りである。
「なにが出るかな?」
ベリリアント君の少し後ろ、それでも私達より前でいつでも魔法を放てるようにしているソーン君は、のんびりした口調ながらも意外とやる気満々っぽい。
そして、その期待に応えるかのように草むらから一匹の魔物が飛び出してくる。
「うーぁー…。」
その姿を確認した瞬間、グレッチェンちゃんの表情が歪む。
あー、うん。苦手な人は苦手だよね。
「ポイズンフロッグ?」
「だねー。毒液気を付けて。」
カエルである。
でっかいカエル。
色が黒と黄色のいかにも毒あります!な見た目である。実際毒あるけど。
そして魔物というのは、総じて好戦的である。
魔力を求める性質から、人の持つ魔力を狙って出てくるとかなんとか。
まあ、魔物自身に聞いたわけじゃないからそう言われているっていうだけなんだけど。
「ゲコォ!!」
「うわっきた!!」
グレッチェンちゃんはカエルが苦手みたいだから、ちょっと下がっててもらおう。そのためのパーティーだ。苦手分野は補い合うものなのだ!!
「グレッチェンちゃん、援護よろ!!!」
「ごめん!」
グレッチェンちゃんはそう言って一歩下がると、私の短剣に魔力を送り込む。
「炎を纏い、紅蓮の剣となれ!」
「お、ありがと!!」
詠唱とともに私の短剣が見る見るうちに炎の魔力を纏っていく。
カエルとかそういった魔物に有効な炎の付与魔法だ。エンチャントってやつだな。
私の短剣は地味に魔鋼が含まれているので、そういった魔法と特に相性がいい。まさにうってつけだ。
グレッチェンちゃんは他の二人の武器にも同じように付与をしてくれた。
よし、きっとこれならいけるぞ!!
「距離を取りながら戦おう!!」
「だねー。」
「よし、ソーン、足元を狙え!」
「うん。」
「敵が避けたら、そっちに火魔法使うね。準備しとく!」
「任せた。」
簡単に打ち合わせだけしたら、早速攻撃開始だ。
ソーン君の獲物は槍と斧の中間みたいな武器。名前忘れた。
まあ、とにかく長柄武器なので距離を取れるので、比較的安全だ。まあ、毒喰らっても薬あるから対処できるんだけどね。
「ていやっ!」
「!!!」
意外と鋭い突きに、ポイズンフロッグが慌てた様子で横に飛び退く。
舌や毒液攻撃はしてこない。どうやらむこうからしたら私達と距離がありすぎるようだ。うむ、読み通り。
「ファイアアロー!」
「おお、当たった。」
ソーン君の攻撃から逃れた先に魔法を放てばクリーンヒット!おお、中々いい連携じゃないの!?
更に二回くらい放ったところでとりあえず止める。あまり森で火魔法使うと周り燃えそうだしね。森林火災超こわい。
「よし、止めだー!」
「おう。」
ヨロヨロになったポイズンフロッグを男子二人が仕留める。
魔法で弱っていたのであっさり行けたようだ。
短い鳴き声を上げた後、ポイズンフロッグは動かなくなる。どうやら無事倒せたようだ。
「毒液採れそう?」
「んー……あ、大丈夫。毒腺破れてないっぽい。」
お、そうそう。一応実習の課題としていくつかの素材を採取するっていうのがある。
その中にポイズンフロッグの毒液っていうのがあるのだ。
ちなみに、このポイズンフロッグの毒液は熱などで成分が変化することも無いうえに、毒腺や毒袋は比較的丈夫。更に個体数自体が多い。
万が一、毒液を吹きかけられても、体内に入らなけりゃ薬を塗れば大丈夫。目だけは守らなきゃだけど。
と、いうわけで初心者向けの素材として、よく冒険者に依頼されるものなのだ。
注射器のような器具で毒を採取し、専用の容器に移す。うむ、毒液ゲットだぜ!!
と、そこで、恐る恐るといった様子のグレッチェンちゃんがこちらに近づいてくる。
「残った毒で毒矢作っておくわ。」
グレッチェンちゃんの武器は短剣と弓矢。
あ、そうか。矢といったら毒矢だよね(?)
「あ、やろうか?」
「………ううん、がんばる。」
嫌々、といった様子だけど、そこはグレッチェンちゃん。矢筒の矢を数本取り出すと鏃を毒袋にぐりぐりしてる。すっげー腰引けてるけど。
しかし、今後の戦いの為にはぜひ頑張っていただきたい。頑張れグレッチェンちゃん!!応援してる!!
主人公の短剣はククリナイフ、ベリリアント君の剣はバスタードソード、ソーン君の武器はハルバード、グレッチェンちゃんの武器はコンポジットボウとバゼラード辺りのイメージです。
趣味です。すんません。




