神様悩み相談室
「え、ど、どうして、フォウ様がここに…。」
「…一応、俺はお前の担当だからな。」
「あ、そうなんスか。お、お疲れ様っス。」
うわ、まさかの事務的な問題?
テンパってカミカミな私に対してフォウ様は冷静そのものだ。
てか、神様って担当制なの?そういうもんなの!!?
「ダーナ様に頼まれたんだ。俺が一番お前の気持ちがわかるだろうってな。」
「へ?」
ダーナ様……ああ、あのおじいさん……。
ていうか、私、文字が読めるようになってからいくつか神話とか読んだけど、ダーナ様ってさぁ、この世界での最高神ってことになってるんだよね。
そんなすごい存在であるダーナ様に対して、当時の私は実に普通の対応をしてしまった。まあ、今更なんですが。
まあ、今こうやってフォウ様と一対一で話してること自体が畏れ多いというか、なんというか。
第一、これ夢じゃね?夢って眠りの浅い時に見るって言うし。
微妙な顔で黙り込んだ私をどう思ったのか、フォウ様はため息をついた後私に近づいてくる。
「あんまり小難しく考えるな。ダーナ様が俺にお前の事を頼んできたのは、元人間の俺なら気持ちがわかるかもしれないっていう単純な理由だからな。」
「あ、そうなんです…か……!!!!うぇえええ!?」
「変な声を出すな…。」
いや、変な声も出るわ!
元人間!!!?そうなの!?
「フォウ様、人間だったんですか!?」
「ああ。珍しいケースだがな。一言で言うと、前任者に押し付けられた。」
そう説明するフォウ様の表情はその…なんというか、苦虫ゴリゴリかみつぶした感じ。つまり、非常に不満げで。
あ、でもそういえば。
「前、ルダ様が…そんなこと言ってた気が。確か…リューズ様?」
「光の精霊から聞いたか。ああ。そのリューズが元凶だ。」
「へ、へえ。」
「全くいい迷惑だ。あの野郎………と、今はその話はどうでもいいな。」
ブツブツと不満を言っていたフォウ様は、そこで話をぶった切ると私に改めて向き直る。
「まあ、ダーナ様が俺を遣わすのもあながち的外れではないんだ。俺も、似たような状態だったからな。」
「え。」
「キュレイア…ああ、お前と最初に会った時にいた女神だ…あいつが言っていただろう?ごく稀に魂の浄化が不完全になってしまうことがあると。」
おお、あのお姉さん、キュレイアさんっていうのか……っておい、もしかして愛の女神、キュレイア様!!!??
「だが、その場合も完全に記憶が残っているわけではない。あったとしてもほんの一部だ。新しい世界で記憶が蘇ったとしても、それこそ既視感とか、ひらめきとかで片付けられる程度なんだ。」
「…。」
デジャヴとか、突飛なアイデアというものに、前世の記憶が関わっているということなんだろうか。うーん、難しい話だけど、自分が実際別世界に生まれ変わってるから無いとは言えない話だ。。
「だが、お前の場合はそれよりもっと厄介だ。記憶がほぼ完全に残ってしまっているからな。」
「まあ、はい。」
あのイケメンさん……たしか、リューシオン様は表面が焼けた程度でほぼ生って言ってたな。焼きが足りないと。
「連続してしまっているんだ。前のお前と今のお前は。中身は前のお前と何も変わらないのに、他がすべて変わってしまっている。」
「あ…。」
ズバリ言われると、なぜかギクッとする。
分かっていたはずだけど、他の人の口から言われるとまた違った感覚だ。
「よくこの年齢まで無事に成長できたと、俺は正直感心したよ。」
「…無事、ですか。」
「ああ。人は忘れるものだが…それはあくまで記憶であって『自分自身』じゃない。清めの窯はその『自分自身』を完全にリセットするための物だ。記憶も罪も洗い流され、新しく生まれ変わる。そうしなければ、環境も常識も何もかもが違う世界に馴染むのは難しくなる。過ごした年数が長ければ長いほど、な。」
「まあ……キッツいですよね。」
経験者である私が言うんだから、間違いない。
「そうだろう?だが、お前はそんな状態で新しい環境どころか新しい世界にぶち込まれたんだ。絶対どこかで齟齬が生じるに決まってる。」
「……でも、燃える火の中に飛び込む…なんて…。」
「無理だろう?俺だって嫌だ。」
「はい…。」
「お前はまだ若かったし、性格的に乗り越えられるだろうとダーナ様やキュレイアは楽観的だったが…生まれた時から神である彼らにはちょっとその辺りが理解できないんだろうな。」
さて、とフォウ様は私をまっすぐに見つめてくる。すべてを見透かすように。
「こうやって、今悩んでるってことは、そういうことだろう?」
「まあ…………はい。」
「お前にはそんな苦労を背負わせて本当に申し訳なく思っている。それについては他の奴らも同じだ。だから、お前の魔力と心が乱れていることに気づいたダーナ様は俺をここに寄こした。」
「あ、ありがとうございます。」
「礼はいい。もとはこちらの落ち度だ。」
……なんか、フォウ様って見た目はマジ10前後の子供だけど、すっごい気遣いのできる人(神)じゃね?
上司にしたいランキングとかで上位に食い込みそうな勢いだわ。ああ、なんかそんな企画前世であったな。懐かしい。




